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ウクライナ侵攻が露呈する欧米とアフリカの亀裂。「Africa’s Ukraine Dilemma」Foreign Affairs

2022年9月5日Foreign Affairsに掲載された「Why the Continent Is Caught Between Russia and the West」(https://www.foreignaffairs.com/africa/africa-ukraine-dilemma-between-russia-west)が印象的な内容だったのでご紹介したい。書いたのはケニアで活動する政治アナリストでライターのNanjala Nyabolaで、『Digital Democracy, Analogue Politics: How the Internet Era is Transforming Politics in Kenya』という著作もある。
これまで何度か、ウクライナ侵攻に対する態度について、アフリカを含むグローバルサウスとグローバルノースには温度差あるいは断絶があるという話(グローバルサウス 「中立」の温度差)をしてきたが、この記事はそれをアフリカにいる当事者の視点で説明してくれている。

●記事の内容

・なぜ、アフリカはウクライナ支援に積極的ではないのか?

そもそもアフリカ54カ国にはそれぞれの事情があり、短期間にまとまると考えるのは難しく、それを要求するのはアフリカ諸国を見下していることにつながる。
一致するのはアフリカ統一機構からアフリカ連合への移行のように長期間をかけて検討してきた結果や、エボラ出血熱やCOVID-19のように緊急かつ統一した活動が必要な場合だ。ロシアのウクライナ侵攻はどちらにも当てはまらない。

くわえて、ロシアは大規模なデジタル影響工作を実施したり、過去の脱植民地化の支援したりしたことがある。また、マリ、エチオピア、ウガンダなどはロシアからの軍事支援で国を支えている。これらの国々は欧米の支援も受けながら、ロシアの支援も受けている。欧米が支援しているからといって簡単にロシアに反対の立場はとれない。

・ぬぐいがたい亀裂

アフリカは長い間、欧米から犠牲を強いられてきており、それは今も続いている。「冷戦」という言葉はグローバルノースでしか意味を持たない。なぜなら、冷戦時代にはグローバルサウスではさまざまな代理戦争が行われており、アフリカでもそうだった。
グローバルノースの中心にある欧米の政治家がウクライナ侵攻のタイミングでアフリカを訪れて、戦争を非難しないアフリカ諸国を偽善と発言する(フランスのマクロン大統領)しており、アフリカの政治家は困惑するしかない。

・グローバルノースは平和のための協力を求めてこない

もし、欧米が平和をもたらすための支援を求めて来るなら応じる可能性はあるだろう。しかし、いま欧米がアフリカ諸国に求めているのは戦争への参加や支援なのだ。欧米が主導する争いで数百万人を失っているアフリカ諸国が応じられるものではない。
多くのアフリカ諸国にとって欧米からの申し出は友好ではなく、道具として使うためのものなのだ。

●感想

まったくその通りとしか言いようがなく。グローバルノースとサウスの断絶をあらためて感じた。拙著『ウクライナ侵攻と情報戦』は、ウクライナ侵攻の背景に、この断絶があると分析したが、状況は全く変わっていない。
ため息しか出ない。

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