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生徒に「自分の人生」を歩んでもらうために

そろそろ、面接対策を始めたり、志望動機を考え始めたりする季節です。

この時期になると、毎年注意深く気を付けなきゃいけないことがあります。それは生徒たちが「大人の正解探し」に没頭しないようにすること。これをどのように回避させるかは、講師としての腕の見せ所なのです。

「大人の正解探し」とは?

この時期、生徒たちは「志望動機」とか「中学校でやりたいこと」とか「将来の夢」とか、未来のことをたくさん聞かれます。素直に答えると「もっと深く考えなさい」とか「なぜそう思うのかを言葉にしなさい」とか、大人都合のいろいろな指示が課されます。そしてひどい場合には「お母さんの言った通りに言いなさい」などという、ハラスメントに苦しむ子たちもいます。

素直な心の声をないがしろにされ、大人が喜ぶ返答を考えていくうちに生徒たちは「こんな感じで言っときゃ怒られない」という妥協点を探すようになります。そうして「ほんとはそんなこと思ってないけど、とりあえず言っとく」という、忖度まみれの志望動機が完成してしまうのです。こういう状態を私たちは、「大人の正解探し」と呼んでいます。

本心ではなく正解を探しただけなのに、張りぼてで出来た志望動機を案外大人たちは喜んだりします。(まあ、気持ちは分からなくもないのですが…)そんな大人からのフィードバックを経た生徒たちは、その後も誰かの欲求を満たして生きていくことに慣れ過ぎてしまう。自分の人生ではなく、他者の人生を生きること(=他社の欲望を満たすことを大切にし過ぎる)が楽だと思ってしまう。

中学受験(特にこれからの時期)は、生徒に「他者の人生」を歩み始めるきっかけを与えてしまう危険性をはらんでいることを、きちんと理解し注意深くあらねばなりません。

そうならないように、どうする?

まずは「未来」のことを語る前に、「過去」や「今」について深く考えるきっかけを与えることが大事だと思います。自分はこれまで何に熱中してきたのか・夢中になったことがあるのか。大人は「それで未来どうしたいの?」を聞いてしまいがちですが、まずは徹底した自己分析が大切です。

▼参考記事(併せてお読みください)

そのうえで、志望している学校のアドミッションポリシーや校訓、具体的な学校行事などを情報として、自分との「共感の接点」を見つけていくことが大切です。「この学校に行けば、こんなことが出来るかもね」と、大人の目線で翻訳しながら、コーチング的に生徒の内発的な動機を醸成していくことが大切です。

iBASEの塾生とは、こうした内容を講師との「対話」の中で、じわじわっと醸成していってもらう機会を作っています。(志望校にもよりますが、だいたい受検日の1か月前ぐらいに)「そもそも、なんで受験するんだっけ?」から始める一連の対話によって、ここまでの人生を言語化していくプロセスです。

通り一辺倒な志望動機を安易に形成させず、本質と向き合うこと。あくまで人生の通過点である受検のタイミングで、自分の心にうそをつかせない。時間がかかっても、「なぜ受験するのか」を深く問う。それがiBASEとしてのポリシーであり、絶対に守りたいことの一つです。

生徒への願い

iBASEは、「合格させるための機関」でありたくないと思っています。公立中高一貫校入試が、これからの時代に求められる本質的な学力を問う試験であるからこそ、受検勉強を十分に味わい、豊かな学力を身に着けてほしいと願っています。

だからこそ、「合格させればなんでもいい」という指導方針は、絶対に取りません。(極論ですが)不合格だったとしてもその後の人生が豊かに幸せなものになるように、受検勉強という体験自体が有意義なものになるよう、未来をみすえた指導を行いたいと思っています。

▼参考記事(これからの時代に求められる学力について)


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