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夏の幻を見た話
これを書いているのは金曜日。
月曜日にあった話をしよう。
午後から入っていた打ち合わせのために会議室に向かった。
中は換気のために窓が開け放されていて、風と緑の匂いと蝉の声で満ちていた。
スマートフォンの電源ボタンを押す。
8月30日と表示される。
7月30日であるほうが正しいような、ずっと続いていきそうな気温。
どうやって長袖を着ていたのか上手く思い出せない。
あの時間を、硝子張りの容れ物に閉じ込めておきたかった。
そうして数日経った朝。
低気圧アプリからの注意喚起の通知が届く。
蝉の声は名残すら聞こえない。
クローゼットの奥からカーディガンを取り出す。
どうやって半袖を着ていたのか上手く思い出せない。
夏なんてなかったんだよと言いたげに、雨がフロントガラスを打っている。
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