ちょっと遅くなったけれど、ここからはじめよう。
人物紹介です
たかやまさん
金髪スレンダーガール。あるとき、長かった髪を極端に短くして周囲を驚かせたが、現在はミディアムボブにまで回復。
いちがやさん
文化系メガネガール。一時期クラフトビールを飲み比べるのにハマっていたが、リニューアルしたアサヒスーパードライが一番好みの味であることに気づいてしまった。
ささづかまとめちゃん
スマホで写真を撮るのがめちゃくちゃ下手で、カメラはたかやまさんに勧められてキヤノンのコンデジを使っている。わたしです。
本文です
朝5時30分。新宿駅南口へ。いちがやさんはすでに待っていた。
中央線快速電車に乗って東京駅に向かう。
いちがやさん
「ロンTとミニスカートねえ」
中央線の車内で、つり革をつかんだいちがやさんが、たかやまさんの服装を眺めながら言った。
たかやまさん
「かわいい?」
たかやまさんが余った袖をつかんでポーズをとる。
そんなことをするわりに、たかやまさんは実のところ服装にほとんど興味がない。普段からいちがやさんとわたしでコーディネートしている。そうしないと極めて適当な格好で街に飛び出してしまう。
いちがやさん
「かわいいけどちょっと寒そうだよ」
たかやまさん
「寒くない。薄着がいい」
10月下旬。だいぶ秋らしくなってきて、いちがやさんはワンピースにジャケットを羽織っているが、たかやまさんは長袖のボーダーTシャツとデニムのミニスカートで、温度差を感じる。
ささづかまとめ
「上着はわたしが持ってます。山の上はちゃんと寒いですから、そのときは着ましょう」
たかやまさん
「うん」
いちがやさん
「山って言っても、高い山じゃないんだよね?」
ささづかまとめ
「そうですね、高尾山の倍くらいですね」
いちがやさん
「高尾山の倍…わかんないなあ」
たかやまさん
「富士山のおよそ3分の1ともいう」
いちがやさん
「それって高くない?」
ささづかまとめ
「1200mくらいです。今の山頂の気候は東京の12月初めくらいだと、ロープウェイの会社のホームページに書いてありました」
いちがやさん
「けっこう寒いねえ」
たかやまさん
「寒いの楽しみ」
いちがやさん
「寒いのが楽しみなの?」
たかやまさん
「うん」
たかやまさんは当然という面持ちでうなずいた。確かに、雪が降ったときなんかはすごくテンションが高いので、言っていることはわかる。わたしたちに見えない毛皮でも着ているのだろうとときどき思う。
列車は東京駅に着く。高いところにある中央線のホームから長いエスカレーターを下りて、コンコースを進んで新幹線の改札口へ。
購入したきっぷの情報が記録されているICカードを改札機にタッチすると、乗車する列車や座席が記載された乗車票が出てくる。
乗車するのは、6時21分発のひかり631号新大阪行き。
ささづかまとめ
「まだだいぶ時間ありますね」
たかやまさん
「お弁当買おう」
いちがやさん
「そうだね。朝ごはん買おうか」
たかやまさん
「うん。さーさちゃんのぶんも買っとく」
ささづかまとめ
「いつもすみません。じゃあちょっと写真撮ってきます」
たかやまさん
「いってらっしゃい」
東海道新幹線を東京駅からちゃんと乗るのは実は初めてだ。いちがやさんは何度か乗ったことがあるそうだし、たかやまさんは仕事でときどき乗っている。わたしも東海道新幹線自体は乗ったことはあるけれど、毎回短距離で、ちょっとしたショートカットくらいにしか使ったことがない。
ついに乗るんだ、という感慨にふけっているのは、このプラットホームにいる人たちの中でわたしくらいかもしれない。修学旅行に行く小学生のような高揚感が胸の底で脈を打っていて気恥ずかしく、しかしこんなに新鮮な気持ちを抱えられていることが、この上なく幸福であるような気もした。
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