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第13回 PowerPoint チャートパターン

第13回は、チャートパターンについて書いていきます。チャートパターンとは、よく使われる基本的なチャートの型のことです。

チャートパターンについては、多くの書籍で作り方やポイント・コツなどが説明されています。基本的な内容は書籍で勉強できるので、ここでは実際のプロジェクトの中で何度も作成してきたチャートに絞って紹介します。

PowerPointを普段から使っている方からすれば、基本的すぎてつまらない内容になるかもしれません。ただ、これからPowerPointを使ってプレゼン資料を作ろう、資料作成を学ぼうという人には、きっと参考になると思います。

チャートの定義

まずここで紹介するチャートを定義しておきます。端的に言えば、伝えたい情報を、オブジェクトを利用して、構造的に意味を整理したものがチャートとなります。

オブジェクトは様々な形があり、配置も自由です。伝えたい情報をオブジェクトの特性と組み合わせることによって、情報の意味合いを視覚的に伝えることがチャートの利用意義となります。

チャートの最重要要素である「軸」

チャートの中で、最もダイジな情報は、縦・横の「軸」となります。「軸」とは、スライドで伝える情報に与えるルール(=論理構造)です。「軸」の設定によって、情報の整理の方法が変わります。

縦軸・横軸で整理した情報から導かれるのがスライドのメッセージ(=意味合い)になります。故に縦軸・横軸はチャートで伝えるメッセージを構成する最も重要度が高い情報になります。
以下でチャートパターンを合計8パターン紹介しますが、それぞれのチャートにおける「軸」が異なります。それは情報を整理するためのルールが異なるためであり、ルールに応じてチャートパターンが決まる、と言った関係になっています。
※チャートパターンによっては、明確な「軸」がない(明示されていない)場合もあります。

チャートパターンの全体象

紹介するチャートパターンは、合計8パターンです。この8パターンは実際のプロジェクトでも利用した頻出パターンなので、スライドを作る際の引き出しとして覚えておくと、スライド作成が進むと思います。
8つのパターンそれぞれについて以下で1つずつ紹介していきます。

洗い出し

洗い出しは、情報を漏れなくダブりなく整理するために利用するチャートパターンです。このチャートパターンでは、ツリーがよく使われます。論理的思考の本などに書いてあるロジックツリーのイメージです。

例えば、上の図では利益を要素分解して検討すべき項目を整理しています。論理的思考を勉強された方は理解されていると思いますが、ツリーはあくまで情報を分解するものであり、新しい何かを考え出すものではないのでご注意ください。

その他の例では、リサーチ対象を整理などに利用する場合もあります。

洗い出しのチャートの目的としては、資料を見せる相手に検討事項や調査対象の全体像を見せて、双方合意して進めるために使うことが多いです。全体像の認識合わせですね。

例えば、上の図の「販管費低下」が漏れてしまうと、営業利益増加に必要な検討事項が漏れてしまいます。「実は販管費が競合に比べて20%多かった」という笑えない事実が見落とされる可能性があるので、プロジェクト開始初期に全体像をチームメンバー全員で共有するために使うことが多いです。

関係

関係は、そのままですが情報感の関係性を表すチャートパターンです。このチャートパターンでは、ベン図などが使われます。

上の図では3C分析のイメージを表しています。関係性を表す方法は多種多様ですが、概ね4つ程度に分類できます。中でも、ベン図は包含関係を表す際によく利用されます。(重なる部分と重ならない部分を示すのに有効です)
・論理関係(相関関係、因果関係)
・上下関係
・並列関係
・包含関係

関係のチャートの目的としては、やはり情報の整理が多いです。それぞれの情報がどのような関係にあるのか、視覚的に表現して理解促進につなげる狙いで作成することが多いです。

例えば、上の図では3C分析のイメージを提示していますが、通常3Cは、Customer・Competitor・Companyが独立した形で表現されることがほとんどです。ところが現実的には重なっている部分が少なからずあります(グレー部分)。逆に重なっていない部分も当然あります(白部分)。特にCustomerの白部分は他社も自社もリーチできていない顧客なので、潜在顧客がどの程度いるのか、検討するきっかけになるかもしれません。

関係は情報の見せ方によって、見るポイントが大きく変わるので、何をメッセージとして伝えたいのかを明確にしてから作ることをお勧めします。

環境

環境は、環境状態、特にエリアを明確に示す場合に利用するチャートパターンです。このチャートパターンではフットプリントなどが使われます。

上の図では、日本の漁業中心地における漁獲量の推移を示しています。フットプリントに置いてポイントになるのは、エリアの情報に重要な意味があることです具体的なエリア情報を提示して、メッセージを強く訴求する際に有効です。

環境のチャートの目的としては、聞き手により具体的に・生々しく情報を認知してもらうために利用することが多いです。最近で言えば、ジョンズ・ホプキンス大学が作成しているコロナウイルスの感染状況を示すダッシュボードは、フットプリントのお手本のようなチャートです。

階層

階層は、情報の上下関係を表すチャートパターンになります。このチャートパターンでは、組織図が最も利用されます。

上の図ではIT統括部の組織図の例を示しています。組織図のポイントとなるのは、チャートにする組織単位になります。
大枠として、全社→事業部→部課→プロジェクトといった組織単位で組織を分けることが可能ですが、今必要な組織単位を判断し、適切な情報の細かさ・抽象度で整理された組織図を作ることが求められます。

例えば、コンサルティング業界ではプロジェクト単位で仕事をします。プロジェクトが始まる際には、PMを頂点としたチームの組織図が必ず作られ、お客さんに提案書などで提示されます。最小の組織単位となるため、細かく具体的な情報が必要となるため、基本的にバイネームで記載されています。
(TBD:To Be Determindの場合もあります。)

階層のチャートの目的としては、指示命令系統を明確にすること、職務分掌を明確にすることです。端的に言えば、誰が・何の情報を持っているのかを組織所属者で共有するためです。情報の流れが滞れば組織が機能不全に陥ってしまうため、適切な単位での組織図を、組織参加者全員が理解しておくことは仕事を始める上ではかなり重要になります。

評価

評価は、評価対象・評価項目・評価結果を示すチャートパターンです。このチャートパターンでは、マトリクスなどが使われます。マトリクスは私の経験上、最も使用頻度が高いチャートです。

上の図では、配送会社の評価の例を表しています。マトリクスのポイントは、評価対象(縦軸)と評価項目(横軸)の設定です。

ポイント1つ目は、縦軸・横軸の項目が相互に独立していることです。上の例では、A社・B社・C社を、配達品質・配達価格・配達速度という3つの基準で評価していますが、それぞれが独立してお互いの評価に影響を及ぼさない評価対象・評価項目になっています。これによって、各対象を同一評価基準で公正に比較することが可能になります。

ポイント2つ目は、縦軸・横軸が同じ概念レベル(抽象度)になっていることです。特に縦軸の評価対象の設定に関係します。
例えば、A社・B事業部・Cさん、と並んでいた場合、明らかに概念レベルが異なることに気づくと思います。概念レベルが異なることによって起こる問題は、比較できなくなくなることです。なぜかと言えば、比較するための評価基準が異なるからです。
A社・B事業部・Cさん、という例で考えると、A社=法人、B事業部=事業部、Cさん=社員であり、それぞれを比べようにも、比べるための物差しが全く違うので比べようがありません。評価対象は必ず同じ概念レベルとしましょう。

ポイント3つ目は、縦軸・横軸がダイジな評価対象・評価項目担っていることです。特に横軸の評価項目の設定に関係します。
例えば、配達品質・配達価格のみが評価項目として設定されていたとしましょう。この2つだけでも評価はできますが、実は配達速度が最も重要視されている状況だった場合、この配達品質・配達価格のみの評価の価値が激減してしまいます。なぜなら最重要ポイントを見過ごしているからです。
上はシンプルな例でしたが、実際のプロジェクトで、同じように重要な評価基準を見過ごしてしまった場合、お客様から”こいつは何もわかってない”と思われかねませんし、そうなると信頼を失ってしまうことにつながります。
評価基準を洗い出すことも大切ですが、ここだけは押さえておくと言うダイジなポイントは外さないよう注意しましょう。

補足ですが、ダイジなポイントは、人によって変わります。社長にとってダイジなこと、部長にとってダイジなこと、課長にとってダイジなことは全て異なります。それぞれの伝える相手にとってのダイジなことを理解して漏らさないことが、評価の重要ポイント3つ目になります。

評価のチャートの目的としては、比較することです。評価対象を評価項目ごとに比較して、それぞれの違いを見ることが目的となります。その違いがどんな意味を持っているのか、どのような結果をもたらしているのかを考えることで、新しい行動につながり、ひいては変化をもたらします。

評価についてはマトリクスを紹介しましたが、チャートとしては様々な種類があります。

例えば、2×2のマトリクスもよく使われます。2×2のマトリクスでは、主に縦軸・横軸がそれぞれトレードオフの関係になっています。比較対象を、最もダイジな2つの軸で評価する際に使われます。

絞り込み

絞り込みは、母集団から条件にあった対象を抽出するプロセスを観チャートパターンです。このチャートパターンでは、ファネルなどが使われます。

ファネルとは、漏斗のことです。大量のものを絞り込んで少量のみ抽出する、という意味でファネルと呼ばれています。

ポイントは、絞り込む条件と絞り込んだ結果の規模になります。評価のチャートに関連しますが、どう言った条件で、どの程度の規模に絞り込んだのかという論理的な過程を表現することに適しているチャートです。

ファネルはグラフを用いて表現することも可能です。母集団から絞り込んでいくと言う本質的な内容は同じです。

絞り込みのチャートの目的としては、論理の妥当性を示すために使われることが多いです。言い換えれば、結論を導いた思考過程を表現するためです。例えば、業務提携先を評価する際に、どう言った条件で絞り込み、最終的な候補(オプション)はどこか、を1つの絵で論理的に説明できます。
使われる機会の少ないチャートではありますが、知っておくと便利です。

フローチャート

フローチャートは、時間軸で情報を整理するチャートパターンです。このチャートパターンでは、プロセス図などが使われます。

上の図では請求業務のプロセスを示していますが、これが典型的なプロセス図のパターンになります。
・縦軸:登場人物(関係者)
・横軸:プロセス
・クロス部分:タスク

一般的に業務プロセスやオペレーションプロセスなどは、上記のプロセス図で表現されることが多いです。いつ・誰が・何をするのかを端的に表現できるため、プロセス図も使用頻度は高いチャートです。

プロセス図で注意することは、横軸のプロセスは必ず左から右(もしくは、上から下)に流れる点です。時間の流れ(時系列)は左から右に表現されることが基本であり、人間の感覚もそのようになっています。

この人間の感覚に合わせる、と言う点は非常に重要です。なぜなら、違和感を感じるスライドを見たときに、人間は内容ではなく違和感に意識を向けてしまうため内容に集中できなくなります。そのため、人間の感覚に沿った資料を作ることを意識するのは非常に重要です。以下は参考情報です。

フローは様々な応用パターンがあります。
よく使われるパターンとして、ステップを表すチャートが使われます。

他にも、バリュチェーンを表す場合もあります。

プロジェクト管理などではガントチャートを使う場合が多いです。

フローチャートの目的としては、プロセスの全体像(始点〜終点)と他組織との関係性を示すために使われることが多いです。いつ・誰が・何をするか業務全体の中で整理し、関係者間で仕事の流れを共有する際に必要不可欠とも言えるチャートです。

循環

最後に循環を紹介します。循環は物事の循環関係を整理するチャートパターンです。いわゆるサイクルを表す際に使われます。

上の図はPDCAサイクルを表しています。一連の活動が循環関係になっているサイクルを表すのに最適なチャートです。

循環のチャートの目的としては、循環関係を示すことは大前提ですが、各プロセスの抜け漏れや実施有無を把握する際によく示されます。
例えばPDCAサイクルであれば、Check・Actionは実行できているか、などサイクル上で注力すべきポイントを共有すると言った意味で使われることもあります。

チャートの基本構成まとめ

これまで8種類ほどチャートのパターンを紹介してきました。これらを踏まえると、チャートの基本的な構成は大きく3つのパターンになります。このパターンを頭に入れておけば、ある程度チャートのイメージは浮かぶようになります。
(参照:『外資系コンサルのスライド作成術 図解表現23のテクニック】)

終わりに

チャートパターンの紹介は以上となります。これで、PowerPointにおける資料作成の記事はいったん終了となります。

13回では伝えきれなかった部分もありますが、基礎的なところは全て押さえています。実際にプロジェクトで使った内容ばかりなので、学べば即仕事で生かせるスキルだと思います。

私が新卒からコツコツ学んできた内容をシェアさせていただきましたが、これを読んだ人の何らかの役に立てれば幸いです。

資料作成〜PowerPoint編〜 End 

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