それ、伝わってませんよ | 500文字のエッセイ
人間がはじめに手に入れた伝達手段は、絵であった。正確にはそれ以前にも口語、すなわち話し言葉はあっただろうが、伝える、残すといった意志を明確に体現したのは絵であった。
思えば古代人は、ものを伝えることとクリエイティブなことが今より密接につながっていたように思う。文字の根源は絵であるし、文様や土器など、現代になって発掘された古代の遺品は等しく伝達手段の一つとして生まれたものだ。
現代においてクリエイティブというと何か特別なことのように聞こえるが、そもそもは生きることそれ自体がクリエイティブだったに違いない。
ただし、言葉や文字が確立されもう数百年数千年。人類の体には遺伝子的なレベルから、言葉による情報伝達の習慣が蓄積されてしまって、すっかりそれらに頼り切ってしまうことになってしまった。
言葉は便利だが、不完全だ。
匂いや触感があるものではないし、温度のこもるものでもない。漫然と頭や心で抱いたものを託すには、ちょっと心もとないのが真実である。
伝わって当然という前提を疑ってみると、コミュニケーションのかたちは全然違って見えてくる。
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