吃音者の私が効果を感じている仕事術
突然ですが、私は吃音者です。
吃音があることで(電話が鳴る恐怖があることで)仕事に集中できない時間が、就職して4年間ほど続きました。
今回は、そんな吃音者の私が工夫しながら、人並みかそれ以上に仕事ができるようになった「仕事術」について書いていこうと思います。
「吃音者じゃないから関係ない」
という話ではなく、集中できない時、仕事が捗らない時の対処の事例だと思って聞いて頂ければ幸いです。
吃音とは
吃音とは言語障害の一種で、言葉の第一声が詰まって出てこない症状を指します。
「…あ、あ、ありがとうございます」のように、初めの言葉が出てこないのですね。
今回は吃音の話をしたいわけではないので、この辺りの説明に留めますが、
言いたいのは「吃音があることで集中力が極端に削がれていた」ということ。
そして集中力の低下にどう対処したのか、を今回シェアします。
私の職場環境
初めに少しだけ私の職場環境の話をさせてください。
私の本業は「アパレル販売員」です。
職場は店舗で、そこにお問い合わせの電話や、他店からの電話、来店されたお客様への接客が主な仕事です。
吃音は言語障害なので、接客の際に苦労することも当然ありましたが、何よりも難しかったのは、「電話対応」です。
「お電話ありがとうございます」
の「お」がどうしても言えませんでした。
「お、お、お、…」と消え入りそうな声でもがく私の対応に、受話器越しの相手は不信に思っていたはずです。
一緒の店舗で働くスタッフからの目線や評価にもきついものがありました。
そんな状況だったもので、私の脳内は「電話が鳴る恐怖」で埋め尽くされていたのです。
これこそが今回の本題、
気が散って「仕事に集中できない」問題です。
この問題に吃音者である私はどのように対処していったのか?
これをなるべく手短に話していこうと思います。
行きついた結論は「明確にする」こと
もちろん吃音を治すための努力はしました。
お金を払って吃音改善のマニュアルを買ったり、一時期セラピーに通ったこともありました。
でもどうしても無理でした。
自宅やカフェで作業している時と、職場で仕事をしている時では「不安・恐怖の度合い」が違いすぎたのです。
結局電話に出れない状況が変わることはなく、違う手立てを考える必要性に追われました。
そこで出会ったのが、「明確化」という概念です。
仕事術や、心理学系の書籍、情報を取っている中で、「明確化」の概念に出会ったのですが、この概念が後の私の仕事スタイルを大きく変えることになったのです。
明確化とは言葉の通り、「やること」を明確にするということですが、実際には活用範囲の広い概念です。
明確化の例
・「やること」を明確にする
・「やらないこと」を明確にする
・「解決策」を明確にする
・「どの時間にやるのか」を明確にする
・「自分が得意なこと」を明確にする
・「自分の集中できる時間」を明確にする
など、非常に多岐にわたって設定できる概念なのです。
そして何故この概念が、電話の恐怖に取り憑かれ、仕事に集中できなかった私を救ってくれたのかと言うと…
作業の明確化をすることで、目の前の仕事に集中できるようになり、結果として「電話が鳴る」ことについて考える時間を減らすことができたから
です。
実は私が仕事に集中できないのは、2つの原因があったからなのです。
原因①:電話の恐怖にとらわれていた
原因②:やることや作業の手順が曖昧だった
①に関しては、これまでお話しした通り、吃音者故の悩みです。
これはどう頑張っても抗えない感情です。
しかし、②に関しては、コントール可能と言うか、「手順化」のスキルさえあればいくらでも改善できることでした。
この事実に気づいてから、私は仕事を徹底的に明確化したのです。
具体的には、
・何時にどの仕事をするのか?
・どこで作業を進めるのか?
・イレギュラーが発生した時にどう対処するか?
こういった事を仕事を始める前に考えるようにしたのです。
私が実際に行なっている「明確化」の作業は次章で説明しますが、この習慣を持つようになって格段に仕事に集中できるようになったのは間違いありません。
そして、目の前の仕事に集中できると、以外と「電話への恐怖」も忘れていることが多かった。
もちろん電話が鳴ると、一気に吃音者の現実に引き戻されますが、今の私には「明確化」と言うスーパースキルがあります。
「電話すらまともに出れない俺なんてダメだな」
そう落ち込んだとしても、手順化したリストさえあれば、また集中状態は作れるし、ある程度集中できれば、電話のことなど忘れている。
まさに「明確化」は私を救ってくれた概念なのです。
効果を感じている3つの仕事術
最後に、私が実際に行なっている「明確化」の作業の流れをシェアします。
まじで効果を感じている作業なので、「何か仕事に集中できない」「作業が捗らない」と感じている人は、参考にしてみてください。
1.思考の可視化
出勤したら最初にやるのがこの作業です。
1.やる必要があること
2.やっておきたいこと
3.不安なこと
この3つを思いつく限り書き出していきます。
こんな感じのフォーマットを作って書いてます。
心がざわつく時って、その理由がわからないことが原因だったりします。
それと同じように、自分の思考をクリアにすれば、無駄な不安や焦りはかなり解消される。
この作業だけでも、肩の荷が降りるような効果を感じています。
2.作業の細分化と手順化
1.やる必要があること
2.やっておきたいこと
この2つをさらに明確に手順化します。
例えば、ショップのブログ投稿をやる必要があるとして。
ショップブログを公開するために必要な作業は、
コーディネートを考える
コーディネートに着替える
写真を撮る
文章を作る
必要な部分にリンクを貼る
公開する
このくらいの作業が必要です。
そして、これを手順化します。
手順化の際に考えるのは、
「いつ、どこで、何を、どのように」の4原則です。
ショップオープン前に(いつ)、同僚のAさんに写真撮影を手伝ってもらって、コーディネート写真を複数ショットとる(何をどのように)。
14時〜15時の間(いつ)、ショップのカウンターで(どこで)、ブログのタイトルと本文を(何を)、伝えたい事を箇条書きにして、最後にまとめる(どのように)。
こんな風に作業を細かく分解して、手順化してあげるのです。
オススメは「分刻み」レベルで、細かく設定する事。
「午前中に〇〇を行う」
「今日一日の中で〇〇を終わらせる」
これではやや不十分です。
もちろん何も決めないよりは効果はあるでしょうが、アバウトな時間設定だと目の前のタスクが明確になっていないので、集中状態に入りずらいというデメリットが生まれてしまう。
可能な限り、作業を分解して、「分刻み」で組み立てるようにするのがオススメです。
3.エネルギーマネジメント
最後の項目は明確化とは少し違った角度から。
「エネルギー切れ」を起こさないように気をつけましょう、という話です。
具体的には、昼寝をオススメします。
昼食をとった後は睡魔や、思考が鈍り、頭が働かないこともあると思います。
ですが、これは10分程度の昼寝で解決できます。
どんなに作業を明確化して、手順化していても肝心な体力が切れていると、思ったように集中できないもの。
今まで昼寝をしていなかった人は、この機会に是非採用してみてください。
吃音者であることがポジティブに思えてきた
今回の記事を書いている中で感じたことが、
”吃音者であったことがむしろポジティブに思えてきた”
ということです。
だって吃音者であったらこそ、ここまで工夫をしようと思えたから。
吃音者ではなく、現状に特別な不満もなければ、ただ惰性で毎日を生きていたかもしれない。
私にとってはその人生を歩む方が怖いです。
とは言え、吃音者であるが故の弱点やできない事もあるので(電話対応など)、一筋縄にいかないのも事実です。
気分が落ち込むこともありますが、それでも「明確化」のスキルを使えばいつでも復活できる。
そんな確信があるので、あまりネガティブにならずに生きることができています。
最後に少しまとまりのない文章になってしまいましたが、仕事術の何かの参考になれば嬉しいです。
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