ちょっと、そこのあなたへ | 500文字のエッセイ
青春18切符でも買って、ぼくと旅に出ませんか。
いつもと違う電車にのって、いつもと違う服をきて、いつもと違う景色を見に、いきませんか。
海を越えてゆくような大げさなものでなくとも構わないから、ちいさな胸のたかなりをだきしめてみたいのです。
と、こんな文章を書いたのならば、あなたたちはきっと笑うでしょうね。でもぼくは、あなたたちの中にいるぼくとして生きていくのはやめてしまおうと思ったのです。
あなたというのは、そこのあなたです。
人を蔑み、侮辱して、自己の尊厳を満たすために人を卑下して、価値を押しつけて、自らの生き方を正と決め込んで、それ以外はつまらないものと唾棄している、あなたです。
人は本当の孤独の中では生きていくことはできませんが、かといって他人の中で生きていくわけでもありません。
この歳になって誇れるのは、たとえそれが数えるほどであったとしても、どんなぼくをも笑わずにいてくれる人と人との中で生きていくことができそうだということに限ります。
今日の文字数:424文字
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