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HR豆知識⑧オンボーディング(初級編)

昨今、「オンボーディング」という言葉という言葉に着目する企業が増えてきました。日本のメディアにおいても、リアルな事例ベースで様々な情報は目にすることが出来ると思いますが、グローバルなメディア、または学術的観点からこのオンボーディングという概念を説明していきたいと思います。

1.「オンボーディング」とは何か?

“Onboarding, also known as organizational socialization, refers to the mechanism through which new employees acquire the necessary knowledge, skills, and behaviors to become effective organizational members and insiders.”(オンボーディングとは、組織的な社会化とも呼ばれ、新しく入った社員が効果的な組織のメンバーや組織の関係者になるために必要な知識、スキル、行動を獲得するメカニズムを指します。)

このように組織的な適合を促進したり早めたりするプロセスをオンボーディングと言います。言葉の由来は「乗船」ですので、新しい船に乗るときにどんな機会や情報を提供したらよいのか、という事を指しています。

2.なぜ注目されているか

まず、第一に「欧米諸国で流行っているから」というのは正直否定できません。というのも、欧米諸国では多くの会社がリサーチをかけ、サーベイの結果、オンボーディングプロセスのパフォーマンスが新しく入社した社員のパフォーマンスと離職に関係していると発表されています。しかし、日本企業においてそのようなサーベイの結果(オンボーディングプロセスの品質とパフォーマンスの関係性を示すもの)については、きちんとしたサーベイがなされていないような気がします。

一方で、具体的な調査結果はグローバルベースで見ると見えてきます。

① オンボーディングは、離職に関係している

アメリカのキャリアビルダーというメディア会社とコンサルティング会社のシルクロードが発表した調査結果によると、93%の人々がオンボーディングプログラムはその後会社に残るか否かを決定する意味で重要と答えている

② 離職したら、再雇用の追加コストがかかる

言葉の通りですが、具体的なイメージを持つために再雇用のコストをリサーチベースで把握しておきましょう。

・社員数が60人未満の場合は、予算平均が248万円、実績平均が209万円
・社員数が60~299人の場合は、予算平均が488万円、実績平均が397万円
・社員数が300人以上の場合は、予算平均が1348万円、実績平均が1291万円

当然、人数や職種によって1名当たりの採用コストは異なるものの、エージェントなどを使う場合は年収の30%~35%が相場だと言われていますので、500万円の給料であれば150万円、1,000万円の給料であれば300万円が1めいにかかる追加コストです。

③ オンボーディングは、新しい社員を早く活躍させる

SHL社のグローバル調査プロジェクトで、「平均的な社員がその仕事ができるようになるまでにどれくらいかかりますか?」という質問をしました。7ヶ国の回答の平均は以下のとおりでした。

スウェーデン 10.1ヶ月
オランダ   9.1ヶ月
アメリカ  7.8ヶ月
オーストラリアとイギリス  7ヶ月
香港   6.7ヶ月
インド  6.6ヶ月

日本での結果がないのが残念ですが、少なくとも自然現象では半年かかる適合プロセスと戦略的な機会提供によって1カ月早めることが出来れば、採用の費用対効果は改善されるということは日本の環境でも同じでしょう。

3.オンボーディングを考える前に知っておきたい

① The U-Curve of Cross-Cultural Adjustment(異文化適合カーブ)

図1

ヒトは環境の違いにどのように適応していくのか、という事を研究した考え方です。大きく4つの適合の程度があり、「異文化へポジティブな適合をしていくには少なくとも半年以上かかる」という事を示しています。

② Employee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)

図2

昨今HRのキーワードでもあるEmployee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)ですが、従業員が組織とのかかわりあいをどうとらえているか?「会社に行かなきゃ」ではなく、「会社に行きたい」と思っているかどうか?が組織の生産性やパフォーマンスに関連性があるという事を示しています。

※Employee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)に興味がある方はこちらをご覧ください。

③ リアリティ・ショックとポジティブ・サプライズ

図1

上記のEmployee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)でも言及され、また「若年就業者の組織適応: リアリティ・ショックからの成長(著)尾形 真実哉」でも言及されている事ですが、期待と現実(での認識)のずれが注目されています。このリアリティ・ショックとポジティブ・サプライズが職業的社会化・文化的社会化・情緒的コミットメント・離職意思に関連している事が証明されています。

④ 入社年次ごとの適応課題

図2

そして、上述の「若年就業者の組織適応: リアリティ・ショックからの成長(著)尾形 真実哉」では、大手企業の新卒採用入社者を中心としたインタビューで組織への適応には夫々の課題があると言及されています。

4.とりあえず知っておこう、海外でのオンボーディング具体例

では、海外でのオンボーディングに関する具体例を知っておきましょう。

①Zappos

5週間のお試し期間を通じて、Zaopposのプログラムでは顧客対応の電話から始まり、企業文化や行動規範に関するレクチャー・ワークショップを提供しています。特筆すべき点はプログラムを通じて違和感を感じた場合は、$2,000ドルを得て退職できる制度を設けている点です。

②Google

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Googleでは、非常にシンプルですが有益なオンボーディングプロセスを提供していると言われています。

・役割と責任について話し合う
・新入社員を同僚更にまたその同僚に合わせる
・新入社員がソーシャルネットワーク(アメリカには多くのクラブ活動的なコミュニティんが存在します)を構築するのを支援する
・従業員のオンボーディングチェックインを月1回、新入社員の最初の6か月に設定します。
・オープンな対話を奨励する

SalesForce

Salesforce社でのオンボーディングに関して、AMER Enablement Onboarding DirectorのAlexa Naymanが説明をしている動画です。プログラムを6か月、そして3つの段階で設計しています。70%をオンラインで学ぶ形式をとりながら、他をブートキャンプや相互的な関わりに重きを置いて設計しているという物です。

④Netflix

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Netflixは逆に「初日から活躍できる職場」を目指しており、パフォーマンスを発揮することに拘っているようです。具体的には、新入社員が必要だと思うテクノロジー機器は事前に確認をし、新入社員に初めから意思決定のプロセスに参加してもらうそうです。一方で、メンターのアサインやCEOとの会話の機会を設けている点は他社と共通する部分でしょう。


如何でしたでしょうか?最後まで読んで頂きありがとうございました。次回はオンボーディングプログラムを設計していく上でのポイントを書いてまいりたいと思います。

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