Platform Governance Research Networkの年次カンファレンス資料「Toward a Global Platform Governance Research Agenda」

2021年3月24日から26日にかけて行われた最初のPlatform Governance Research Networkの年次カンファレンスのための資料(https://www.cigionline.org/articles/toward-global-platform-governance-research-agenda)の内容をご紹介したい。このカンファレンスには5大陸から15団体が参加した(この資料の時点では予定)。

プラットフォーム・ガバナンスとは、 文字通りグーグル、フェイスブックといったプラットフォームのガバナンスを指す。言ってしまえば、それだけなのであるが、政治的、経済的、文化的影響力を持つにいたっているため社会のあらゆる組織と制度に関係してくる。国家、法律、市民すべてである。これらを総合的に整理し、課題を洗い出し、解決を見いだそうとする学際的試みと言ってよいだろう。
近年、注目が集まっているが、おそらく耳にしたことのある方は少ないと思う。これは世界的な課題として研究されているのにもかかわらず、あるいはそのために、地域的な偏りがある。グローバル・サウスの研究者が中心となっている動きのため、グローバル・ノースでは見えにくくなっているようだ。なぜ、そうなっているかについては、この資料にも書かれている。以下、概要をご紹介する。

●What Is Platform Governance?
プラットフォーム・ガバナンスは、国家、政治、経済、社会、市民の相互の複雑な関係をさまざまなレイヤーにわたって検討する総合的なアプローチである。この20年でプラットフォームが民主主義と経済に大きな影響を持つようになり、その力に対する批判的な研究が行われるようになった。しかし、多くの研究はヨーロッパと西洋の文脈で行われており、この偏りは研究の成果を損なう可能性がある。
(20年にわたる研究ではインターネットのプラットフォーム化による競争激化と影響力拡大に対してデータ保護とアルゴリズム説明責任の必要性、コンテンツ・モデレーション、プラットフォームの管理権限の担い手、コミュニティ、プラットフォーム企業への規制などが焦点となっていた)


Platform Governance Growing Pains
プラットフォーム・ガバナンスが直面している困難
コンテンツ・モデレーションに対する過度な注目と、決して合意を見ることのない議論などが、人々の関心を構造的、経済的問題から目をそらしプラットフォーム企業に有利に働いている。
既存のプラットフォーム企業(要するにアメリカ企業)と、最大の市場であるアメリカとヨーロッパに焦点を当てることによって、より根本的で構造的な世界的不平等の問題から隠してしまっている。
テキスト中心でないプラットフォーム、労働問題などが、他の問題と切り離されて研究されがちなことも問題だ。総合的に検討しなければならない。
最大の問題は、プラットフォームの成長によって悪影響を受けたコミュニティがプラットフォーム・ガバナンスの研究から除外されていることである。


●Toward a More Global Platform Governance Research Agenda
プラットフォームの世界的な影響について認識している関係者は多いが、世界の人々に与える影響は均一ではな点が鍵になる。グローバル・ノースとグローバル・サウスでは受ける影響が異なる。アメリカのプラットフォーム企業によって作られ、運営されているプラットフォームには偏った価値観の偏りは、グローバル・サウスにおいてそれぞれの国の政治や社会状況の違いを反映した異なる影響を与え、政治的、人道的リスクを増大させた。
それにもかかわらず、これらのコミュニティからの研究は限られており、過小評価されている。これらは権利に基づくアプローチに含まれるものである。公正、公平なデータ、設計、修復が必要とされている。

●Growing Cross-Collaborations
公平なプラットフォーム・ガバナンスの火急の課題はもっとも影響を受けるコミュニティからの情報を得ることである。そうすることで参加型の研究とコラボレーションを実現できる。その際に、プラットフォームの専門家の役割の見直しが必要となる。たとえばプラットフォーム・ガバナンス上必要な人権保護に関する法制度が整っていなくても、プラットフォームの専門家によってカバーすることができる。
プラットフォーム・ガバナンスの革新的な試みは、グローバル・サウスの市民社会、デジタル権利組織、実務家によるものがいくつかある。インドのData Governance Network、AaptiInstitute、ITfor Changeはそのよい例だ。


●Reorienting Platform Power
よりグローバルなプラットフォームガバナンスの研究アジェンダは、プラットフォーム決定論に対抗する1つの方法である。これは、プラットフォーム決定論はテクノロジーを社会変化の主要な推進力と見なす技術決定論の一分野だ。プラットフォーム決定論は現在のプラットフォームを過度に崇拝したり、悪役にしたてたりする。その結果、よい方向に変換せずに、新しい問題を生み出す可能性がある。
プラットフォーム・ガバナンスはグローバルなコラボレーションを必要とする重要な時期にあり、この分野が活性化されることでプラットフォームは倒れる可能性がある。

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