遺伝子からミームへ

「種の進化」が遺伝子を作り、遺伝子の組み合わせによる新しい個体の誕生の繰り返しが「生きる」ということだとすると、人類の歴史もその繰り返しだったと言えると思います。

サルだった祖先が、手を使うことを覚え、道具を使うことができるようになりました。それは、個の能力から一つの大きな一歩を踏み出した瞬間だったと言えます。今までは個体の能力や体力に依存して、他の個体がそれを真似したり伝えることで、能力を高めていきました。それが、あるときから「道具」という形で、そのスキルや経験に基づく知恵を形にすることができるようになったと言えます。

火の使用はまさにその飛躍的進歩の一つだと思います。また、同様に言語や文字といった文化の創造や伝達を可能にするものも大きな道具の一つであり、今までは遺伝子情報を子孫に伝えることでしか伝えれなかった知恵を、そういった道具を媒介して後世に伝えることができるようになりました。「ミーム」の世界です。

種としての人類がよりよい人類に進化するために、最初は遺伝子情報を使って個体の進化という形で種を進化させていた世界から、文字情報や道具といったさまざまな文化的知恵を媒介に種を進化させることができるようになったのです。

遺伝子情報を使った進化から、文化的知恵を媒介にした進化に移行することで、人類の種としての進化のスピードは加速しました。歴史から学ぶ、先人から学ぶことで、効率的な進化が可能になったと言えます。

インターネットの誕生によりそのスピードはさらに加速し続けています。世界中の人が簡単につながり、知恵を交換することができるようになったことで、人の数だけ進化の可能性が広がっています。

遺伝子の世界では、個体の持っている脳に知恵が詰まっていたものが、インターネットが世界中でつながることで、人類という種がバーチャルに世界中につながって、あたかも一つの大きな頭脳を持っているのと同じ状況で進化がスタートしたのが現代だと言えると思います。

新しい発想、新しい知恵が瞬時に世界に共有され、さらに他の人間の知恵や工夫が加わることで、深化が行われ、進化が加速し、結果の共有も瞬時に行われます。国同士の戦争でさえも、もはや肉体と肉体がぶつかり合う戦争から、知恵と知恵のぶつかり合い、情報戦が主体となってきています。また、今後、個人レベルで世界中の人々がつながるようになれば「国」という概念すら、インターネットの世界ではなくなっていくこともあるかもしれません。

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