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生まれて初めて親しらずを抜いたら、親しらずに感情移入してファンアートまで描いた話


初投稿です。note については長いことROM専でした。

名乗れる名もありませんが、たんたん麺大好きマンとでも名乗っておきましょう…坦々麺が好きなので。

さて…何を書けば良いのやらといった感じですが、とりあえず近況報告でもつらつらと書いていこうかと思います。敬体では書き慣れておらず、どうも調子が出ないので、突然ですが常体に変わろうと思います。良いですか…!?変わりますよ…!本当に突然に文体が変わるからびっくりしちゃうかもね!?それ〜!






ここ最近の近況といえば、生まれて初めて親しらずを抜いたことだ。


今までの人生で親しらずという言葉が語られる際には、枕詞の如く「死ぬほど痛かったよ」と添えられるもんだから、正直かなりビビっていた。

だから検診の時、歯医の口から「親しらず」という言葉が出た時には、「いつしか自分の番が来るとはわかってはいたが、ついにこの時が来てしまったか……」と自らのゆく末を覚悟した。「そうですね……虫歯になるリスクを減らせるというのであれば、抜いてください。」と、柄でもなく強がり、格好つきようもないのに格好つけたが正直なところは、余命宣告かっていうくらい落ち込んだ。
しかし、実際に抜歯してみて、この認識が完全に誤っていたことを知ることとなったのだ。

もはやこの時代、親しらずは痛いものではないのだ。親しらずとは、非常に切なく哀しい、不条理とドラマを孕む儚い存在だったのだ。


さて、まずはこれを読んでいる者の中にも一定数いるかも判らないが「親しらず抜歯未経験者」の方々が、最も気になっているであろうことについて真偽をはっきりさせておこう。

親しらずを抜く際に、痛かったのか否か。結論から言うと、ほぼ「無痛」だった。

強いて言うならば、ほんの少しだけ麻酔注射の針が刺さる時にちくりとしたのと、抜いてから2時間で麻酔が切れて、そこから翌日にかけては抜いた歯茎が触れると若干痛むくらいで、肝心な「本番」こそは無痛であり、「めっちゃぐりぐりやられてんな〜」というくらいだった。とはいえ、これがあくまで「一例」であることには、念のため、注意していただきたい。歯医者がある程度上手だったこと、麻酔をしっかりかけてもらえたこと、ある程度若いうちに抜いたことで傷口の塞がりが早かったこと、上顎の親しらずであったこと、この4つの条件が揃っていたからこそ、その日の晩には青椒肉絲に食べラーをたっぷりかけて、むしゃむしゃ食べることができたのだと思っている。(補足しておくと、下顎の親しらずの方が痛みが長く続き大変らしいと聞いた。とても怖い。)


ではもう少し細かく回想してみよう……

「どうぞお座りになられてください。」と言われ、治療用椅子に座るとまず、歯医者の方と歯科衛生士の方から「激しい運動等は控えること」や「翌日にもう一度、消毒と経過観察をしにここへ来ること」、「毎食後で1日3回×3日分で計9錠の抗生剤と、痛みどめが1回分処方されること」などの、抜歯後の注意点やちょっとしたTo Do等の内容が説明された。

ここで私はやらかした。

「痛みどめには強めのものと優しめのものがあるけどどっちがいいかな?」

「そうですね…違いはあまりよくわからないんですけど、どうせなら強い方が良いですかね?」

「強いのはロキソニンってやつなんだけど。」

「ああ、ロキソニンなら、お腹が弱いのでよく吐き気どめとして飲みますね。」

その瞬間、気さくに話していた歯医者の表情が突然に曇った。

「え…?ロキソニンは胃腸が荒れている時なんかは逆効果だって聞くけど…」

「あ、えーと、何かハズせない本番の直前とかに飲むんですよ。」

「???」

おわかりいただけただろうか……

勿論、一言一句台詞を覚えている訳ではないため、医者の台詞の内容についての正当性や正確性についてはある程度勘弁いただき、会話の流れだけでも伝わっていただければ嬉しい。

私は何故か、医者が言う痛みどめの「ロキソニン」を胃薬の「ガスター10」だと思い込んで、第一三共繋がりの微妙に成立してないアンジャッシュのコントみたいな会話をしてしまった。(ちなみに気づいたのは、もうとっくに歯も引っこ抜かれて待合室に座っている時だった。)

……とまあそんなこんなありつつ、気づけば治療用イスの背もたれがゆっくりと倒れ始め、いよいよ親知らずも抜かれる時が近づいてきていた。段々と緊張してくる。

背もたれが完全に倒れきると目の前には、環状の医療用ライトと、天井に取り付けられたTVが現れ、TVにはアニメの「ポケットモンスター」が映っていた。

改めて「ポケモンって作画のめちゃくちゃ綺麗だよな〜」というぼんやりとした感想を持ちつつも、ただただぼーっとしていると、歯医者が横ででっかい注射器を取り出した。一般的に予防接種などで用いるようなものではなく、金属部分が多いやつで、一瞬、いつしか何かの本で見た19世紀の医療器具(偏見強め)のようにも見えた。

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後で調べて解ったのだが、あれは「麻酔用注射筒」というやつだったらしい。「筒」だったのだ。そりゃでかいわけだ。

それからその注射筒で歯茎をちくりと刺され、麻酔薬が注入されていった。注入する際、歯医者が「ちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜」と突然言い出したもんだから何と反応すれば良いのかわからなくなってしまい、さらには口が注射筒で塞がっているもんだから、反射的に「愛想笑いになり損なった何か」──「あ…あ…」とまるでカオナシのような呻き声──が出てしまい、歯医者に「あれ、痛い?大丈夫?」と余計な心配をさせてしまう始末だった。

今思うと、あれは決してウケを狙っているのだとかそういった反応ありきのものではなくて、あくまで患者をリラックスさせるか注意を他に向けさせるための、ある種のパフォーマンスだったのだろうと思う。

「それじゃあ今から抜いていくけど、麻酔、どんな感じ?」

ここは、「しっかり効いています。」で良かったはずだった。しかし次に私が返した言葉は、

「なんか…すごく面白い感じになってます…!」

だった。何故かその時の私は、その感覚に説明を求められていると思ってしまったのだ。説明にもなっていないけど。

歯医者はそんな謎すぎる返答を華麗にスルーしつつ、おもむろにペンチ型の拷問具みたいなやつを取り出したので、ちょっとシュールで良かった。

それからその器具で、3分にも満たないくらいの間奥歯をぐりぐりされ続けた。麻酔がしっかりと効いていたため、奥歯にめちゃくちゃ圧力がかかってるな、としか感じず、視界の中に抜かれた自分の親知らずが現れるまではとてもあっという間だった。

早い…!もう抜けたのか!と驚いていると歯医者は、

「歯の根っこが複雑に入り込んでてちょっと手こずっちゃった。普段だったら3秒くらいで抜けるんだけどね。」

と言っていて、何だか心強かった。

それから、脱脂綿を噛みつつ、ロキソニン1錠と抗生剤3日分を受け取り帰宅した。先ほども書いたように、その日のうちからご飯は問題なく食べることができた。

ただ、この時、私は思ったのだ。親しらずって、切なくね?…と。

親しらずには罪はない。責任があるのは、抜歯する必要性が出てくる本数の歯を生やしてしまうというバグをいつまで経っても修正しない人類デロッパなのだと思う。なのに、生えた位置どりが悪かったというだけのために虐げられ、仰々しい感じの器具でぐりぐりと抜かれ、時には粉砕されることさえもある。そして彼らは、一生涯を本体と共に全うすることなく志半ばで捨てられてしまうのだ…何と切ないことだろうか。

そんなことを思っていると、何だか親しらずが愛おしく思えてきてしまい、「親しらず」のファンアートまで描いてしまった。

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かわいいね。

これをTwitter(鍵垢)にあげたところ、何故かこれを「レースのついたパンティ」だと思い込む友人が続出し、その結果、私は「口の中にパンティが沢山生えていて、世のパンティ生産市場に貢献している人」になってしまった。

ただ、それも悪くはないかなと思う。


ちなみに抜いた親しらずは、小さいポリ袋に入れられて、自宅の棚の引き出しの中で大切に保管されている。

R.I.P. 私の親しらず。


おわり




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