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SNS疲れになる3つの原因と対策方法のまとめ

はじめに

1995年、日本社会はバブル経済崩壊後の就職氷河期に喘いでいた。しかし、この年に起きた出来事は、後の日本社会、いや世界全体の在り方を根本から変える巨大な波となった。その出来事とは、インターネットの本格的な普及である。

この出来事は、単なる技術革新にとどまらず、人々の思考様式、コミュニケーションの形態、そして社会構造そのものを変容させる契機となった。本稿では、インターネットの登場から現代のSNS社会に至るまでの変遷を追いながら、そこに潜む深い意味と課題について考察を加えていく。

1. デジタル革命の幕開け、インターネットの民主化

1.1 技術の大衆化

1994年、ダイヤルアップ回線の普及が始まり、翌1995年にはWindows 95が発売された。これらの出来事は、それまで一部の専門家や研究者のものだったインターネットを、一般市民の手の届くところに引き寄せた。

当初は高価なPCと複雑な設定が必要だったが、1998年のWindows 98の発売や、SOTECなどの安価なPCの登場により、インターネットは急速に一般家庭に浸透していった。この現象は、知識の民主化と呼ぶべきものだった。

1.2 仮想世界の誕生

インターネットは、性別、年齢、職業、学歴といった現実世界の属性から解放された、新しいコミュニケーション空間を創出した。それは、時空を超えた知識と情報の交換、そして人々の交流を可能にする仮想世界だった。

この世界では、現実のコミュニティとは無関係の他者と、匿名で、好きな時に交流できる。それは、人々に低コストで広範なコミュニケーションの機会を提供した。「旅の恥は搔き捨て」ならぬ「匿名ネットでの恥は搔き捨て」の時代の到来である。

特筆すべきは、この仮想世界が、現実世界でのコミュニケーションに困難を感じる人々にとって、人間関係のセーフティネットとしての機能を果たしたことだ。匿名性と非対面性が、新たな自己表現と他者との関係構築の可能性を開いたのである。

2. スマートフォンがもたらした革命、現実と仮想の融合

2.1 スマートフォンの普及と影響

2010年代に入り、インターネットの世界は再び大きな変革を迎える。その主役がスマートフォンだ。ソフトバンクによるiPhone 3のキャンペーンや、Android端末の登場により、スマートフォンは瞬く間に日本社会に浸透した。わずか5年で所有率が7割を超えるという驚異的な普及速度を見せたのである。

スマートフォンの力は凄まじく、それまで別個の存在だったインターネット世界と現実世界を急速に融合させていった。パソコンのような「所持することの敷居の高さ」がなく、匿名掲示板にアクセスするような特殊な興味がなくても、誰もが気軽にインターネットに接続できる世界を実現したのだ。

2.2 SNSの台頭:欲望と資本主義の交差点

人間は社会的動物であり、誰もが他者とつながりたいという根源的な欲望を持っている。この欲望こそが、資本主義のエンジンを動かすガソリンとなる。IT企業はこの欲望に着目し、次々と新しいSNSを開発した。Instagram、Twitter、TikTokなどのプラットフォームは、人々の心を掴み、今や「SNSをやっていない人間を見つける方が難しい」という状況を生み出している。

2.3 SNSがもたらす階層と世代間の分断、そしてエコーチャンバーの形成

SNSの普及は、皮肉にも社会の分断を助長する側面がある。例えば、Twitter上での議論では、異なる階層や世代間の価値観の衝突が顕著に表れる。これは、現実世界では交わることのない多様な背景を持つ人々が、同じプラットフォーム上で意見を交わすことで生じる現象だ。

特に日本社会においては、終身雇用制度の崩壊や格差の拡大といった社会構造の変化が、SNS上での世代間対立を深刻化させている。例えば、「老害」「ジジイ」といった言葉でシニア世代を批判する若者と、「ゆとり」「さとり」と若者を揶揄する年配者の対立は、SNS上で日常的に見られる光景だ。

この問題の本質は、SNSが提供する「擬似的な平等性」にある。現実世界では存在する社会的階層や年齢による権威が、SNS上では希薄化する。これにより、本来なら対等に議論することが難しい立場の人々が、同じ土俵で激しく対立するのだ。

さらに、SNSのアルゴリズムがもたらす新たな問題として、「エコーチャンバー」の形成が挙げられる。エコーチャンバーとは、同じ意見や信念を持つ人々だけが集まる閉鎖的な環境のことを指す。SNSのアルゴリズムは、ユーザーの興味関心に基づいて似た意見を持つ人々や投稿を優先的に表示する傾向がある。これにより、ユーザーは自分と似た考えを持つ人々とばかり交流することになり、異なる意見や視点に触れる機会が減少してしまう。

このエコーチャンバー現象は、以下のような問題を引き起こす:

  1. 偏った情報環境

    • 自分の意見を支持する情報ばかりに触れることで、バランスの取れた判断が困難になる。

  2. 確証バイアスの強化

    • 自分の既存の信念や意見を裏付ける情報ばかりに接することで、その信念がさらに強化される。

  3. 社会の分断

    • 異なる意見を持つグループ同士の対話が減少し、社会全体の分断が深まる。

  4. 極端な意見の助長

    • 同じ意見を持つ人々の中で、より過激な意見が注目を集めやすくなる。

このように、アルゴリズムによって無限に作られる人間関係は、一見すると個人の興味関心に合わせた快適な環境を提供しているように見えて、実際には社会の分断や偏った世界観の形成につながる危険性をはらんでいる。

3. SNS社会の光と影、新たな課題の浮上

3.1 SNS疲れの正体

誰もがSNSで他者と交流する時代になったことで、新たな問題が浮上した。それが「SNS疲れ」である。本来楽しいはずのSNSが、なぜ人々を疲弊させるのか。その原因は主に以下の3点に集約される。

  1. 発言の重み

    • 匿名文化から実名文化への移行により、ネット上での発言に現実世界以上の責任が伴うようになった。

  2. 無限の人間関係

    • アルゴリズムによって際限なく広がる人間関係が、コミュニケーションコストを増大させている。

  3. 承認欲求の罠

    • 手軽に得られる承認が、依存症的な行動を引き起こしている。

3.2 SNSとの向き合い方

SNSと上手く付き合うためには、以下のような姿勢が重要となる。

  1. 選択的な深い関係

    • 浅いつながりと深い関係を適切に使い分け、オフラインでの交流を持つ相手を慎重に選ぶ。

  2. 階層意識の再認識

    • インターネットは異なる階層の人々を容易につなげるが、それゆえに生じる摩擦にも注意が必要だ。

  3. 現実世界での承認

    • SNSでの承認に頼らず、現実世界で十分な承認を得られるよう努力することが重要。

結論、デジタル時代の新しい人間関係

インターネットとSNSは、私たちに新たなコミュニケーションの可能性を開いた。しかし同時に、それは新たな課題も生み出している。重要なのは、これらのツールを使いこなす知恵を身につけることだ。

SNSは道具であり、それを活かせるかどうかは私たち一人一人にかかっている。現代社会においてSNSと無縁の人生を送ることは難しい。しかし、上手に利用し、SNSに囚われ過ぎないようにすることは可能だ。

デジタル革命は、人間関係の在り方を根本から変えた。しかし、人間の本質的な欲求や社会性は変わっていない。新しい技術と古くからある人間性のバランスを取ることこそ、これからの時代に求められる知恵なのではないだろうか。

インターネットとSNSが織りなす新たな人間関係の地平。それは挑戦であると同時に、私たちの社会と個人の成長の機会でもある。この新しい地平に立ち、私たちはどのような未来を築いていくのか。その答えを探す旅は、まだ始まったばかりなのである。

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