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組織文化は余白のなかで生まれる。学校組織から見る考察。

明文化されてない独自のルール=組織文化の一端とも言えます。組織文化が生まれる背景を考察しました。

まえがき

下級生は上級生よりスカートを短くしてはいけない。
下級生はヘアゴムを手首につけてはいけない。
こういった代々口伝されていくタイプの謎ルール、内容は変われど、私の通っていた小学校・中学校・高校それぞれでありました。そんなものは一切なかった、という人の方が少なそうな気はします。

謎ルールの内容は、今では笑っちゃうようなものも多いんですよね。
ヘアゴムを手首につけて、誰に迷惑がかかろうか?

じゃあなんでこんな理不尽で明文化もされてない謎ルールができたのかというと、学校組織の余白が関係してるんじゃないかと思うんですね。

前提1:組織を構成する層

まず学校組織を会社組織に例えてみると、こんな感じです。

生徒 = メンバー層(新人〜若手社員)
先生 = マネジメント層(中堅社員)
学年主任とか教頭とか役職ついてる人 = 経営層

1クラスの生徒数は約30名として、担任の先生(=OJT)1人あたりが担当する新人は毎年30名ほどです。副担任がついていたり、教科ごとに別の先生がいたりはしますが、日々メインで指導にあたっていくのは担任の先生であることが多いでしょう。

これって結構、キツくないですか?
もしも自分がいきなり30名の新入社員のOJTを任されたら…?
しかも一時的な研修ではなく、長期(基本1年以上)に渡って個別指導を全員に並行して行うことを期待されます。そのほかに行事も部活も委員会もあります。教材研究とテスト作成と採点評価ももれなく付いてきます。
泡吹いて卒倒しそうです。

前提2:大量の新人を抱えた組織

人数規模にもよりますが、マネジメント層の人数に比べてメンバー層の人数が圧倒的に多い、というのが学校組織の特徴です。さて、どうやって乗り切りましょうか?

学校組織で成立している(させようとしている)あり方としては、マネジメント層からの指導がなくてもメンバー層の中である程度自主的に秩序を維持できる状態である、ということです。

そのために、役割分担やランキング形式での競争などの手法が取り入れられます。さらに、先輩・後輩の上下間で育成が行われる仕組みも作れれば、万々歳でしょう。
基本的には自主性と自治に期待した相互監視の仕組みを構築することを手段としています。

自主性と自治への期待から生まれた余白(ここから本題)

ここまでのことを一旦まとめると、学校組織とはこんな状態です。

マネジメント層が忙しすぎて細かな部分にまで目が行き届かない。現実的にはマイクロマネジメントなんて無理。だからメンバー層だけでもそこそこ自走できるような状態をつくる(つくりたい)。

(なんというか、組織あるある…?)

これを解決するための手段として「自主性と自治に期待した相互監視の仕組み」を作ろうとしています。
そしてそこに余白が生まれます。

例えば、大抵どの学校にも校則があります。やけに細かすぎたり(スカートの長さをcm単位で指定しているとか)、やけにざっくりしていたり(清潔感のある学生らしい服装、など)、実際の現場レベルで自主性と自治に任せて運用していくには少々工夫が必要です。
そこで生まれるのが「下級生は上級生よりスカートを短くしてはいけない。」というような現場ルールなんですね。

内容の是非は置いておいて、この現場ルールの秀逸なところは以下の通りです。

元のルールが細かすぎて現場で運用しづらかった場合
→誰がどの指標を見れば良いのか示した上で、そこそこ自由度を持たせたルールになっているので、個人の解釈や配慮が入り込む余地が生まれている
元のルールがざっくりしていて現場が暴走しがちだった場合
→解釈の自由度をおさえ具体的な指針を示したので、ルールに沿って実行できた・できないの判断がしやすくなっている

つまり、その組織が持つ大枠のルール(=ビジョンやミッションなど)と現場とのギャップが余白であり、その余白によって現場ルール(=組織文化のひとつ)が生まれてくるわけです。

ギャップは無くすべき?

ここで思い浮かぶのが、もっとうまく組織を運用するためにはギャップを無くせば良いのでは?という考えです。

謎の現場ルールには苦しめられる側面もあります。なぜそのルールが出来上がったのか、もはや誰もわからない、昔からそうだからなんとなく従っている、という類のものには辟易してしまいます。

ギャップが無くなれば、そんな非効率的なルールともおさらばできるかもしれません!

【シミュレーション】
ではスカート丈を気にしなくて良いように、制服は撤廃しましょう。そもそもギャップが発生し得ない状況をつくりましょう。

え?何着ていいかわからないから制服が欲しい?
え?制服がカワイイあの高校に行きたい?
え?担任の先生が結局全て都度対応してる?

うーん、なんだか大混乱の予感ですね…。
多様な価値観をもつ人びとが所属する組織において、現場が自走できてなおかつギャップもなくて…そんな魔法のように完璧な方法は無いのかもしれませんね。

ルールのアップデート

では快適な組織ライフを過ごすためにはどうすれば良いのか?
それはルールをアップデートしていくこと、アップデートを恐れないことにあるのではないでしょうか。

正直なところ、私は学校が大嫌いでした!
「非効率的なルールを強いられる」ことに納得できずストレスを感じるタイプなので、何世代にも渡って受け継がれ、形骸化して理不尽な姿になってしまった現場ルールが、たまらなく嫌でした。

今振り返ってみると、理不尽な現場ルールが誕生し尚且つそれを撤廃できない理由は、現場が自走する仕組みの中にルールのアップデートまで組み込みきれていなかったからかなと思います。

一度形になったルールは変更できない、しづらい、やりたくないという傾向があります。しかし、そこに所属する人びとが入れ替わったり、時代が転換期を迎えたりすれば、最適なルールも変わってくるはずです。

組織において、既存ルールの遵守は大切なことです。しかし、もっと大切なのは、運用過程でルールをアップデートしていくことです。

組織文化のアップデート

組織の独自ルール=組織文化の一端、とすると、ルールをアップデートすることで組織文化もアップデートされていくことになります。
ルールをアップデートしても、前のルールが綺麗さっぱり無かったことになるのではなく、大抵は様々な事情を考慮した改訂の積み重ねという形になるかと思います。

こうしてできあがった重層的な構造が、組織文化を独自のものにしていくのではないかと思います。

組織文化は、その組織をスムーズに運用していくために無視できない存在です。企業においては、競合他社との差別化要因、ひいては業績を左右する一因にもなるのでしょう。

・組織の中にある「余白」を消すのではなく活かすこと
・「ルール」は遵守するのではなく運用すること

その2点を意識することで、より良い組織文化作りができるのかな、と考えての考察でした。

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