見出し画像

春節はつゆめ。2022.02.01.

2022年春節。
昨今、寝付きがよろしくない。

布団に入ってから数時間、夜が明けるまで煩悶とし、頃合いを待つ。

右へ左で向きを変え、仰向けはあまり好みではないが時にはそうしてみる。

羊は数えないが、思考はあちこち廻ってとんでもないとこまで行き着くのだが、わざわざ起きて書き留めるほどでもない。

寝れないのなら起きていればいいじゃないか、という進言もご尤もであるが、横たわりたいというのと寒いので布団に包まりたい、それに目が疲れているので閉じていたい。

目を瞑っているからといって寝ているワケではなく、ただ閉じているだけ、頭の中は旋回している。

でもそうしているうちに、数分は眠り側に落ちている場合もありレム睡眠で夢を味わう。

夢は面白い、このレムな時間(睡眠中に眼球がすばやく動く)を活用し、積極的に夢に参加していく。

こちらの要望も反映されるので、現実ではあり得ない願望を投影して、途轍もない物語を構築していくのだ。

就寝。
最初は現実をそのまま利用して、コロナで自粛生活、父親との死別、残された遺品、父が蒐集した書籍へと進む。書籍の題名を反芻し、自分自身がなぜ都市を離れこの片田舎で暮らすのか探る。

そんな折、不思議なタイミングでcovid-19が発生して、三密を避け人と接触しないという状況が生まれ、自ずと家で軟禁、世間体からの許容、いわゆる"ひきこもり"が正当化されていく時代。

僕は父の遺品をネットオークションで売りさばく。

実際にやっているコトでもあるし、父の蒐集した物にそんな価値のあるものはないが、その仕事(らしき)に従事していることで持て余す時間を消費し、(些少ながら)収入も得て、家人にも顔向けができるのであった。

ここまでは現実と呼応し、徐々に夢へと足を踏み入れていく。

冒頭の寝付きがよろしくない、という件の説明を試み、僕は布団の中で右往左往してやがて深い眠りに陥る。

目覚めた僕がいる場所は、白い部屋に白いシーツ、消毒液の匂いと腕に刺さるチューブ、点滴、疑いようもなく病院の一室であった。
しかもどうやら身体は女性化していて、カフカ「変身」のような戸惑い。
なぜ此処にいて、女になっていて、それから看護婦からの疑念を向けられないよう女性言葉を習得せねばと考える。

一方、僕の本当の身体には、病院の女性が宿っていた。
そちらはそちらで僕のふりをせねばならないので、僕の状況を理解するために8畳の部屋を漁り情報を得ようとする。

彼女の身体はもう死期間近で、考えようによっては彼女が夢を入り口にして僕の身体を乗っ取ったような策略家と取れなくもないが、なんと僕は彼女に恋をしてしまう。
さらに悪いことに、この病室の暮らしに安堵感を懐き、今までの暮らしと何が違うのかと考え、早いか遅いか、死期が近付いてくることにも無頓着になっていく。

彼女とは夢の中で逢うことができた。

お互いの生活を発表し、僕は彼女が幸せでいるのが嬉しく、女はこころで真っ赤な舌を出していたが、それを知りつつも満ち足りた気分で、僕(身体は彼女)の余命は尽きようとしていた。

彼女は僕に逢うのが嫌になり眠りを拒絶するようになり、僕は逢えないことに苛立ちながら暗闇に堕ちていく。

これが春節を迎えた初夢。

この夢を境にして行き来する男性性と女性性、どちらも自分自身であって、狡さも献身さも、全部がだだその状況に対応しているだけの言い繕いだったコトにも気付く。

しかし初夢とは、大晦日に見た夢か、はたまた元旦に見た夢なのか?
ま、どちらでもかまいやしないか。

小翔 #一骨画