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113号室の話

休日の夜。夕食を済ませて洗い物をしたあと、私と恋人は眠る前の2時間を好きなように過ごす。
Switchで対戦することもあれば、それぞれYouTubeを観たりKindleで漫画を読んだりすることもある。別々なことをするときは物寂しくならないようにあつ森をつけたままにしておく。

別な記事にも記載したが私は強迫性障害を持っており、症状が最も酷かった頃は発熱していないかどうかが気になって一日中体温を測っていた。
しかしどういうわけか夕食後になると強迫観念によって生じていた火照りが消失するので、その2時間は体温を気にせずに過ごせる唯一の安らげる時間となっていた。

コロナ禍が始まってから生まれたこの2時間の習慣は、今も私にとって何よりも大切なものである。
心地良すぎて怖いぐらいだ。

PEOPLE1の「113号室」の歌詞に
”僕はただ ずっと君とゲームをして
勝ったり負けたりしていたいだけなんだけどな”

という言葉があり、初めて聴いたときに「そうだとしか言いようがない」と涙が出た。

この世相に夜明けが来ることを願っているのは紛れもない事実だが、いつか好きなように過ごせるようになったとき、私はどうなるのだろう。
住処が変わったとき、私はどうなるのだろう。
家族が増えたとき、私はどうなるのだろう。
このアパートの小さな一室で庇護されたように過ごしている日々の終わりが怖い。

それでもきっと異なる形の安寧を手にすることができると信じている。
恋人と一緒に暮らす前に行った旅行で、その3泊4日の終わりが怖くて客室で泣いたことすら今は懐かしいと思えるのだから。



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