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「生活の困りごと」の頼みの綱!市原市社会福祉協議会とは

国の調査(孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年))によれば、特に20代から30代の世代には「自分が社会で孤独・孤立している」という意識があり*1、市原市民の中にはそれらを支援する団体や相談窓口があることを知らない人も多いと考えられています*2。
ICHIHARAISE(イチハライズ)では2024年7月から6回にわたり、こうした「孤独・孤立支援に取り組む市原市の福祉団体」特集を組むこととなりました。
とはいっても、記事を担当するライターたちも「福祉」に縁遠い一般人。
「福祉って何だろう?自分が○○で困ったとき、どんなところに頼れるんだろう?」という素朴な疑問をもとに取材していきます。

*1参考
内閣府 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年)
孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年実施) - 内閣府
(調査結果の概要 p8参照)
*2参考
市原市 令和5年度市民意識調査
令和5年度市民意識調査 | 市原市ウェブサイト
(概要[ガイド]版 p29「問38 情報の入手度合」参照)

記念すべき第1回目となる7月は、「市原市社会福祉協議会」にお邪魔しました!
全国の都道府県・市区町村に設置されている「社会福祉協議会」*。
私たち自身、取材前は「耳にしたことはあるけど、具体的にどんな活動をしているんだろう?」と思っていました。
今回取材してみると、誰もが「生活の困りごと」を解決できるよう、互いを助け合える仕組みを作る団体であることが分かってきました。

*参考
社会福祉協議会(社協)_全国社会福祉協議会
地域の福祉|市原市社会福祉協議会



地域密着!困りごとの相談&解決のための仕組みづくり

写真左:齋藤大輔さん/写真右:金坂由季さん
和やかな雰囲気のなかインタビュー。お二人の表情がキラキラしていて素敵でした。

——齋藤さん、金坂さん、どうぞよろしくお願いいたします。

齋藤さん・金坂さん(以下、敬称略):よろしくお願いします。

——では早速、「市原市社会福祉協議会(以下、市社協)」がどんなところなのか、簡単に教えてください。

齋藤:市役所等が行う公的な福祉制度などにうまく乗れないような方々への支援を行う団体ですね。
地域で活動している福祉関係の人たちの力を借りながら、その地域で生活をされていて、困りごとを抱えている方を対象に活動しています。

——なるほど。
具体的に、どんな相談が寄せられますか?

齋藤:ホームページを見た方や、一度行政の方に相談に行かれた方から「○○の制度を使いたい」と相談される場合もあります。
あとは、「ご近所トラブルや8050問題で困っていて、でもどうしたらいいか分からない」といったまま相談に来られる方も多いです。

【補足:8050問題】
80代の高齢の親と40代・50代の引きこもりの子が共に社会から孤立してしまう状態。
その背景には経済的困窮、親の介護、子どもの就労など、様々な問題が絡み合っているケースが多く、社会問題として注目が集まっている。*

*参考
・NHKハートネット
8050問題とは・基礎情報 | NHK ハートネット
・厚生労働省
地域包括支援センターにおける「8050」事例への対応に関する調査
(p3,4)

インタビュー時にもお邪魔した一室。実際に相談者さんが来られた際、こちらで話を聞くそう。
対面しても距離があるので、リラックスして話せます。

——どこに相談したらいいか分からないけど困っている、という場合も、相談に乗っていただけるんですか?

齋藤:そうですね。まずはお話を聞かせていただきます。

金坂:お困りごとを聞いてみると、高齢者のいるご家庭で、かつ障がいを持ったお子さんの支援も必要で…といった風に複数の悩みを抱えている場合もあるので、どう支援するかこちらで振り分けていくこともあります。

——確かにそういった場合、どこに頼っていいか当事者が迷うこともありそうですね。
まず話を聞いていただける、というのは心強いです。
先ほどご近所トラブルの話もあがりましたが、どんな事例がありましたか。

齋藤:「ペットを飼っているお家の臭いが気になるからどうにかしてほしい」「隣のお家の木の枝が伸びてきてしまって困っている」なんていうご相談がありますね。

金坂:こうした日常生活を送る上でのちょっとした困りごとを、住民がお互いに支え合える体制づくり(日常生活支援事業)も、去年から始めました。

——「本当にこんなことを相談してもいいんだろうか」という問題でも話を聞いてくださって、さらに解決のための仕組みづくりをされているんだとびっくりします。

齋藤:基本的には民間サービスを利用してもらうのを優先しています。
ただ、どうしても経済的な理由などがあって困っている、といった場合には、地域の方々に手伝っていただきながらその世帯への支援をしています。

——本当に困ったときの頼みの綱、という感じですね。
そういうときに、頼れる先があるということがすごくありがたいです。


こんな風に頼れる、参加できる!気になる活動2選

——市社協さんは本当に幅広い活動の支援をされていますが、特に個人的に驚いた2つの活動についてお聞きしていきたいと思います。

①子育て中に助かる!「家事サポート」「ファミリーサポート」

——今回一番気になっていたのが有料サービスの「家事サポート」と「ファミリーサポート」の二つなのですが、これらはどういった内容のものですか?

金坂:まず「出産前後家事等サポート事業(以下、家事サポ)」ですが、妊娠中から子どもが1歳になるまでの間、専門のヘルパーさんが家事のサポートを行います。
つわりが激しい時期の食事作りやお掃除、乳児のおむつ交換や沐浴のお手伝いなど、他に家事ができる方がいないときにヘルパーさんがご自宅に行って支援してくださるものです。
最近は子どもの多い世帯の利用がすごく増えてきていますね。

——こんな風に支援してもらえるのは、妊産婦さんにとってとてもありがたいですね。

【補足:家事サポの利用条件や料金の詳細はこちら】
出産前後家事等サポート事業 | 市原市ウェブサイト

——では、「ファミリーサポート(以下、ファミサポ)」はどのようなものですか?

金坂:生後6か月から、小学校6年生までのお子さんのサポートです。
こちらは有償ボランティアさんにお願いしているものですね。
例えば保護者が仕事で帰りが遅くなってしまう日、ボランティアさんに学童クラブに迎えに行ってもらって、そのままボランティアさんのお宅で夕食の提供や預かりをお願いできたりします。
あとは、平日の習い事の送迎などもありますね。

基本的には学童や保育所を使ってもらうんですけど、それでも保護者さんの手が回らない部分を、地域のボランティアさんたちにフォローしてもらう制度です。

齋藤:実はファミサポは、絶賛ボランティアさん募集中なんです。(笑)
子育てを経験された方も、経験していないけど興味がある方も、子どもと関わるのが好きな方にも、是非気軽に参加してほしいですね。

【補足:ファミサポの利用条件や料金、ボランティア募集の詳細はこちら】
いちはらファミリーサポートセンター|市原市社会福祉協議会

②地域の人とつながる場づくり「子ども食堂」

実際に配布されている、子ども食堂紹介のリーフレット。

——最近よく聞く「共生型サロン」「子ども食堂」も市社協さんが関わっているとお聞きしました。

【補足:共生型サロン】
地域の高齢者や障がい者、未就学児とその保護者などを含んだ、地域の誰もが参加できるコミュニティのこと。地域住民同士の交流が目的で、子育てに関する情報交換や交通安全指導、体操、歌など、内容はさまざま。*

*参考
市原地区社協|市原市社会福祉協議会

齋藤:はい。
家に閉じこもりがちな方々が、地域の人たちと交流し、活躍できる場を地域の中に作る、という仕組みづくりの部分を担っています。
特に最近は、子どもや子育て世代の居場所として、また地域のおじさん・おばさんたちも一緒に交流を深めていく場として「子ども食堂」の活動をしている地区も増えてきています。

市社協はこういう取り組みを広めていくために、「いちはら地域・子ども食堂ネットワーク」を立ち上げて、ネットワークの事務局を担っていますね。
子ども食堂を紹介するリーフレットを作って配布したり、市民の方向けの研修会を実施したりしています。

——子ども食堂はお子さんがご飯を食べるための場所というイメージがあります。
他にどんな方が利用されているんでしょう?

齋藤:子ども食堂というと「孤食」や「困窮」が連想されますが、市原市内の子ども食堂には共通して「誰が来てもいい」というコンセプトがあると思います。

保護者の方ももちろん来るし、スタッフの人が子どもの宿題を見ていることもありますね。

金坂:ご高齢の方もいらっしゃいます。
ご自宅で1人でご飯を食べるのが寂しいという方や、ちっちゃい子と話したりするのを楽しみに来てくれる方もいるんですよ。

——みんなでご飯を食べる特別感、すごく楽しそうですね。
こういった活動の支援までされているって、本当に活動の幅が広くて驚かされます。

きっかけは、2019年の台風被害。市原市の災害ボランティア支援

災害ボランティアの様子

——ボランティアの養成講座や、ボランティアさんと利用者さんとのマッチングなども市社協さんが担当されているんですよね。

齋藤:はい。特にうちの市社協は、災害ボランティアにすごく力を入れています。

——何かきっかけがあるんでしょうか?

齋藤:2019年の台風被害で、災害ボランティアを経験したことですね。
これをきっかけに、災害が起こったときにも、地域で困っている方へ支援ができるように、その体制づくりを日ごろから行っています。

当時は人海戦術で、地域関係者にお願いして災害ボランティアセンターの開設をお知らせするチラシを配りまくったりしていました。(笑)
地域の人が「この家はちょっと手伝ってあげたほうがいいんじゃないか」と思ったお家に、チラシを渡してくれたりもして。

SNSでの発信も、そのときに始めました。
そうしたら市や一般の方も情報を拡散してくれて…土曜日や日曜日は来てくれるボランティアさんの数も多くて、本当にありがたかったです。

その取り組みをやってから、市社協としても変わったなと思います。
社協の存在を知ってくれる人が増えたし、災害ボランティアとして登録してくださる方が今も100人くらいいらっしゃるんですよ。

——そういうときに助けてくれる人や仕組みがあるんだという心強さがありますね。

齋藤:そうですね。
災害がないのが一番だと思うけど、もし起こったとしても安心して暮らせる地域を作っていこうと取り組んでいます。


支援に答えはない。だからこそ、最善の支援を模索する。

——これまでで印象に残っている相談の事例はありますか。

齋藤:8050問題を抱えていて、かつ、「ゴミ屋敷」と呼ばれるような状況になってしまったご家庭の支援ですかね。
ゴミが捨てられない、でも捨てたい。
そんな悩みを抱えたご高齢者の方から、市社協の支援事業を利用できないかと相談をもらったのがきっかけでした。

——どんなふうに対応されたんですか?

齋藤:市社協だけで支援するのは難しかったので、地域包括支援センター*の方にも支援をお願いできないか、掛け合ったりしました。

【補足:地域包括支援センター】
社会福祉士や保健師などの専門性の高い職員が、特に高齢者の介護や福祉に関する相談を中心に受け、支援を行う施設。
市原市内には9か所存在する。*

*参考
地域包括支援センター | 市原市ウェブサイト

齋藤:他にも、町会の人に協力を依頼できないか、地域のボランティアの方はどうか…。
と、市社協の職員はもちろん、いろんな団体さんに相談しながら支援を進めていきました。

——一口に「市社協さんがお仕事されてる」と言っても、その相談ごとにどんな支援が良いか常に模索していらっしゃるし、他の団体さんとの密な連携も欠かせないんですね。

地域の方の笑顔や信頼が、自分のエネルギーに。

——ここまでのお話で、本当にたくさんの大変さを抱えながらも熱心にお仕事されていることが伝わってきました。
最後に、お二人の活力の源になるもの、活動にかける思いをお聞かせください。

金坂:私はボランティアセンターをメインに、家事サポ・ファミサポの方も担当しています。
やりがいは、ボランティアの方に感謝の言葉を言われたときですね。
退職してからノイローゼ気味だった方が、ボランティア活動を始めていろんな方と関わって「人生豊かになったよ」と言葉をくださったときに、良いマッチングが出来たのかなと思えました。
生き生きとした顔で活動されている姿を見ると、本当によかったなと思います。
そういった姿を見るのが一番かなと。

——聞いている私が幸せをおすそ分けしてもらった気分です。素敵ですね。
齋藤さんはいかがですか。

齋藤:今は生活支援(困りごとを抱えている人へのサポート)と地域支援(困りごとを解決するための仕組みづくり)の二つの係りをまとめる役割をしています。

地域の中で困っている人の課題やニーズに基づいて、対策を考えて手伝って、地域にこれが必要だからと仕組みを作ったりして…それらが実現できたときが、やっぱりすごく嬉しいですね。

地域の人にお願いをするときって、最初の内は「もうたくさんやってるよ、まだなにかやるの」と少し渋られることもあるんです。
でも、さっきのゴミ屋敷のお話もそうですけど、本当にリアルな困りごとを地域の人に伝えると顔色が変わるんです。
地域の中に本当にこんな風に困っている人がいるの?って。

普通の生活をしていると、困っていることって目に触れないんですよね。
でもそれを知って「どうにかしてあげないとまずい」と気付いて、課題やニーズに応えて支援を実現していく。

生活支援を一つ立ち上げるにしても、正直、半年や一年なんてすぐ経っちゃいます。
でも、うちの職員たちは一個一個、地域の人たちと話しながら納得してもらって、最終的にどうするかと持っていく。
地域に入り込んで、地道にやっていくからこそ話を聞いてもらえることも多い。
そこはやっぱり、うちの職員のすごいところだし、だからこそ地域の方から信頼されているんだと思います。

——困ってるんだよと言ったときに「手伝うよ」と言ってくださる方がいるということが嬉しいですし、そう言ってもらえるように普段のお仕事から信頼関係を作っていらっしゃる市社協の皆さんのご活躍が本当にすごいなと思います。
齋藤さん、金坂さん、貴重なお話をありがとうございました。

まとめ

自分の住む地域に「お互いを助け合える仕組み」が存在していること。
その仕組みづくりや日々の相談を担ってくれる人たちがいることを、今回取材して初めて知りました。
1人で困ることがなるべく減るように、市社協の皆さんが日々懸命に考えてくださっているんですね。
こうした活動に、私自身ボランティアなどでもぜひ関わってみたいと思いました。

今回ご紹介した活動はごく一部ですが、市原市社会福祉協議会さんは本当にたくさんの活動をされています。
皆さんも何かお困りの際、気になる活動がある場合はぜひ、市原市社会福祉協議会さんに相談してみてはいかがでしょうか。


社会福祉法人 市原市社会福祉協議会
住所:千葉県市原市南国分寺台4-1-4
電話:
0436-24-0011(代表)
0436-20-8585(介護保険事業部門)
0436-20-3100(ボランティアセンター)
0436-26-6200(市原市成年後見支援センター)
営業時間:平日8:30~17:15

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・公式HP:http://www.ichihara-shakyo.or.jp/
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【参考】
・孤独、孤立の意識調査について
孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年実施) - 内閣府

・市原市民の情報入手度合いについて
令和5年度市民意識調査 | 市原市ウェブサイト

・社会福祉協議会について
社会福祉協議会(社協)_全国社会福祉協議会
地域の福祉|市原市社会福祉協議会

・8050問題について
8050問題とは・基礎情報 | NHK ハートネット
地域包括支援センターにおける「8050」事例への対応に関する調査

・家事サポ―ト
出産前後家事等サポート事業 | 市原市ウェブサイト

・ファミリーサポート
いちはらファミリーサポートセンター|市原市社会福祉協議会

・共生型サロンについて
市原地区社協|市原市社会福祉協議会

・地域包括支援センターについて
地域包括支援センター | 市原市ウェブサイト

取材日:2024年6月18日
※記事の情報は取材当時の情報のため、最新の情報とは異なる場合があります。
ご了承ください。

ライター:本吉ふみか

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