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「死にたい」を吹き飛ばす爆弾のような、寄り添う音楽

 私の大好きな曲をいくつか紹介します。「死」に関わる、素敵な曲を選びました。

DADA / RADWIMPS

「生まれた時すなわちそれが入り口 あとは誰しもが死ぬ時が出口
生きてることそれこそ回り道 長い暇つぶしそのものが命
なのに なぜに我先に 向かう先は出口とも知らずに
一抜けるために日々自分探し ならぬ肝試し                    終いにゃうらめし                 近道がしたいなら すぐそこにあるよ
壱、弐の、参で 線路へ」

 多くの人が近道を選ばずにわざわざ回り道して生きている、このことが凄く奇跡的な美しいことに思えたり、恐ろしく不気味なことに思えたり。野田洋次郎さんは、3、4歳の時に初めて死を意識して、「なんで産むんだよ、死ななきゃいけないじゃないか、そんな悲しいことがあっていいのか」という気持ちに襲われたそうです。ラリルレ論より。幼い頃から賢すぎるというか……だからこんな歌詞が書けるのか。私は何を思ったんだろう、私も初めて死を意識した時のこと覚えておきたかった、なんて今更言っても仕方ないけど。確かに悲しくて、なんで、って感じで、でも、この人生に終わりがなかったらって思うとぞっとするな。いつか死ぬって、死ねるって、救いでもあるんだろうな。「その気になればいつでも近道を選ぶことができる」、そんな気持ちで生きていれば、むしろ最後まで回り道できそうだなと思います。

生きてることが辛いなら / 森山直太朗

「生きてることが辛いなら くたばる喜びとっておけ」

 言うまでもなく名曲ですが、私はわりと最近知りました。「いっそ小さく死ねばいい」って近道を示しながら、それでも回り道したいと思わせてくれるような曲。死なないために生きることを肯定する言い方はたくさんあって、そういう言葉もみんな素敵だけど、この歌詞には本当にはっとさせられました。その発想はなかった、やられた……って感じ。死ぬことを否定するんじゃなく、優しく包み込む。「くたばる喜びとっておけ」ってめちゃくちゃ良くない!?って知り合いに話したら「好きな食べ物、先に食べるタイプだからあんまり響かない」って言われたけど。まあ確かにそういう人もいるよなぁ、なんて。個人的に「早く死にたい」を否定する気はありません。そこには「生きるのが嫌だ」だけでは説明できない死への憧れとか、死後の世界のイメージとか、色々あって、理想や期待の中で死ねるなら当人は幸せかもしれない。でも周りは悲しい。本当にただ苦しくてそこから逃げたくて死ぬなら……「楽になれる」って思うかもしれない。でも思い詰めた最後の心の声が「こんなことなら生まれなければよかった」とか「自分が嫌い、許せない」とかだったらそれはやっぱりあまりにも悲しいって思ってしまう。だから今は死なないでって、そういう言葉を紡ぎたくなる。長生きすれば「やったーついに死ねるぜ!!」みたいな清々しい気持ちでくたばることができる……とも限らないけどなんとなくその確率は高いって、信じるのは悪くない気がします。

死ぬとき死ねばいい / カンザキイオリ

「生きる意味はそれなりにあるし 死んでしまうときに死ねばいい話だろ」

 確かにこれに尽きるよなぁ、って思える、とてもストレートな歌詞。こういう言葉が実は一番なかなか出てこないなって。「オレはエビフライを食べるために生まれたよ それでいいよね!」、カンザキイオリ展来場者メッセージのコーナーにあった言葉です。ひときわ輝いて見えて、えっ、良いなぁ、好きだなって思いました。なんか多分、本当に、そういうことでいいんだろうなぁって。いつか死ぬのに生きる意味ってあるの?って、どこかで絶対考えてしまうけど、でも、好きな食べ物でも、音楽でも、人でも、学問でも、服でも、なんでも、何かがあれば、それで十分なんだなって。エビフライ食べたくなってきた。

季節は次々死んでいく / amazarashi

「どうせ花は散り輪廻の輪に還る命 最低な日々が 最悪な夢が 始まりだったと思えば随分遠くだ」

 何か失敗して恥をかくことや他人に腹を立てることがあってもこれを聴くと心が落ち着きます。「どうせ」って、冷たいようで温かい。死ぬ理由にも生きる希望にもなる。

ポエジー / amazarashi

「それでも死ななくて良かったと思える日がたまにあることを伝えたい」

 「僕らは雨曝しだが“それでも”というところを歌いたい」そんなamazarashiの、究極の“それでも ”だなぁと思います。伝えたいことは、生きていれば必ずいいことがある、と似てるようだけど全然綺麗事じゃない。生きてて良かった、とは少し違う。「死にたい」を越えた先の言葉の重み。

僕が死のうと思ったのは / 中島美嘉

「死ぬことばかり考えてしまうのは きっと生きることに真面目すぎるから」

 きっと本当にその通りで、強張った心を和らげてくれる優しい言葉。真面目ってよく言われるけど悪口だよ、なんて言っていた子がいました。真面目を長所として褒めると、相手の負担になってしまう。そのイメージ通りしっかりしなきゃって。真面目すぎるんだよって非難されたら、良かれと思って頑張ってるのにって悲しくなる。良い所だけど、それが少しあなたを苦しめてるかもしれないねって、この曲は優しく伝えてくれる。amazarashi秋田さんの提供曲。セルフカバーもまた違った魅力があって素敵です。

 


 

 知らない誰かが苦しいときにそばにいられる、そんな音楽に時々嫉妬してしまいます。ずるいな、凄いな、羨ましいなって。

「親愛なるあなたの爆弾になれるでしょうか あなたの全てをぶち壊すような そんな詩を書きたいのです」 (爆弾 / カンザキイオリ)

 音楽には敵わないけど、一度ぐらいは誰かの「死にたい」を吹き飛ばす爆弾になってみたいなぁ、なんて。でもきっとそんなものは誰もが隠し持っていて、いつ爆発するか誰にもわからないんだろうなとも思います。

「傷つきやすい僕等が身を守るための方法 僕は歌で 君はなにで?」(爆弾の作り方 / amazarashi)


 

 

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