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絶望はせめて美しく在ってほしかった

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黒歴史と思い出を文字にしたもの
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2021年9月の記事一覧

所謂「小金」に想う話

所謂「小金」に想う話

仕事が決まらないまま大学を卒業したため1年間無職だった経験がある。
その頃に周りの友人たちが羨ましかったのは旅行に行った話でもスマートフォンを新調した話でもなく、手数料や資格試験の受験料の類を支払った話だった。

無職はもちろん収入がない。
バイトの経験も乏しいので貯金もない。
毎月、親がお情けとしてくれる5000円が唯一の収入源。

手数料なら数百円、資格試験なら数千円。
欲しいものを買うわけで

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特別で在り続ける音楽の話(SURRENDER/Lostage)

アジカンの「夜のコール」が聴きたくて「NANO-MUGEN COMPILATION 2009」を借り、その中に「SURRENDER」が収録されていた。

頭を殴られたような衝撃だった。
その時の私は20歳になったばかりで、色々なことに振り回されていて、もう自分の未来ぐらいしか拠り所がなかった。
「今日に明日を混ぜる」という詞に言い様のない希望を感じた。
「もう逃がすよ」という詞にそろそろ色々なこと

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特別で在り続けるアルバムの話(Hell-See/Syrup16g)

特別で在り続けるアルバムの話(Hell-See/Syrup16g)

2008年の冬。
TOWER RECORDSでおすすめされていて、ジャケットが綺麗で値段も普通のアルバムよりは安かったから手に取った。
それがSyrup16gの「Hell-see」だった。

そういえばボーカルが鬱病だって公言しているバンドだったっけ。
大学生になって何もかも上手くいっていると思った私はその病をどこか他人事のように感じていて、少しの偏見すら持っていた。

一曲目、「イエロウ」。

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夏の幻を見た話

夏の幻を見た話

これを書いているのは金曜日。
月曜日にあった話をしよう。

午後から入っていた打ち合わせのために会議室に向かった。
中は換気のために窓が開け放されていて、風と緑の匂いと蝉の声で満ちていた。
スマートフォンの電源ボタンを押す。
8月30日と表示される。
7月30日であるほうが正しいような、ずっと続いていきそうな気温。
どうやって長袖を着ていたのか上手く思い出せない。
あの時間を、硝子張りの容れ物に閉

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