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【過去問解説】広島叡智学園中学校の国語って、どんな問題?(2022年_適性検査B)

※2023/07/16:追記
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こんにちは!公立中高一貫対策のiBASEです。
今回は、広島叡知学園の適性検査B(2022年)の問題を分析しながら、その解説を行います。
それでは国語分野を扱う【大問1】を、詳しく見ていきましょう。


検査B_大問1の出題

2022年も①「ある文章を読んで筆者の伝えたいことをまとめる」と共に、②「それに対する自分の考えを述べる」という出題形式でした。

次の文章は、内田樹さんが書いた『先生は偉い』の一部です。これを読んであとの問いに答えなさい。(※文章は著作権の都合上、省略)

問い
あなたは、この文章を通して、筆者が伝えたいことはなんだと考えますか。また、筆者の伝えたいことに対して、あなたはどのような考えを持ちましたか。次の条件にしたがって書きなさい。

条件
・この文章を通して、筆者の伝えたいことを書くこと。
・筆者の伝えたいことに対する自分の考えについて、これまでの経験を振り返り、具体例をあげながら書くこと。
・300字以上400字以内にまとめて書くこと。

R5適性検査B(広島叡智学園)


また、2021年と同様に、学校HPに掲載の実際の解答用紙は、縦25文字横16文字で計400字の原稿用紙でした。

0.答案の構成

はじめに、50〜100字程度で筆者の伝えたいことを述べます。次に、筆者の主張に対する自分の意見を、端的に50字程度で提示します。そして、200字程度で自らの主張を伝わりやすくするための具体例(これまでの経験や学習内容など)を挙げます。最後に、50字程度で再度自分の主張をまとめると良いでしょう。

1.読解と要約のポイント

課題文は、「先生はえらい」からの抜粋です。文章量は去年よりやや減少し、他府県の中学校と比べ少ないと言えます。また、内容も去年より小学生にとって身近なもので、読みやすくはなっています。しかし、語彙注釈が少なく、具体例が文章の半分以上を占めることから、きちんと読解のトレーニングを積んでおかなければ、要約することは難しいでしょう。


==課題文の“ざっくり”解説==

①題材は「子どもの母語学習」についてです。子どもは、ことばに意味があることを大人から教えられ、言葉を学び始めるのではありません。子どもが、ことばによるコミュニケーションの現場に引き出される中で、ことばに対する問いを立てたからこそ、ことばの学習は始まると書かれています。【具体例】

②学びの根源には、未知のものへの問いかけがあります。また、問うもの自身以外が、この問いかけを発することはできません。それを、筆者は学びの主体性と呼んでいます。【主張・意見】

==============

国語を学んでいると、要約という言葉をよく耳にします。要約とは、一体何をすることなのでしょうか。それは、文章全体の大切そうなところを抜き出し、繋ぎ合わせることではありません。要約とは、筆者の主張のみを取り出すことです。

当然筆者は、自分の主張を読者に伝えるために文章を著しています。その中で筆者は、文章をよりわかりやすく、より説得力のあるものにするため、たくさんの工夫を施します。例えば、言い方を変えて何度も繰り返したり(類比)・対立説を否定したり(対比)・因果関係を用いて理由づけをしたり(因果)・具体例をあげたり(例示)します。それらは、私達が筆者の主張を正確に読み取るためには不可欠です。しかし、要約する際には、それらを解答に折り込む必要はありません。筆者の主張だけを残し、それらを引いていくことで、要約は完成します。

~~2022年度課題文要約プロセス~~

それでは、具体的に課題文を読みながら要約を作成していきましょう。

子どもが母国語を学習するときのことを考えてください。

R5適性検査B(広島叡智学園)

この一文から問題は始まります。ここで私たちは、「この文章は母国語の学習について説明する文章だろう」という予測を立てます。

その後も、子どもの言語学習についての説明がしばらく続きます。次第に、「子どもは言葉を知らず、コミュニケーションの世界に参加する。子ども達はその世界で、未知の音声と接している内に、それが何かを伝えようとしているのではないか、という問いを立てる。その問いに対する答えを追い求めた結果、母語を身につけることができる。」という主張が掴めてきます。

しかし、

これが全ての学びの根源ある問いかけです。

R5適性検査B(広島叡智学園)

という文章が現れます。この一文で筆者は、話題を、言語の習得という学びの一部分から、学び全体へと広げます。ここで初めて私たちは、筆者が学び全体のことについて、わかりやすく説明するために、子どもの言語習得を例に出していたと気づくのです。
このようにして、筆者の伝えたいことは、「学びの根源は自分自身による未知への問いかけである。」ということであり、それを読者にわかりやすく伝えるために、「子どもの母語学習」を具体例として挙げている、という文章の構成を把握します。

そして、筆者の主張のみをまとめ、解答を完成させます。

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要約トレーニングのヒント

要約をするということは、実はかなり難易度の高いことです。それでは、具体的にどのようなトレーニングを積めば良いのでしょうか?それは、「普段の生活の言葉を大切にする」ということです。生活の中で、本や教科書はもちろん、テレビ番組や新聞、学校の授業や人との会話まで、「人が他者に何かを伝えようとしているもの」は無数にあります。それらと接する中で、「今何を伝えようとしているのか?伝わりやすくするためにどのような工夫をしているのか?」と考える習慣がつくと、文章の要約能力は上がっていきます。
例えば、30秒という短い時間で商品の魅力を解説し、購買意欲を高めようとするテレビCMは、人にどのようにしてものを伝えるか、ということが考え尽くされたものであるといえます。そこにどのような工夫が施されているのかを考えてみることは、とても良い現代文の練習になります。また、映画やアニメのタイトルや予告を見て、展開を考えてみるというのも、文章を読むにあたり、見通しを立てる練習になるでしょう。

2.自分の考えを述べるポイント

文章を読解し、要約を終えれば、いよいよ自分の考えを述べます。改めて、筆者の主張をまとめておきます。

学びは未知への問いかけから始まり、それは自分自身によってのみ可能である。

①意見を述べるための6ステップ

この内容に対し、限られた時間で自分の意見を適切に述べるためには、
1:筆者の主張を要素に分ける。
2:要素ごとに自分の経験を書き出す。
3:自分の書き出した経験から、筆者の主張に対.    する立場を考える。
4:経験から答案に使用する素材を選択する。
5:設計図を書く。
6:文章を組み立てる。

という6ステップで臨むと良いでしょう。
それでは、各ステップの解説を行います。

1.筆者の主張を要素に分ける。
今回の場合は、「学びの始まり」「未知との遭遇」「自分自身による問い」という3つの要素に筆者の主張を分割します。
「自分自身による未知への問いかけから学びが始まった」自身の経験を思いつくことは至難の業です。しかし、要素に分けて考えることで具体例は多少なりとも思いつきやすくなるでしょう。

2.要素ごとに自分の経験を書き出す。
それぞれの要素について、自分の経験を書き出します。この際、「使えるか、使えないか」は一度傍へ置き、思いつくことを列挙していきましょう。

3.自分の書き出した経験から、筆者に対する立場を考える。
立場とは、「賛成または反対+α」です。
筆者の意見に対して、賛成するか反対するかを決定していることは、立派な主張を持っているということです。また、筆者の主張に対し、賛成か反対かが明確に定まることはほとんどありません。今回の場合、「未知への問いかけから学びは始まるが、別の要素が加わることもある」「未知への問いかけから学びは始まらないが、学びを進める上でそれは重要な要素だ」といった様々な「賛成か反対+α」の主張が考えられます。自分の列挙した経験を見て、柔軟に筆者の主張に対する立場を考えましょう。

4.自分の経験から答案に使用するものを取捨選択する。
自分があげた経験の中で、答案に使用するものを一つ選択しましょう。その経験については、どのような状況でそれは起こったのか、その時の自分の気持ちはどうであったか、そのあとどのように自分が変わったか、というように、様々な視点からその経験をふりかえりましょう。

5.設計図を作成する。
「賛成か反対+α」「それを説明するための自分の経験」「まとめ」について、それぞれ何を書くか、簡単にまとめます。ここで、文章の内容は決定します。

6.文章を書き上げる
内容は⑤で定まっているので、誤字脱字、日本語として自然かどうかを考えながら、答案を作成します。

②ステップに分けて書くメリット

1つ目は、「具体例と主張に行き違いが生まれにくいこと」です。

採点官は問いに対する答えの質はあまり重視していません。主張に対して論理的に成立しているかを、採点官は大切にしています。筆者の意見に賛成か反対かを先に決めてしまうと、具体例を思いつくことは難しく、また主張とのズレが生じてしまいます。そこで、筆者の主張を要素に分割し、その要素ごとに自分の経験をあげ、そこから自身の「反対か賛成+α」の立場を導くことでそれを防ぐことができます。

2つ目は、「ゆとりを持って取り組めること」です。

設計図を作成し、内容を決めてから書くことで、「内容を考えながら、誤字脱字に注意をし、日本語としても不自然にならないようにする」という三つの作業を同時にする必要がなくなります。これらを並行して行うと、どこかにミスがうまれてしまいます。この作業を分割することで、ゆとりを持って取り組むことができます。

この6ステップは、初め意識しなければ難しいですが、何回も練習していくに連れて、短縮できるようになっていきます。

iBASEでは、このような具体的な作文方法に加えて、自分自身の経験や知識を列挙し、そこから帰納的に自分の主張を導き出すという、アイデアの発想にも重きを置いています。「このテーマが題材であれば、このような具体例を出して、このように述べよ」といった付け焼き刃的な学習は行いません。文章を一文一文丁寧に読み、筆者の主張を把握し、自分の経験や知識を検索し、そこから自分の主張を決定し、論理的に述べる、というストレートで揺るぎない国語力を追求します。

3 おわりに

いかがでしたでしょうか?要約をしてから自分の意見を書くためには、丁寧に一つ一つステップを経ていくことが大切です。

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