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92/* 足並みをそろえる、について

歩くのが早い人、遅い人、ゆっくり休み休みでしか歩けない人、誰かの助けなしには歩けない人、「歩く」という行為一つとってみても、この世界にはたくさんの人たちがいる。よく、二人以上の新しいチーム、団体が組まれるときなんかに、「足並みを揃えて頑張りましょう」なんてスローガンが掲げられますが、それは真実でもあり、嘘でもあるような気がしてます。

大学生の頃、生活の大半を車椅子にのって過ごす子どもたちと生活をともにすることがありました。生活をともにする、というのは、衣食住をともにするということです。限られた時間でありましたが。その生活の中では、僕から彼らに歩調を合わせることが求められました。僕がどれだけ早く歩けるかとか、そんなことは関係ないのです。

車椅子を押しながら、彼らのペースに合わせながら、生活をしていくことに慣れるためにはとても時間がかかりました。僕の体や脳みそは、僕の行動スピードに合わせて思考回路も構成されてしまっているので、一から全てのロジックを組み直さなければなりません。でも、物理的に彼らと歩調を合わせて生活をするということは、僕の中にあったあらゆる固定観念を打ち崩してくれました。

僕は立って、歩いて、彼らの車椅子を押します。彼らは座って、車椅子で移動します。世界を見ている視点は違いますが、同じ速度で生活を送っていると見えてくる彼らの心の機微や、僕の心の慢心がたくさんありました。彼らとの生活が、足並みを揃えることの大切さを初めて実感した瞬間でした。

人と人との精神的な距離を近づけるための第一歩は、物理的な距離を近づけることな気がします。例えばそれは、足並みを合わせることだったり。加えて、誰かと行動をともにすることの意義も、そこにあるんじゃないでしょうか。誰かに歩調を合わせたり、合わせてもらたり、引っ張りあって押し合って、自分の速度では見ることのできない世界をみることができる。団体やら、組織やらと規模が大きくなるにつれ、そんな意識が遠のいてしまうのかもしれませんが。。

そんなことを考えながら、ふと彼らの成長した姿を想像して、また会いたいなーと思う日でした。


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