見出し画像

認定スクラムマスター研修から学ぶ「チームの活動を変える」ということ

はじめまして、日本IBMの井関いせきと申します。普段の業務ではスクラムマスターとしてプロジェクト活動をしています。

初めてのnote投稿ゆえにテーマに悩みましたが、昨年Scrum Alliance®が提供する認定スクラムマスター資格取得に向けた研修を受講した際に一番記憶に残った言葉として、「チームの活動を変えてください」という言葉がありました。

出鼻を挫くようですが、正直に言えば、研修中〜研修直後はこの言葉の意味があまりわかっていなかったと思います。
しかし、研修後にチームに戻り仕事をする中で、徐々に理解が深まっていく感覚がありました。そこで、今回はこの言葉を「どのように解釈したか」という点と、「チームにどのように反映する/しているか」を述べたいと思います。


研修の概要と研修直後の状態

研修の概要は本題ではないので詳細は割愛しますが、研修は講師の話を聞く時間は約3割程度であり、他7割は参加者同士のディスカッションの時間でした。
ディスカッションのお題は非常に抽象度が高く(細かな設定やルール・タイムボックスなど何もなし)、受講者約30名強に対する自身の身の振り方を考える→実践するという機会を徹底的に与えられました。

講師の方がおっしゃっていることはかなり抽象度が高く、聞いた直後は頭に言葉が文字として残ってはいるものの、「わかるようなわからないような・・」みたいな状況が多発してました。研修中にその場で発言の意図を理解できたり、その上でさらに自分の状況に当てはめて考えられたことは少なく、「言っていることそのものを理解する」に脳のリソースをかなり割いていた気がします。(下の6側面はどれも講義内には達成できていなかったと思います)

「理解の6側面」
① 説明できる 
原因/結果/プロセス等とロジックを繋げて説明できる
② 解釈できる 抽象的な理解を具体例を用いて言い換えられる
③ 応用できる 理解だけでなくさまざまなケースで実践できる
④ パースペクティブを持てる 多角的な視点を持って理解できる
⑤ 共感できる 自分の経験による感情を持って共感できる
⑥ 自己認識を深められる 理解している自分を理解できる

理解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理論と方法より

「チームの活動を変えてください」という言葉

1. 自分なりの解釈

何度も研修中に伝えられたこの言葉ですが、今言い換えるのであれば、
「チームをよく観察し、チームにとって長く頻繁に行われている習慣を見つけ出し、悪習慣があればその活動を変えてください」ということだったのかなと思います。(もちろん良い習慣を見つけていくのも大事ですが、変化を巻き起こすと言う意味では悪い習慣を優先させるべきだと考えています)

実際にスクラムチームに戻ってみると、形骸化されてきている見積もり・喋る人が固定になってきたKPTでのふりかえり・ファシリテーターの人が画面共有をずっとしなければいけない・タイムボックスを守れないデイリースクラムなどさまざまな悪習慣といえそうなもの(この時点で悪習慣と断定はしてません)が目につきました。そしてそれと同時にわかっていながらもこれらをタンスの隅っこに追いやっていた自分にも気付かされました。

頭を使わずにやっていることは継続性が強い。
例えば、歯磨きをするとき。歯を磨く順番・使う歯ブラシ・何分間ほど磨くか、これらは毎日の習慣として無意識的に行われている。

継続性が強く繰り返し行われる活動に悪い習慣は隠れている。
そこを洞察し、どう活動に根付く習慣を変えるかを考えるのがスクラムマスターの役目だろう。

私たちは、何か「成果」を出すための行動(指標を作ったり、タスクを洗い出したり)には慣れている。ただ「活動」にフォーカスするのは慣れてない。繰り返し訓練すれば、活動にフォーカスできるようになる。

講師の方に研修中述べられたこと

「何かを変えること」ってすごく腰が重いんですよね。「やること」「タスク」は無限に溢れていて、わかりやすい「成果」を求められるプロジェクト活動ではどうしてもそちらが優先されがちです。
目の前にある仕事をそつなくこなしていけば、目先の成果は出やすいのですが、チームの活動をよくしていかない限りは長期的にはチームの生産性ないしそこから生み出される成果の向上は見込めないです。

このような改善活動を行っていく・もしくはチームが行えるような仕組みづくりをしていくのはスクラムマスターしかいません。(POはプロダクトのROIを最大化すべくプロダクトのMVVを練りながらステークホルダとコミュニケーションをしているし、開発チームは自身のバックログ消化に集中しているし)
プロダクトオーナーや開発チームが「成果」を出せるように集中できるような「活動」の仕組みを作っていくことがスクラムマスターの役目だと再認識しました。

活動の仕組みが良くなってもすぐにROIが上がったり、ユーザ価値が上がったり、いわゆる「成果」にはすぐには結びつきません。それでもスクラムマスターはチームを良くしていくことに注力します。これが講師の方がおっしゃられていた「スクラムマスターは縁の下の力持ち」という言葉の意味だったのかと思います。

2. どうチームに反映させているの?

一番大切なのは「チームに隠れている習慣を観察する機会を持つこと」、次に「観察結果から導かれたアクションをチームに定着させること」だと考えています。
私のチームはほぼフルリモートワークで活動しているため、下記のような方法でやっています。

  1. 会議参加とチャットの活用

    • 普段からイベントだけでなくバックログに関する個別の会議にも積極的に参加するようにしています。そこで上手く進まない会議(議論が停滞したり、タイムボックスが守れない)は即座にweb会議のチャット機能でよくなかった点・次からこうしたい、を会議後でも記載するようにしています。

    • 会議内ではすでにその会議で話す論点と決めなければいけないことがあり、チーム活動の改善に関する議論はそこから当たらずも遠からずな話題であるため、時間がない場合は発言ではなくチャットを利用しています。

    • チャットコミュニケーションは時として水物なので、ある程度信頼関係の出来上がったチームでのみできる方法かもしれません。伝わるか不安な内容の際は直接会話するようにしています。

  2. レトロスペクティブの活用

    • 活動の振り返りや悪習慣の洗い出しに、レトロスペクティブの時間はかなり有用だと思っています。普段の会議と違い、メンバー視点で活動を振り返ってもらう時間であるためです。

    • これまではなんとなくKPTで進めていた背景がありましたが、下記のような欠点を感じていたため、縦軸に感情の振れ幅・横軸をスプリント開始から終了までをとった「感情ベースのふりかえり」を織り交ぜていこうと思っています。

      • 決定的に良かった・悪かった事実のふりかえりばかり多くなってしまい、個々人の感情を引き出しづらい(リモートなので尚更)

      • 個別のバックログの話が中心で、それ以外の話題に触れられづらい

      • 時系列で考えられないので直近1~2日前に起きた話ばかりになる

    • まだレトロスペクティブの進め方は模索の段階なので、機会があればlessons learnedとしてチームで試してみたこととその結果を詳しく書いてみたいと思います。


ここまで「活動に根付く習慣を見つけること・良い方向へ習慣を変えること」について述べましたが、実際良くなさそうな習慣を見つけたとしても変えるべき習慣かどうか悩むことも多いです。
(例えば、「何かあるとすぐに会議の時間をとってしまうこと」という習慣はチャットコミュニケーションよりも会議で話すことが好きなAさんからしたらnegativeな感情ではないが、チームの生産性向上のためには悪習慣と言えるのかもしれない)
なので、いろんな価値観を持った人がたくさんいるチームで何が最善なのかを見定めていくのもスクラムマスターの仕事だなあと日々感じてます。

最後までお読みいただいてありがとうございました。
今のチームは2年目に突入しましたが、まだまだ活動改善の余地はたくさんあると思い試行錯誤の日々です。
「挑戦を奨励し、失敗を受け入れてもらえるチーム」だと自負しているので、たくさん失敗しつつ今年度も最高のチーム目指して突っ走っていきます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?