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途上国と搾乳

 私はJICA海外協力隊としてグアテマラに派遣され、グアテマラの田舎の病院で活動していました。公立病院であり、資源も人材も十分にない、そんな病院です。住民のほとんどが先住民のマヤの人たちであり、14歳以下の妊婦、5回以上分娩経験のある多産婦も珍しくない状況です。昔の日本は多分、こんな感じだったんでしょう。昔の日本のタイプスリップしたようにいつも感じていました。

 私が活動していた病院では搾乳は取り入れられていませんでした。搾乳という概念がなく、母乳がたくさん出ているのに赤ちゃんが早産で産まれ直接授乳ができないというケースを何例も見ました。同僚の看護師に「絞ってあげたりすることはないの?」と聞いてみたけど、「見たことないね」と言っていました。

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 搾乳を取り入れたいという思いは強くありましたが、同時に正直難しいかなという思いもありました。日本では、早産児や乳頭の形態により直接授乳困難な場合、すぐに選択肢として搾乳は出てきますが、搾乳をするには実はいろんな条件が整っている必要があります。清潔に搾乳し、適切な管理のもと保存し、適切な条件で搾乳を与える。もちろん、搾乳に使用する物品は清潔でなくてはなりません。こんなに母乳が出ているから搾乳を与えてあげたいという思いだけで搾乳を取り入れ、不適切な搾乳によって新生児の感染や下痢などを引き起こしてしまっては意味がありません。

 日本では当たり前のようにできることが途上国では難しいということを実際にその状況に直面して初めて知りました。でも、やはり母乳は新生児にとって良いものであり、早産児にとっては特にメリットが多いです。どうやったら途上国で適切に搾乳が行えるのかについて考えています。

 

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