年表付きプラットフォームガバナンス関連組織などメモ

ニューズウィークのプラットフォーム・ガバナンスに関する記事で紹介しきれなかった団体などをこちらでまとめて紹介しています。
不十分な箇所や不適当な箇所がありそうな気がしますので、お気づきの方はお知らせください。このnoteでなくニューズウィークの記事についてでも結構です。コメントいただくなり、ツイッターで声をかけていただければ幸いです。

●国連関連
・世界情報社会サミット(WSIS)
平成18年版 情報通信白書より
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h18/html/i3914000.html
国連主催による初の情報通信関係のサミット。第1フェーズは、2003年12月にジュネーブ(スイス)において54か国の政府首脳、83人の情報通信大臣等、176か国、約2万人が参加して開催され、首脳レベルで情報社会に関する共通のビジョンの確立を図るとともに、そのビジョン実現等のための基本宣言及び行動計画を策定した。
ジュネーブ基本宣言 総務省訳
https://www.soumu.go.jp/wsis-ambassador/pdf/wsis_declaration_jp.pdf
2005年11月にチュニス(チュニジア)において第2フェーズが開催され、ジュネーブで採択された行動計画の具体的な実施方策やその体制、インターネットガバナンスの在り方及びデジタル・ディバイド解消に関するファイナンシングメカニズムの検討がなされた結果、チュニスサミット文書(チュニスコミットメント、情報社会のためのチュニスアジェンダ(以下、チュニスアジェンダ))が採択された。
チュニスアジェンダ 総務省訳
https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/997626/www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2005/pdf/051119_1_2.pdf

・インターネット・ガバナンスフォーラム(IGF)
世界情報社会サミット(WSIS)の成果を生かすに当たり、体制維持を望むグローバル・ノースのグループと、ITUの関与を強めたいグローバル・サウスのグループで意見が対立した。これを解決するために国連インターネットガバナンスワーキンググループ(Working Group for Internet Governance: WGIG)が発足し、その最終報告書を受けて誕生したのがIGFである。
参考 IGFとは(Internet Governance Forum)(JPNIC)
https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No47/0800.html

・政府 専門家会合(GGE)
国連第1委員会 (軍縮・国際安全保障問題)の会合。
 ロシアの提案を受けて発足したサイバー空間の安全保障を主たるテーマとした会合。2004年から会合が始まった。参加国の合意がある時のみ報告書が公開される。
参考  複雑化するサイバー規範プロセスの動向(原田有、防衛研究所)
http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary118.pdf

・オープンエンド作業部会(OEWG)
2018年11月、ロシアが中国の協力を得て提案、可決された。扱うテーマはGGEと同じで、国連第1委員会 (軍縮・国際安全保障問題)という点も同じ。違うのは全ての国連加盟国、企業、非政府組織、学術研究者などの参加が可能な会も設けた点。
参考  複雑化するサイバー規範プロセスの動向(原田有、防衛研究所)
http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary118.pdf

・国際電気通信連合(ITU)
国連の専門機関のひとつで電気通信関係を扱う。中国を始めとするグローバル・サウスの影響力が増大しており、グローバル・ノースとグローバル・サウスで意見が対立した場合、多数決でグローバル・サウスが勝つ。
2012年の国際電気通信規則(ITR)改正ではふたつのグループの意見が対立し、多数決の結果、グローバル・サウスが勝利し、グローバル・ノースの一部はサインを拒否した。日本も拒否した中の1国である。
参考 総務省のITU紹介ページ
https://www.soumu.go.jp/g-ict/international_organization/itu/
ITU世界国際電気通信会議(WCIT-12)における議論(総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/cyberspace_rule/wcit-12.html

・国連事務総長の「デジタル協力に関するハイレベル・パネル」、国連事務総長報告「デジタル協力のためのロードマップ」
包括的にデジタルを活用し、恩恵を広げ、損失を最小限に抑えるための協同作業に関する検討を行うためのパネル。2018年7月に設置、2019年6月に報告書が公開され、2020年6月のロードマップが公開された。
参考 「デジタル協力」関連の最新動向」(JPNIC)
https://blog.nic.ad.jp/2020/4874/
国連事務総長報告「デジタル協力のためのロードマップ」
https://www.un.org/en/content/digital-cooperation-roadmap/assets/pdf/JPN_DIGITAL_ROADMAP.pdf

●国連以外の動き
・世界経済フォーラム

 世界的な課題に取り組むための交流を目的とした非営利組織。スイスのダボスで開催されることから、ダボス会議の名称で呼ばれることが多い。世界最高の頭脳が集結する場、というイメージもあるが、実態は日本からの参加者を見るとだいたいわかる。
近年では、同フォーラムでヤング・グローバル・リーダーに選出され、いくつかのメンバーとなっていた日系の人物がのちに経歴詐称などが露見した事件があった。この人物は日本のサイバーセキュリティ関連の官庁および民間のポストを得ており、セキュリティクリアランスもできない我が国のサイバーセキュリティ関係者の脆弱さを露呈した。
世界経済フォーラム https://jp.weforum.org
第四次産業革命日本センター https://jp.weforum.org/centre-for-the-fourth-industrial-revolution-japan

・ロンドン・プロセス(ロンドン国際サイバー会議)
イギリス政府の呼びかけで始まったサイバー空間の規範に関する会議。
参考 サイバー空間に関するロンドン会議について(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/fuku/yamane/cyber_1111.html

・インターネットガバナンス・グローバル委員会(Global Commission on Internet Governance)
カナダのセンター・フォー・インターナショナル・ガバナンス・イノベーション( Centre for International Governance Innovation)と英国のチャタム・ハウ ス(Chatham House)が立ち上げたインターネット・ガバナンスのシンクタンク。
インターネットガバナンス・グローバル委員会(Global Commission on Internet Governance)
https://www.cigionline.org

・サイバース ペースの安定性に関するグローバル委員会(GCSC)
世界の有識者を集め、包括的な規範の提言を行った。マルチステークホルダー・アプローチの重要性を指摘した。
パリ平和フォーラムで示された、8つの“サイバー規範”とは(InternetWatch)
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/security/1222126.html

・パリ・コール
フランスの大統領マクロンよるサイバー空間の信頼性、安全性確保ための提案。
サイバー空間の信頼性と安全性のためのパリ・コール(在日フランス大使館)
https://jp.ambafrance.org/article13835

・今後のインターネット協力体制に関するモンテビデオ声明
ICANNなどを始めとするインターネット技術基盤に関わる10団体による声明であり、スノーデンによるアメリカの監視活動の暴露を強く意識したものとなっている。
インターネット関連10団体が「今後のインターネット協力体制に関するモンテビデオ声明」を発表(JPNIC)
https://www.nic.ad.jp/ja/topics/2013/20131008-01.html

・NETmundial 「サンパウロNETmundialマルチステークホルダー声明」
インターネット・ガバナンスに関する課題の整理と今後のロードマップをマルチステークホルダーによって示したもので高く評価され、その後、NETmundial Initiativeが発足した。インターネット・ガバナンスへのグローバル・サウスの対等な立場での参画を求めた点も特徴のひとつである。
サンパウロNETmundialマルチステークホルダー声明(日本語訳)(JPNIC)
https://www.nic.ad.jp/ja/translation/governance/20140424.html

・Platform Governance Research Network
インターネットガバナンス・グローバル委員会(Global Commission on Internet Governance)を立ち上げた、カナダのシンクタンク、センター・フォー・インターナショナル・ガバナンス・イノベーション( Centre for International Governance Innovation)のプロジェクト。最初の年次カンファレンスでは、これまでのプラットフォーム・ガバナンスの議論がグローバル・ノース(主としてアメリカ、ヨーロッパ)よりになっていたことを反省点とし、アメリカのプラットフォーム企業によって作られ、運営されているプラットフォームには偏った価値観の偏りは、グローバル・サウスにおいてそれぞれの国の政治や社会状況の違いを反映した異なる影響を与え、政治的、人道的リスクを増大させたとしている。くわしくは下記。
Platform Governance Research Networkの年次カンファレンス資料「Toward a Global Platform Governance Research Agenda」
https://note.com/ichi_twnovel/n/n906a58060f8f

・Free Basics Internet.org
フェイスブック社がインターネットへのアクセスが普及していない国提供している無償インターネットサービス。ただし、アクセスできるのはフェイスブック社の用意したサービスに限定され、フェイスブックによるフェイスブックのためのフェイスブックが統制するサービスとなっている。
各地でさまざまな問題を引き起こしており、ミャンマーのロヒンギャ虐待でもヘイトを加速させたと言われている。グローバル・ボイスの報告書Free Basics in Real Lifeにサービスの詳細が掲載されている。
また、『アンチソーシャルメディア Facebookはいかにして「人をつなぐ」メディアから「分断する」メディアになったか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年9月25日)によると、Free Basicsは下記の60カ国に提供されている(2017年10月時点)。
アフリカ、中東:アンゴラ、ベナン、カーボベルデ、チャド、コンゴ民主共和国、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、イラク、ヨルダン、ケニア、リベリア、マダガスカル、マラウィ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、コンゴ共和国、ルワンダ、セネガル、セイシェル諸島、南アフリカ、タンザニア、ザンビア。
アジアとオセアニア:バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、モルディヴ、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、東ティモール、バヌアツ、ベトナム。南米:アンギラ島、アンティグア・バーブーダ、アルバ、バルバドス、イギリス領バージン諸島、ボネール島、コロンビア、キュラソー島、ドミニカ、エルサルバドル、グレナダ、グアテマラ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、モントセラト島、パナマ、ペルー、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、スリナム、タークス・カイコス諸島

現在は、Dicoverと名称を変更したようである。

Free Basics in Real Life(グローバル・ボイス)
Six case studies on Facebook's internet "On Ramp" initiative from Africa, Asia and Latin America、グローバルボイス、2017年7月27日、https://advox.globalvoices.org/wp-content/uploads/2017/08/FreeBasicsinRealLife_FINALJuly27.pdf
フェイスブック
https://connectivity.fb.com/free-basics/
Resources for Free Basics
https://www.facebook.com/connectivity/solutions/free-basics
Discover
https://www.facebook.com/connectivity/solutions/discover
Facebook Promised Poor Countries Free Internet. People Got Charged Anyway.
https://www.wsj.com/articles/facebook-free-india-data-charges-11643035284
貧困国に無料ネット提供のFB、課金する例
https://jp.wsj.com/articles/facebook-promised-poor-countries-free-internet-people-got-charged-anyway--11643096896



●インド関連の動き
・Delhi Declaration

2014年2月、インドのニューデリーで世界49ヵ国から集まった組織をDelhi Declarationを採択し、Just Net Coalitionを結成した。平和で平等で南北格差のない公共財としてのインターネットを目指している。
The Delhi Declaration for a Just and Equitable Internet
https://justnetcoalition.org/delhi-declaration

・IT for Change
2000年に設立されたインドの市民団体で、デジタル技術の人権、社会正義、平等の貢献を謳っている。その主張は、2021年3月22日、MIT Technology Reviewに掲載された「Democratizing data for a fair digital economy Rethinking capitalism means taking data into account. By sharing data, and addressing governance, the world has more opportunity」(https://www.technologyreview.com/2021/03/22/1021071/democratizing-data-for-a-fair-digital-economy/)と題するインタビュー記事に明確に出ている。経済便益を目的としたデータの民主化である。
くわしくは下記を参照。
MIT Technology Reviewで明かされたインドの野望「Democratizing data for a fair digital economy」
https://note.com/ichi_twnovel/n/nd70c2b946dab
IT for Change
https://itforchange.net

・Just Net Coalition
Delhi Declarationにもとづいて組織されたグローバル・サウス発のインターネット・ガバナンス、プラットフォーム・ガバナンスを提案する市民団体。インドを中心としたグローバル・サウスからの参加が多く、インドの市民団体であるIT for Changeと近い位置にあり、その主張はほぼ同じと考えてよいだろう。グローバル・ノース主体で進んでいるインターネット・ガバナンスをグローバル・サウスからの視点で批判的に検討している。
下記の記事に端的にその主張が現れている。
世界170以上の市民団体がビッグテックのプラットフォーム・ガバナンスへの関与に反対の声
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc99a13c20ae4
https://justnetcoalition.org

●その他
総務省の「サイバー空間の在り方に関する国際議論の動向」がコンパクトに話題を網羅していて便利である。
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/cyberspace_rule/index.html

●年表


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