『歴史戦 朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ』(阿比留瑠比 その他、産経新聞社、2014年10月17日)。歴史戦がわからないので本を読むことにした

歴史戦がわからないので本を読むことにしたシリーズ。これまで読んだのは歴史を紹介する本だったが、今回の『歴史戦 朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ』(阿比留瑠比 その他、2014年10月17日)は産経新聞社の本ではっきりと「歴史戦」と謳っている。

タイトルにもあるように主として朝日新聞の吉田証言と一連の慰安婦関連の報道の問題点を指摘している。他に、河野談話や国連のクマラスワミ報告書の問題を暴いている。ただ、私は専門家ではないので、書かれていることが正しいかはわからないが論拠を上げて誤りを指摘したり、裏側で行われた日韓の調整などの問題を紹介している。

そして、最終的に慰安婦問題で対日感情を悪化させ、日米の信頼関係に悪影響を与えることを目的として中国が仕掛けていると指摘している。事実関係に関しては、私にはなんとも判断できないが、ひとつ言えるのはどのようなゴールを目指しているのかよくわからなかったということだ。ただ単に「自分たちの主張を韓国、中国、国連に認めさせたい」のか、「日本の国益を守りたい」のか、よくわからない。少なくとも事実を検証したいわけではないというのはわかった。なぜなら、朝日新聞、河野談話、国連のクマラスワミ報告書の問題点は指摘されているが、「ほんとうはこうだった」という事実は提示されていない

「自分たちの主張を韓国、中国、国連に認めさせたい」場合、自分たちの主張に基づく事実(個々の誤りの指摘ではなく全体像)を提示しないと向こうも認められないと思うのだが、どうなんだろう?

「日本の国益を守りたい」場合、相手の「歴史戦」の目的が日米の信頼関係の毀損なら慰安婦問題がダメでも他の手を考えるに決まっているので、日米中の関係の調整を方針を政府として決めることが先のような気がする。日本にとってやりやすい日米中の関係のデザインをゴールとして、そこに向かって想定される課題(そのひとつが慰安婦問題かもしれない)をリストアップし、対処してゆくしかないじゃないだろうか? その場合、「歴史戦」という言葉を持ち出したり、歴史に関する問題を特別視する必要はない

前に読んだ下記の2つでも歴史問題が発端で関係が悪化するというよりは、すでに関係がよくない時に歴史問題がぶり返されたり、日本との関係だけでなく他の問題との関係で取り上げられているように感じた。慰安婦の問題は、問題そのものではなく、文脈として把握して対処しなければならないような気がする。

そもそもこうした問題はいっぺんに解決するものではなく、延々と続くものだと思うので、解決を目指すよりは状況に応じてよりよい対処を行うことの方が大事だと思う。そのためには前提となる国際的な文脈の中での日本のあり方や目指す方向が決まっている必要がある。

『日韓関係史』(木宮正史、岩波新書、2021年11月25日)歴史戦がわからないので、本を読むことにした。
https://note.com/ichi_twnovel/n/n0b74db7962a8

『外交ドキュメント 歴史認識』(服部龍二、岩波新書、2015年1月21日) 歴史戦がわからないので、本を読むことにした
https://note.com/ichi_twnovel/n/n27ff88efdfcc

おまけ
もともとは朝日新聞、河野談話という強力なものがあってスタートしているので、単に日本の対応がよくないだけじゃないかという気もした。

また、国連が左派にうまいこと利用されているといった記述もあったが、すでに国連は中国の影響が広がっていて単純に総会で多数決をとれば中国が支持する方が勝つ。この状況を踏まえて対処を考えないと全て失敗する可能性が高い。実際、新疆ウイグル問題でも、香港の問題でも中国を支持する国の方が多いのだ。慰安婦問題で日本が勝てるわけがないと思うのは私だけだろうか?

新疆ウイグル問題が暗示する民主主義体制の崩壊......自壊する民主主義国家
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/11/post-14.php

中国が香港の抗議活動弱体化のために行なっていたこと......サイバー攻撃からネット世論操作
国連人権理事会中国支持派は批判派の約2倍https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/07/post-3_2.php

なのでこの本を読んだ限りでは歴史戦という言葉も含めて必要とは思えなかった。もっと当たり前の政治的な努力から始めないといけないと思う。引き続き時間を見つけて読みます。


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