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転ばぬ先の杖 ~泥まみれ上等~

前回は営業の前編をやりました。

 私は技術職出身なので営業の事を語るのはおこがましいのですが、起業すると技術だの営業だの言ってられません。そんななりふりかまってられない状態から気が付いたことをお伝えできればと思っています。

今回は後編「転ばぬ先の杖」「泥まみれ上等」です。転んどるやんけ!w

経営者は人生が仕事である

ONとOFF

 思いついたアイデアを具現化するためにはとても大変な努力が必要です。そしてこの努力とは一過性の物ではありません。それはまるで長い年月をかけ、日々生まれる細かなピースをかき集めて大きな絵にするようです。
 休みたいと思ったら負けます。YouTubeを見ていても、スーパーへ行っても、美術館へ行っても、家でゴロゴロしていても、そこら中に小さなピースを見つけることができます。
 だからと言って休まないということではありません。仕事時間じゃないから、夜だから、土日祝だから休むということではないという意味です。

24時間365日360度礼を尽くす意識

 悶々と考えていた問題が誰かと話すと解決することはありませんか?会話をしているときはアイデアが出やすいタイミングです。自分の中の異なる考えは結局は自分の殻を出ていません。異なる経験・体験・意見を持った他人と話すということはそれだけで刺激的なわけです。

 私はお風呂に入っているときにいろんなことを思いつくことが多いのですが、そのためになるべくお風呂を清潔に保つようになりました。清潔に保つとさらに良いアイデアが出てきてくれそうな気がします。

 アイデアは何気ない会話から得られることも多い。そのため普段からツンケンして近寄りがたい雰囲気を出してしまうと、せっかくのアイデアも逃げてしまう。いつでも誰でも近寄りやすい雰囲気を持っておくのはアイデアを呼び込むためのコツだと思います。失意泰然、得意平然。

アイデアがなぜ大切か?

 なぜそんなにアイデアが大切かというと、クリアしないといけない問題が山のようにやってくるからです。しかも教科書はありません。さらに取り組み方を間違えると問題はクリアしても次の問題を大きくしてしまうこともあるからです。
 例えば会社のキャッシュフローに問題が発生し、従業員への給与支払いが厳しくなったとします。この時の(超簡単な)解決策として
1.銀行から借りる
2.従業員の給料を減らす
 があったとします。今これを読んでいる方は1に決まっているじゃんと思うのではないでしょうか。
 ですが信用もなく、将来性も分からな会社にポンとお金を貸してくれる銀行などあるわけありません。何度も取引をして信用があるからこそピンチの時に貸してくれるわけですし、そのピンチの内容によっては貸しても返ってこない可能性が高いわけですから、借りれない可能性もあるわけです。
 となると2です。ですが2をやったらどうなるかは想像できますよね。

 こんなことにならないように日々お金のことを考えるのが社長の仕事の一つです。ではどうやって解決するか。例えば
3.助成金や支援金がないか?
4.自分の身近な人から借りる
5.自己資産を売り、役員借入金とする
 考えればまだあると思います。ですが、1と2しか思いつかない経営者ではだめということです。もちろんそうなる前に手を打てることが最も重要なので毎月の売り上げをしっかりと確保するということが大切になるわけです。
 このことからも常にアイデアを考え選択肢を持つということはとても重要な「転ばぬ先の杖」となるのです。

転ばぬ先の杖 = アイデア

自慢話はするな、絶対

 話をするときに自慢をする人がいます。昔取った杵柄というやつ。「俺たちの若い頃は~」なんて始まったら耳にシャッターが下りますよね。役立つ話もあるのでしょうが、話し方に注意しないといけません。なぜなら自慢話には大切な何かが抜けてることが多いからです。

 例えば成功の陰に上司や部下、お客様の尽力はありませんでしたか?
 当社は製造業関係のシステム案件が多いのですが、現場で協力してくださった方々の存在を忘れてはいけません。通常の作業を中断し、我々のシステムがよりよくなるために力を貸してくださる。そのおかげでプロジェクトが成功することがほとんどです。
 成功の多くが自分の功績であると発言する人の内容は、得るものがありません。重要なのはいかに周りの人に協力を得たかというところ。

ここで心のベクトル反転してください。

 はい、ここで前回出てきた心のベクトルを反転します。
 自分はそんな自慢話をしていませんか?そしてその話のポイントが「自分はすごい」ではなく「誰々に助けてもらった」「そのためにどんな交渉をしたか」になってますか?
 その話の伝えたいことは何ですか?
 「周囲の協力のおかげで今の自分がある」あるいは「協力がなければ人生が変わっていた」のような話でなければ聞いている方はあきれているかもしれませんよ。

社長は汚れ役である

 こんな話を聞いたことがあります(うろ覚えですが、松下幸之助さんのお話だったと思います。間違ってたらすいません。以下私の意訳です)

 あるセミナーに多くの経営者が集まった。平日で費用もそこそこ高い。その人たちに向かって開口一番、

「自分が組織のトップだと思っている人は今すぐ帰ってください」

会場はざわつきます

「組織はピラミッドと言われますが、このピラミッドは逆三角形です。経営者は一番下。従業員の皆さんが働いてくださっているからこんな平日にしかも高額なセミナーに来ることができます。それが分かっていない人はこれからする話を聞いても意味がありません」

 経営者には苦労が絶えません。しかも戦う相手は国だったり顧客だったりルールだったりと多種多様です。そんな戦いを繰り広げているからと言って偉そうにしていてはいけません。偉そうにしたくなる気持ちは分かりますし、自分の部下がそうならないためにも意識しておく必要があります。

 経営者は一緒に働いている人たちができる限り笑顔で暮らしていけるように汚れ役を買って出なければいけない時があります。それは上に立つものの役目です。若い頃はほんの少しの汚れにも傷つき、失っていくものも多い。だからなるべく若葉のうちは先達が身を呈して守る必要があります。
 社長は一番の汚れ役であるという覚悟が必要なのだと思います。

泥まみれになってでも会社を倒さない覚悟

棒大企業の営業との打ち合わせ

 企業風土というものはしっかりとその会社の社員へ伝播します。私がまだ若かったころ、大手メーカーの営業さんにアポイントを頂き、訪問しました。大阪から東京まで移動してせっせと情報を集めていた時でした。

 立派なエントランス。凛と背筋を伸ばす受付嬢。圧倒されます。アポイントの要件を伝え、しばらく待ちます。ですが打合せの時間を過ぎてもその方は現れません。
 10分ほど過ぎて出てきた彼はよれよれのシャツ。ボタンは2つ目まで開け、はだけた襟ぐりから胸元が見えています。私の前にドカッと座り開口一番、

「で、おたく何やってるん人だっけ?」

 私はまだまだ初心な頃だったので頑張って会社の説明や取り組んでいる開発の話をしました。話をしている間はメモも取らず、話が終わっても「ふーん」だけ。少し間があった後、彼が取り扱っている製品の説明定型文を気化されて、じゃと言って打ち切られました。

 私は邪険に扱われた事にも動揺しましたが、世界に名の知れたメーカーの社員がこんなものなのかととても驚きました。その会社を大きくしたのはあなたの手柄ではないだろう?帰りの新幹線は悶々としていたことを思い出します。こんな企業はこの先立ち行かなくなるでしょう。

こんなときどうする?「納期に間に合わない」

さて具体例のコーナーです。

 今日は月曜日です。ちょうど1週間後の月曜日が今作っているシステムの納期だとします。

Aさん:主任、大変です。
主任:どうしたAさん。
Aさん:システムテスト(最終テスト)で更新されないデータがあることが見つかりました。
主任:メイン機能の一つじゃないか。なぜ今まで見つからなかったんだ!
Aさん:今調査中です。
主任:修正にどれぐらいかかる。
Aさん:修正自体は不具合の内容によるのですが、使っている部品が多くの機能と連携している場合は、修正に3日。確認作業に1週間はかかるかと思います。
主任:、、、よし分かった。作業を進めてくれ。

 システム屋さんであればこのような会話はかなりあるあるなのではないでしょうか。

さて、あなたが主任さんだったらどうしますか?スタエフで討論します。

 起業をするなら自分が恥をかくことを厭わないタイミングがあります。自分たちが携わる仕事の価値や意義をしっかりと見極め、その仕事のためなら泥まみれになってでもやり遂げるという決意。そして可能な限り社員へはそんな思いをさせないという心構え(それでも仕方がない時があります。そうなると人が離れてしまうこともあります。めちゃ凹みます)
 そしてそうならないための意思疎通や指導・教育というところへと繋がり、自身の発言や行動、いわゆる所作へもつながると思います。

 泥まみれは恥ずかしいし褒められたものではありません。そうならないための杖をどれだけ用意できるかが経営者の腕の見せ所。そしてその杖がどれもうまくいかなかったときは全てを捨てて泥まみれになることを覚悟しましょう。そして一生懸命泥まみれになりましょう。時間が経ってそれを笑える日が来たら成長できたってことです。

この内容はインターネットラジオ stand.fm にて2022年5月20日に配信予定です。時間は朝10時から。皆様のご意見ご感想をレターやコメントでお寄せ下さい。

次回はその6「木を見て森を見て 特別なことはできない」をお送りします。


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