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笑いつづける、覚悟はあるのか

◇イベント詳細◇
『僕たちはこれからどう食っていくか会議 2019』
〈登壇メンバー〉
idontknow.tokyo(青木さん、角田さん、治田さん)
ALLYOURS(木村さん)
HI MOJIMOJI(松岡さん)
hey(佐藤裕介さん)

話が面白いとうのは話術とかそれ以前に、伝えたいことがどれだけあるか、ということなのかもしれない。お笑い芸人の話が面白いのは、話術が長けているからではなくて、「人を笑わせたい」という思いが人一倍強いからなんだろう。人を笑わせたい人の漫談には説得力があるから人は笑うのと同様で、ものをつくって生きていこうとしている人による「どう食う会議」が、面白くないはずがないのだった。

僕の好きな歌の一つに、ブルーハーツの「夢」がある。夢を持つことは格好いいことだと信じ続けてきたし、今でもこの歌のようにいい気になって夢見心地で居たいと心のどこかで思ってしまっている。けれど、夢を持つことより夢を叶えることはよっぽど格好いことも知っている。

登壇者の一人角田さんは、独立して生きていくことを「後ろからゆっくりと追いかけてくる”死”から、逃げ続けること」と表現した。もう彼らにとって、ものを作って生きていくことは、夢ではないんだということを改めて実感する言葉だった。

僕にも夢や欲望はたくさんある。けれどそれらの多くは形にならないままのものだ。だが、形のない夢や欲望でどうやって食っていくつもりなのか、と自問してしまった。

初の女流作家と呼ばれる樋口一葉でさえ、執筆活動を始めてからもお金には困窮し、あらゆる仕事で食いつないでいたというくらいだから、「食っていく」という表現の基準点はわからない。ただ、終盤の青木さんの言葉を聞いて、答えの片鱗を見たような気がした。

青木さんは、これからどう食っていくか、という問いに対して、「面白いことや楽しいことをやっていたら、食っていけちゃった、を証明したい。」と答えたのだった。

そこには好きなことで食っていくことの困難さや、それを乗り越えていく覚悟が垣間見えた。ましてや、好きなことで食っていくと言う以上は、辛い顔や苦労を出せないという切迫感や責任感もあるのかもしれない。

何より若い僕からすると、好きなことで食っていこうとする大人たちがあれほどまでに活き活きと生きている姿を見せつけられるのは、劇薬に近い刺激をもたらしてくれる。どれだけの困難を伴っているか未知数であるにも関わらず、眼前で笑い続ける彼らをみて、単なる憧れを通り越した尊敬の念を確信した。

25歳という現地点から、できるだけ遠い将来を心もとない懐中電灯で照らそうとしたとき、そこには何が浮かび上がるのだろうか。僕に、笑いつづける覚悟はあるのだろうか。どう生きたいかという問い以上に、どう食っていくかという問いは僕の人生に多くの疑問を投げかけてくるようだ。

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