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忘れるためにメモを書く、忘却の効用について

知的生産とは何か?


この問いに答えるため、私たちは知の巨人と呼ばれる梅棹忠夫の言葉に耳を傾けてみましょう。梅棹は、その著書「知的生産の技術」の中で、次のように述べています。

「知的生産」というのは、思考を働かせて、なにか良い新しい事柄ー情報を人に分かる形で提出することである。

知的生産の技術(p10)より

この定義は簡潔ですが、重要な要素を含んでいます。まず、「思考を働かせる」という点。これは単なる情報の受け取りや転記ではなく、能動的な精神活動を意味します。次に、「良い新しい事柄」という点。これは既存の知識の単なる再生産ではなく、新たな価値の創造を示唆しています。

最後に、「人に分かる形で提出する」という点。これは、いくら素晴らしい思考や発見があっても、それを他者に伝達できなければ意味がないということを示しています。

しかし、ここで一つの疑問が生じます。「思考」とは具体的に何を指すのでしょうか。この問いに答えるために、私は「思考・論理・分析」という著書を参照しました。この本の中で、思考は次のように定義されています。

思考とは、端的に表現するとならば、「思考者が思考対象に関して何らかの意味合い(メッセージ)を得るために頭の中で情報と知識を加工すること」である。

思考・論理・分析p16より引用

さらに、同書の別の箇所では、思考のプロセスについて、より詳細な説明がなされています。

思考とは収集された情報おを思考者の知識や経験と突き合わせて比べ、事象を識別したり、事象の関係性を把握したりするという情報の加工行為である。

思考・論理・分析p229より引用

これらの定義から、思考とは単なる情報の受動的な受け取りではなく、積極的な情報処理のプロセスであることが分かります。我々は、新しい情報を既存の知識や経験と照らし合わせ、そこから新たな意味や関係性を見出そうとします。これこそが、知的生産の核心部分なのです。

知的生産とは、このような思考のプロセスを経て得られた新たな洞察や理解を、他者にも理解可能な形で表現し、共有することです。それは単なる知識の蓄積ではなく、新たな価値の創造と伝播のプロセスなのです。

このように考えると、知的生産は単に学者や研究者だけのものではありません。日々の生活や仕事の中で、我々は常に情報を処理し、新たな意味を見出し、それを他者と共有しています。

つまり、知的生産は我々の日常に深く根ざした活動なのです。

知的生産の力を磨くことは、個人の成長だけでなく、社会全体の発展にも寄与します。新たな視点や解決策を生み出し、それを効果的に伝達する能力は、現代社会において極めて重要です。

我々一人一人が知的生産者としての自覚を持ち、日々の思考と表現を磨いていくことが、より豊かで創造的な社会の実現につながるのではないでしょうか。

知的生産性の向上は、私たち全ての人にとって重要な課題です。今回は、その向上のための効果的な戦略について詳しく説明したいと思います。

知的生産向上のための独学の戦略

「独学の技法」から重要なポイントを引用させていただきますが、独学を通じて知的生産性を高めようとする際に最も重要なのは、闇雲に情報を詰め込むことではありません。むしろ、学習の大枠となる「独学の戦略」を最初に定めることが、効率的かつ効果的な学習の鍵となります。

この「独学の戦略」とは何でしょうか。簡単に言えば、自分が何を学び、どのような分野でスキルを磨きたいのかを明確にすることです。これにより、学ぶべき内容が絞られ、学習の方向性が定まります。

例えば、私自身の場合を挙げてみましょう。私は「AI(人工知能)」と「マーケティング」という二つの分野の交差点で仕事をすることを決めました。つまり、AIとマーケティングの両方に精通し、それらを融合させた新しい価値を生み出すことを目指しています。

具体的には、ChatGPTなどの最新のAI技術に関する情報を積極的に収集し、同時にマーケティングの基礎から応用まで幅広く学んでいます。このように、明確な方向性を持つことで、学ぶべき内容が自ずと明らかになり、効率的に知識やスキルを蓄積することができるのです。

重要なのは、自分の興味や目標に合わせて、独自の「独学の戦略」を立てることです。それによって、学習の効率が飛躍的に高まり、結果として知的生産性の向上につながるのです。

皆さんも、自分自身の「独学の戦略」を考えてみてはいかがでしょうか。それが、知的生産性向上への第一歩となるはずです。

とはいえ、ビジネスの世界で活躍するためには、様々な分野の知識を身につけることが不可欠です。確かに、マーケティングは重要な領域ですが、それだけでは十分とは言えません。ビジネスにおける共通言語を習得するには、以下のような分野についても深く理解する必要があります。

  1. 経営学

    • 企業の運営や戦略立案に関する基本的な理論や実践的なスキルを学びます。これには、組織管理、リーダーシップ、意思決定プロセスなどが含まれます。

  2. 財務・会計

    • 企業の資金管理や投資判断に関する知識は、ビジネスの成功に直結します。財務諸表の読み方、投資評価、リスク管理などの理解が求められます。

  3. 人事

    • 人材の採用、育成、評価、そして組織文化の醸成は、企業の持続的な成長に欠かせません。労務管理や人材開発の知識も重要です。

  4. 経済学

    1. 市場の動向や経済政策が企業活動に与える影響を理解することで、より戦略的な意思決定が可能になります。

  5. 情報技術(IT)

    • デジタル化が進む現代のビジネス環境において、ITの基本的な知識は不可欠です。データ分析やデジタルトランスフォーメーションの概念理解も重要です。

  6. 法律

    • ビジネスに関連する法規制や契約に関する基本的な知識は、リスク管理の観点から重要です。

  7. リーダーシップ、マネジメント、意思決定、組織論など

これらの分野を横断的に学ぶことで、ビジネスの全体像を把握し、様々な角度から課題を分析・解決する能力が身につきます。さらに、これらの知識を統合することで、より創造的かつ効果的なビジネス戦略を立案することができるでしょう。

ビジネスの共通言語を習得することは、単に個々の専門知識を積み上げることではありません。それぞれの分野がどのように関連し合い、全体としてビジネスを形作っているかを理解することが重要なのです。この統合的な視点こそが、真の意味でのビジネスリテラシーと言えるでしょう。

次に独自の示唆や洞察を得るための戦略についてお話します。

独自の示唆や洞察を得る為の戦略

ビジネスの世界には、誰もが知っているような共通言語や概念が数多く存在します。例えば、「ROI」「KPI」「イノベーション」といった言葉です。確かに、これらの用語を理解し使いこなせれば、一般的なビジネスパーソンとして普通に仕事をこなすことはできるでしょう。

しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。本当に価値ある人材とは何でしょうか?それは、単に既存の概念を理解しているだけの人ではありません。真に組織に貢献し、市場で競争力を持つ人材とは、独自の視点や洞察を持ち、新たな価値を生み出せる人のことです。

そのような希少価値のある人材になるためには、ビジネスの共通言語を超えた、ユニークなインプットや経験が不可欠です。

例えば、異分野の専門書を読むこと、アートや哲学に触れること、異文化を体験すること、さまざまな人々と対話を重ねることなどが挙げられます。

これらの多様な経験は、あなたの思考の幅を広げ、独自の視点を養います。そして、その独自性こそが、ビジネスにおいて新たな示唆や洞察を生み出す源泉となるのです。

例えば、生物学の概念をマーケティングに応用したり、歴史から組織運営のヒントを得たりすることができるかもしれません。

ビジネスの世界で真に輝く人材になるためには、単に業界の共通言語を理解するだけでは不十分です。確かに、ビジネスの基本的な知識やスキルを身につけることは重要ですが、それだけでは他の多くの人と変わりありません。真に価値ある存在となるためには、その共通基盤の上に、自分だけの独自性を築き上げる必要があるのです。

そのためには、自分の興味や関心に忠実に従い、幅広い分野の知識や経験を貪欲に吸収していくことが大切です。これは単なる「教養」のためではありません。むしろ、一見ビジネスとは無関係に見える知識や経験こそが、新たな視点や革新的なアイデアの源泉となるのです。

例えば、芸術や哲学、歴史、科学など、様々な分野の知識は、ビジネス上の問題に対して全く新しいアプローチを提供してくれるかもしれません。また、旅行や異文化体験などの個人的な経験は、グローバルビジネスにおける洞察力を養うことにつながります。

これらの多様な知識や経験を、自分なりの方法でビジネスに結びつけていく。そうすることで、あなたは組織にとって代替不可能な、高い希少価値を持つ人材へと成長していくのです。誰もが持っていない独自の視点や発想は、イノベーションを生み出し、組織に新たな価値をもたらします。

もちろん、このプロセスは決して容易ではありません。時間も労力も必要とします。しかし、長期的な視点で見れば、このような自己投資は必ず大きな実りをもたらすはずです。あなた自身のキャリアの可能性を大きく広げるだけでなく、組織や社会に対しても、より大きな貢献ができるようになるでしょう。

では、具体的にどのようにしてこの「独自性」を磨いていけばいいのでしょうか。私がおすすめする方法は、以下のようなバランスの取れた読書習慣を身につけることです。

  1. ビジネス書:業界の最新トレンドや基本的なスキルを学ぶ

  2. ビジネスと教養を結びつけた書籍:異分野の知識をビジネスに応用する方法を学ぶ

  3. 純粋な教養書:哲学、歴史、科学など幅広い分野の知識を深める

  4. 趣味のための読書:好きな漫画や小説など、純粋に楽しむための読書

これらをバランス良く組み合わせることで、ビジネスの基礎知識を固めつつ、独自の視点を養うことができます。特に3と4は、一見ビジネスとは無関係に思えるかもしれませんが、実はこれらこそが独創的な発想の源となるのです。

今日から、あなた自身のユニークな視点を磨くための第一歩を踏み出してみませんか。それは、新しい本を手に取ることから始まるかもしれません。あるいは、これまで興味はあったものの、「ビジネスに関係ない」と避けてきた分野に足を踏み入れることかもしれません。

人生は長いマラソンです。一朝一夕には劇的な変化は見られないかもしれません。しかし、日々の小さな積み重ねが、やがてあなたを唯一無二の存在へと変えていくのです。その過程を楽しみ、自分自身の成長を実感しながら、ビジネスの世界で真に輝く存在を目指していってください。

効果的な読書術と知的生産性向上のための指南

これまでに私は、知的生産性を向上させるための様々な戦略や、読むべき本のジャンル、そして具体的な本のリストについて紹介してきました。

しかし、本格的な読書に取り組む前に、読書そのものの技術を磨くことが重要です。そこで今回は、読書の基本を学ぶための素晴らしい一冊を紹介したいと思います。

「本を読む本」の紹介

ここで紹介する本は、モーティマー・J・アドラーとチャールズ・ヴァン・ドーレン共著の「本を読む本」(原題:How to Read a Book)です。この本は1940年に米国で初めて出版されて以来、世界中で翻訳され、長年にわたって読み継がれてきた名著です。


本書の特徴

  1. 良書の定義

    • 本書は、読む価値のある良書とは何かを明確に定義しています。

  2. 読書の本質

    • 読書の本来の意味や目的について深く掘り下げています。

  3. 実践的な読書技術

    • 知的かつ実用的な読書の技術をわかりやすく解説しています。

  4. 段階的アプローチ

    • 初級レベルから上級レベルまで、読書スキルを段階的に向上させる方法を提示しています。

読書レベルの段階

本書では、読書のレベルを以下のように分類し、それぞれの具体的な方法を詳しく説明しています。

  1. 初級読書: 基本的な読解力を身につける段階

  2. 点検読書: 本の全体像を素早く把握する技術

  3. 分析読書: 本の内容を深く理解し、批判的に考察する方法

  4. シントピカル読書: 複数の本を比較・統合し、新たな知見を得る最終レベル

本書の意義

「本を読む本」は、単なる読書技術の解説書にとどまりません。この本は、読者を受動的な読書から積極的で創造的な読書へと導きます。そして最終的には、読書を通じて自己啓発と知的成長を達成する方法を教えてくれるのです。知的生産性の向上を目指す上で、効果的な読書術の習得は不可欠です。「本を読む本」は、その基礎を学ぶための最適な入門書と言えるでしょう。本書で紹介されている技術を身につけることで、あなたの読書はより深く、より実りあるものになるはずです。そして、その先には知的好奇心を満たし、自己を高める無限の可能性が広がっているのです。

運動と知的生産の密接な関係性、脳科学の視点から

多くの人々は、読書や執筆などの知的活動と、運動を別々のものとして捉えがちです。しかし、実際にはこの二つは密接に関連しており、むしろ相乗効果を生み出す関係にあるのです。本稿では、運動が知的生産性に与える影響について、脳科学の知見を交えながら詳しく解説していきます。

  1. 運動がもたらす脳への効果

運動は単に身体を鍛えるだけではありません。実は、私たちの脳にも多大な恩恵をもたらしているのです。近年の脳科学研究により、適度な運動には以下のような効果があることが明らかになっています。

a) 脳血流の増加: 運動によって全身の血流が促進されますが、これは脳も例外ではありません。脳への血流が増加することで、酸素や栄養分の供給が豊富になり、脳細胞の活性化につながります。

b) 神経細胞の新生: かつては、成人の脳では新しい神経細胞は生まれないと考えられていました。しかし、適度な有酸素運動が海馬(記憶や学習に重要な役割を果たす脳の一部)での神経細胞の新生を促進することが分かってきました。

c) 神経伝達物質の分泌促進: 運動は、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促します。これらは気分の安定や意欲の向上に寄与し、結果として集中力の向上にもつながります。

詳細を知りたい方は運動脳をご覧ください。

「忘却」の重要性:外山滋比古氏の洞察

ここで、思考の整理学で知られる外山滋比古氏の興味深い指摘を紹介しましょう。外山氏は、知的生産性を高める上で「忘れる」ことの重要性を説いています。

頭をよく働かせるには、この"忘れる"ことがきわめて大切である。頭を高能率に工場にするためにも、どうしてもたえず忘れていく必要がある。

(思考の整理学 P115

一見paradoxicalに思えるこの主張は、実は深い洞察を含んでいます。私たちの脳は、常に新しい情報を取り入れていますが、同時に不要な情報を整理・廃棄する必要があります。

この「忘却」のプロセスが適切に機能しないと、脳内が雑多な情報で溢れ、新たな思考や創造的な発想の妨げとなってしまうのです。

運動による「忘却」と脳のリフレッシュ

外山氏は、運動が効果的な忘却法になり得ることも指摘しています。

汗を流すのが忘却法として効果があるようだ。気分爽快になるのは、頭が綺麗に掃除されている、忘却が行われている証拠である。適度のスポーツは頭の働きをよくするのに必須の条件でなくてはならない。

思考の整理学 P119より引用

この洞察は、現代の脳科学の知見とも整合性があります。運動によって脳内の血流が増加し、ストレス関連のホルモンが減少することで、不要な思考や情報が整理され、いわば脳内の「大掃除」が行われるのです。これにより、新たな情報の受け入れや創造的な思考が促進されるわけです。

知的活動と運動の効果的な組み合わせ方

では、具体的にどのように運動を知的活動に取り入れれば良いのでしょうか。以下に、いくつかの実践的なアイデアを提示します。

a) 読書前のウォームアップ
本を読む前に、5-10分程度の軽いジョギングやストレッチを行います。これにより脳が活性化され、集中力が高まり、読解力の向上が期待できます。

b) ブレインストーミング中の歩行
アイデアを考える際に、室内や屋外を歩き回ってみましょう。歩行のリズムが思考のリズムを生み出し、新たな発想が生まれやすくなります。

c) 執筆作業の合間の運動
長時間のデスクワークは避け、1-2時間おきに軽い運動(階段の上り下りやオフィスヨガなど)を取り入れます。これにより、脳のリフレッシュと集中力の維持が可能になります。

d) 創造的な問題解決のためのジョギング
難しい問題に直面した際、30分程度のジョギングを行ってみましょう。運動中は問題について意識的に考えないようにします。運動後、リラックスした状態で問題に向き合うと、新たな解決策が浮かびやすくなります。

継続的な実践の重要性

運動の効果を最大限に引き出すためには、継続的な実践が鍵となります。毎日30分程度の中強度の有酸素運動(速歩、ジョギング、水泳など)を行うことで、脳の健康維持と知的生産性の向上が期待できます。

ただし、過度な運動は逆効果となる可能性があります。自分の体力と生活リズムに合わせて、無理のない範囲で運動を習慣化することが重要です。

結論、知的生産性向上のための新たなアプローチ

運動は、単に身体的な健康のためだけでなく、私たちの知的活動を支える重要な要素であることが明らかになってきました。適度な運動を日常に取り入れることで、脳の活性化、集中力の向上、創造性の促進が期待できます。

今後の知的労働において、デスクワークと運動を効果的に組み合わせる新たな働き方が求められるでしょう。運動を「頭の働きをよくするための必須条件」として捉え、積極的に生活に取り入れていくことで、私たちの知的生産性は飛躍的に向上する可能性を秘めているのです。

人間の記憶の限界

メモを取ることの最も基本的な理由は、人間の記憶が本質的に不完全だからです。私たちは日々膨大な情報に接していますが、そのすべてを正確に記憶することは不可能です。この点について、文化人類学者で「知の巨人」と呼ばれる梅棹忠夫氏は、彼の著書「知的生産の技術」の中で興味深い見解を述べています。

記憶があてにならないという事実も、「発見の手帳」をつかっているうちに、うかびあがってきたひとつの「発見」であった

「知的生産の技術」P.30より引用)

梅棹氏は、自身の経験を通じて、人間の記憶の不確実性を「発見」したと述べています。これは、私たちが普段当たり前のように信じている自分の記憶力が、実は思っているほど信頼できるものではないことを示唆しています。

メモによる心理的安心感

メモを取ることには、単に情報を記録するだけでなく、心理的な効果もあります。梅棹氏は同書の中で、次のように述べています。

カードに書いてしまったら安心してわすれてよいのである。

(「知的生産の技術」P.61より引用)

この言葉は、メモを取ることで得られる心理的な安心感を表しています。重要な情報をメモに記録することで、私たちの脳は一時的にその情報を「忘れる」ことができ、他の事柄に集中できるようになるのです。

「忘れる」ことの重要性

一見矛盾しているように思えるかもしれませんが、「忘れる」ことも知的生産において重要な役割を果たします。この点について、思考法研究の第一人者である外山滋比古氏は、彼の著書「思考の整理学」で興味深い観察を述べています。

ただノートにとったり、カードをつくったりするときのように、きれいサッパリ忘れない。不思議である。どうやら、記録したと思う安心が、忘却を促進するらしい。

(「思考の整理学」P.93より引用)

外山氏の指摘は、メモを取ることで生まれる「記録した」という安心感が、逆説的に情報の「忘却」を促進するという興味深い現象を示しています。これは、私たちの脳が新しい情報や創造的な思考のために、不要な情報を整理し、心のスペースを空ける働きをしているのかもしれません。

結論、メモ術の真の価値

以上の考察から、メモを取ることの本質的な価値が見えてきます。メモは単なる情報の記録手段ではありません。それは

  1. 人間の不完全な記憶を補完する道具

  2. 心理的な安心感を提供し、他の思考に集中できるようにする手段

  3. 創造的思考のために必要な「忘却」を促進する仕組み

として機能しているのです。

したがって、効果的なメモ術を身につけることは、単に情報を忘れないようにするためだけでなく、より創造的で生産的な思考を可能にする上で非常に重要だと言えるでしょう。日々の生活や仕事の中で、こうしたメモの本質的な価値を意識しながら、自分に合ったメモ術を見つけ、実践していくことが、知的生産性の向上につながるのです。

「覚えないこと」を前提とした知的生産システムの構築方法



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