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ハノイノヒト #1-2 「全ては偶然の積み重ね、だから目指すのはもっと先」

※前編はこちらになります。

――妻……ですか!?

……えぇ、妻です。実はベトナム人なんですよ。

もともと学生の頃から東南アジア諸国に興味があって、大学時代に"DOORS"という日越交流プロジェクトに所属していたんです。
夏休みと春休みで年2回、渡航の機会がありました。ですからあの当時は、毎月バイト代の一部を少しずつ渡航用の貯蓄に回しながら過ごしていましたね。

初めて妻と出会ったのは、もう9年前になりますか。ちょうど大学3年に上がる前の春休みでした。
私がそのプロジェクトに所属していた当時、中学校に進学できない児童が多くいた学校に対して奨学金支援や学習支援などを行っていたんです。私が彼女に始めて出会った時、現地のボランティア団体で活動していたんです。

……あ、話長くなりますよ(笑)

――構いません(笑)どうぞ、そのまま続けてください。

その頃既に、彼女は日本への留学が決まっていました。岩手にある在留外国人向けの日本語学校ですね。彼女が来日してからは、週末を利用して会いに行ったこともあります。

その後、茨城県内の大学に入学するんですが……実はこの頃には既に交際していました。ただ結婚は、お互いに将来のことを考えて話し合った上で、彼女の卒業を待ってからにしました。

――なんでしょう。もっと話掘り下げたら映画1本撮れそうな、いい話ですね……。

そうでしょうか?何だか恥ずかしいですが(笑)

えー、話を戻しまして。一方私の方はというと、2013年に茨城県庁に入庁したのですが……なんとその翌年にベトナムからチュオン・タン・サン国家主席が来日してですね。当時、私がベトナム人の彼女と交際中であることは上司も認知していたので、急遽配属部署を越えてお手伝いに入ることになりました。

――え、国家主席ですか……!?なんだか、急展開じゃないですか。

実は、茨城県というのは大都市近郊で農業が栄えている地域として、その専門の方々には著名な場所です。それで、当時国策の一つして農業改革を掲げていたベトナムから、国家主席自ら視察等のために来県したんです。

正直、この出来事は茨城県にとっても大きな転換点だったと思います。その後も何度か、庁内でベトナム関連の業務がありましたし、私も部署を越えて業務に関わることもありました。国家主席来県からの一連の流れが、後の常陽銀行ハノイ駐在員事務所の設立にも繋がったのかな……とも。

一応、設立の話は県庁にも来ていまして。具体的には、県庁内で異動の公募があったんです。複数ヶ国選択肢がある中で、新たにベトナムが追加されていました。

……今だから話せますが、私この当時は第一志望をベトナムではなくイギリスにしていたんですけどね(笑)

――ついに来ましたね!”賽は投げられた”というか、”満を持して”というか、ご自身の活躍の舞台がようやく……って、え?イギリス?

ですよね。やっぱりそうなりますよね(笑)
でも、ちゃんと理由があるんです。

まずはベトナムを選ばなかった理由。これはもう至って単純で、"これまでに何度も行ったことがあるから"でした。
そしてイギリスを選んだ理由。これも割と単純で、"純英語圏の国で英語を本格的に身に付けたかったから"でした。

後に上司も交えた面談をしたのですが、その際に「何でベトナム第一志望にしてなかったの?」と尋ねられました。考えすぎかもしれませんが、庁内での公募状況に関わらず、「ベトナム行きの最有力候補は、あいつだ」と目星をつけられていたのかもしれません。

その後、2018年3月に常陽銀行のハノイ駐在員事務所が設立され、私自身も4月付で常陽銀行に派遣。赴任先で必要不可欠になるであろう分野の勉強や各種準備を着々と進めたのち、晴れて12月に赴任することになります。

――うーん、映画1本って言いましたけど、違いますね。これもう朝ドラ撮れますね(笑)

いやいやいや、そんな大袈裟な(笑)

……まぁ、今すぐにどうこうということでは無いですけど、将来的にはイギリスであったり他の国であったり、行ってみたい気持ちは強いですね。

――他の国も、ですか。ということは、どちらかというと1箇所に深く根ざして、太く長く……ということではないんですね。

そうですね。僕にとって、ベトナムとの縁は色々なきっかけが積み重なった結果だと思っていて。ベトナムとの縁も大切にしたいですが、ベトナムだけに限らず、もっとたくさんの場所で、もっと様々な場面で、これからもずっとずっと挑戦し続けていきたいなぁと。

これまでの全ては、きっと偶然の積み重ね。だからこそ、僕が僕の人生で目指す場所は、もっとずっと先にある気がするんですよね。

編集後記:

ベトナム・ハノイで奮闘する人を対象に、独自の視点から書き綴った本シリーズ(予定)の1発目。今回、予想以上に時間が経過してしまった(本当は8月リリース予定だった)ものの、非常に意義のある取材であり、かつそれを形に残せたのではないかと思っている。
ついでに、今から大体10年くらい後には与野党公認の対立候補を軒並み歯牙にかけることなく、彼が県知事に就任していることにも少しだけ期待をしたい。

そして次回はというと、私自身も非常にお世話になっている、ある先輩を。なんとか11月中にリリースしたいと思っているので、もうしばらく待ってもらえれば幸いだ。

#海外生活 #ベトナム #ハノイ #取材 #ハノイノヒト

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