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一寸先は闇。

彼女の心境に変化が起きた。

「子供が欲しくなった」

半年前に仕事を退職した後、フリーターとして自分のライフスタイルに合った生活を送っていた彼女が、最近、妙に転職活動に対して焦りを感じていたのは、将来を見据えてのことだと分かった。

付き合い始めてから、将来設計の話は少ししたことがある。
その時点では、自分の事もままならないのに、子供を育てるなんて想像もできないと話していたし、動物好きの彼女は犬が居れば良いとも語っていたから、この心境の変化には戸惑った。

転職活動中の彼女が私に対しても、「頑張ってほしい」とか、「一緒に転職活動しよう」と口にしていたから、何となく分かっていたけれど、遂に彼女の口から伝えられた。

この言葉を聞いた時、私は胸の奥が苦しくなった。。
同棲とか、結婚とか、そういう責任感のあることを先延ばしにしている私達だったから、突然降りかかった「子供」という重責に対して、
私は何とも言えない焦燥感が駆け巡り、デート中だったけれど、話題を他に変えたくなったし、早くその場からいなくなりたくなった。

焦燥感の原因は分かり切っている。
圧倒的な経済力の無さと、学生時代に母親に告げてしまった「産まれたくなかった」という言葉。自分の人生がうまくいかないのは両親のエゴによって誕生し自我を持ってしまったからだと、責任転嫁する考えを持ってしまった実体験。

今でも、労働とお金に悩むくらいなら安楽死を選んでも良いと思える考えは頭の中にある。

家庭を持つということは、自分を犠牲にしても、妻や子供を優先しなければやっていけないと思う。昨今では共働きの世帯が多いとは言うけれど、それでも、女性には出産という務めがある以上、経済の柱となるのは男性である私だ。

子供を持たないなら、安い給料でも共働きで、それなりに生活できるだろう。動物を飼うのも難しくないだろうし、趣味や旅行にだってそれなりに投資できる。

私と彼女とペットで楽しい生活を送る。それじゃ駄目なのだろうか。

私よりも給与が低くても子供を育てている家庭だって沢山あるとは思う。
育て方や節約によってはいくらでも応用は効くだろうけど、
奨学金で大学に行った私からすると、奨学金を借りずに両親から費用をだしてもらっている裕福な家庭が凄く羨ましかった。
子供にとっては両親が裕福であるに越したことはないし、
何より彼女は妥協という事をあまりしたくなさそうだ。

彼女の問題点というか、厄介な点はそこだろう。
妥協はしたくないし、自分の思い通りにならないと、
機嫌が悪くなったり、情緒が不安定になる。

そういう時にこそ支えてあげるのが彼氏や夫の務めでもあるのだろうけれど、それを負担と感じてしまう自分は器が小さいのだろう。

彼女は私と同じで就職活動は複数の会社を並行して進めるのが苦手なタイプだ。私より大変そうなのは面接で嘘がつけないところ。
最近、1社最終面接まで進んだものの、2週間以上経っても回答が来ないらしい。

結果が分かってしまうと、他の企業を探さないといけないのが億劫で、
未だに会社へは連絡せずに、ひたすら待ちに徹している彼女。
毎夜この事が頭をよぎり涙を流しているらしい。
遊びに対してもこの事が気がかりで100%楽しめないとか。

気持ちは分かる。私だってもう一度、転職活動をするのは億劫だ。
でもそこまで精神が辛いならまだアルバイトを継続して、
ゆっくり進めていけばいいのに。。

連絡するまで選考結果は分からないけれど、
流石に2週間は待たせすぎだし、それに対して何の連絡もしてこないのは、
会社側も誠意に欠けている。
とは言え社会なんてそういう理不尽が当たり前。
彼女は面接で選考している会社を1社だけですと回答してしまったらしいから、良いようにずっとキープされているのかもしれない。
会社側からしたら、ずっと待ってくれるなら他の人も見てみたいだろうし。
それなら早めにこっちから連絡した方が吉だし、彼女の為にはなるけれど、そんな事伝えたら絶対にメンタル悪くなるだろうから、言いたいことも言えずこっちもモヤモヤ。

「子供」という言葉を聞いた時、嬉しがるべきなのに。
幼いころから描いていた夢のような理想の家庭像なのに。
何だか突然彼女との間に距離が出来た気がして、

『俺じゃなくて、経済力のある男性と結婚したら?』

頭の中に浮かんで飲み込んだ言葉。
自分の本心なのか。それとも現実逃避からでた防衛機制なのか。
どちらにしろ最悪だなぁ。自分。




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