悩めるプロダクトオーナーはデータを活用するといいかもしれない

こんにちは。日本IBMの植木です。普段は金融機関のDXをご支援しています。

さて、プロダクトオーナーにとって大切なことは何かと問われたら、皆さんは何と答えるでしょうか?
今回特に取り上げたいのは「データで物事を説明できる」ということです。まずはそれによって解決できるペインを挙げてみましょう。

  1. プロダクトオーナーで仕様を決めたいが、上司等のレビューが必要なので現場でアジリティを発揮できない

  2. チーム全員でアイディアを出して進めたいが、開発者からはあまりアイディアが出てこない

いずれも特に大企業におけるアジャイル開発でよくある課題ですが、こういった悩みはデータが解決してくれます。

「今、何をすべきか」を見出すためのKPI

データで物事を説明するというのは、端的に言うとKPIを立てるということです。「そんなのもうやってるわ💢」と思う方も多くいらっしゃると思いますが、私が活用すべきと考えているのは、MAU(月間アクティブユーザー数)などよりも手前にある、ユーザーによるプロダクトの活用度合いを示すような指標です。

具体的に話を進めるために、例としてテーマ投資のサービスを考えてみましょう。このサービスにおいて最終的なビジネスゴールは運用商品の販売であり、購入者数や販売額、手数料収入などが評価指標となると考えられます。ここで、購入に至るまでの経緯をユーザーの立場で考えてみると以下のようなパスを辿ると考えられます。

  • Lv1.興味のあるテーマを見つけた

  • Lv2.興味のあるテーマを定期的に確認している

  • Lv3.対象テーマについてロボアドバイザーに相談した

レベル1からレベル3まで、だんだん購入に近づいていくイメージです。各レベルにあるユーザーは、たとえばLv1は「1つ以上のテーマをお気に入りに登録している」、Lv2は「テーマ関連ニュースの配信機能をオンにしている、かつ、月に2回以上テーマページを閲覧している」といったように、具体的な指標で定義し、データで捕捉していきます。こうすることによってどの段階で伸び悩みがあるかが客観的に明らかになり、今何をすべきかが客観的に捉えられるようになるでしょう。なお今回はわかりやすくするためにコンバージョンの例を挙げましたが、実際にはもっとユーザー体験やエンゲージメントにフォーカスした捉え方になると考えています。

データがペインを解決するメカニズム

さて、このようにデータで物事を説明できるようになることが、冒頭に挙げたペインをどのように解決してくれるのでしょうか。

まずは上司です。上司が仕様をレビューするのは、シンプルに仕様に対して責任を負っているからです。しかし本当に上司が負っているのは投資に対する説明責任のはずです。つまり、ユーザーのレベルアップが購入につながるという仮説について事前に合意していれば、プロダクトオーナーは(仕様はどうであれ)レベルアップするユーザー数について上司にコミットすればよくなります。この役割分担により、仕様は現場マターとなり、迅速な意思決定が可能になります。

次に開発者です。今アイディアが出てこないのは、チーム全体で共有されている指標が「商品購入を伸ばすには?」「MAUを増やすには?」といったものだけだからかもしれません。「Lv1のユーザーを増やすためにはどうすれば良いか?」については、たとえば「SNSを連携してテーマをレコメンドする」であったり、「Lv1のユーザーをLv2にレベルアップさせるには?」については、「値動きのアラートを配信する」といったように、指標がブレイクダウンされていればチーム全体でアイディアを出しあうことが可能になります。

なお、当然のことながらリリースしたフィーチャーがKPIを向上するとは限りませんし、KPIの向上が売り上げアップなどの経営指標の向上に繋がるとは限りません。むしろ繋がらないことの方が多いかもしれません。しかしながらそれを前提に柔軟に次の一手を打てることがアジャイル開発の利点なので、臆することなくどんどんデータを使って仮説検証を進めていきましょう。

おわりに

今回はデータの活用によってステークホルダーや開発者とのコミュニケーションを改善し、アジリティをもってビジネス価値の向上ができるようになるというお話をしました。そして、お気づきかもしれませんが、実はユーザーとのコミュニケーションが一番改善することになります。
データを収集・分析・可視化するためには時間と手間、そして予算が必要になるかもしれませんが、KPIを立てることは今すぐにでもできます。まずはそれをチームの皆さんと共有するところから始めてみてはいかがでしょうか。

それでは、Enjoy Agile!

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