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引退を発表した、アビスパU-18が生んだスピードスター・田中佑昌

アビスパ福岡、ジェフユナイテッド市原・千葉、ヴァンフォーレ甲府、カターレ富山でプレーした田中佑昌が引退し、ヴァンフォーレ甲府のアカデミーコーチに就任することが発表された。

そこでアビスパ福岡U-18で育ったスピードスターへの感謝を、特に記憶に残っているプレー2つを挙げて記す。

田中佑昌の思い出①

2009年8月9日。アビスパ福岡はホームにセレッソ大阪を迎えた。
この年のセレッソ大阪は後の日本代表である香川真司と乾貴士を擁し、最終的に2位でJ1昇格。2人はこの時点でサッカーファンによく知られた存在となっていた。

それもあってこの日の観客動員数は14,031人を記録。
いつものようにレベルファイブスタジアムのバックスタンドで観戦していた僕は、しかしいつもと違う雰囲気を感じていた。

普段であればアビスパサポーターが多いエリアにも関わらず、試合前のウォーミングアップでアビスパの選手がピッチに現れても無関心なように見える人。
反対側でウォーミングアップをするセレッソの選手達へ視線を送っている人。

明らかにセレッソを、中でも前述した2人を観に来ている人が多かったのだ。
それらの人々に気付いた僕は、心の中にフツフツと沸き立つ闘志を感じていた。
アビスパに、普段以上に絶対に勝ってほしいと願っていた。

試合が始まると普段以上に大声でチャントを歌い、手拍子を送り続けた。
すると27分に久藤清一のゴールで先制し、1点をリードしたまま前半終了。
そして、後半開始直後の46分だった。

ピンチを凌いだあとにハーフウェーライン付近で田中佑昌にパスが繋がると、ここから1人舞台。

すぐにスピードに乗り中央に切り込むと、飛び込んできたディフェンダーより一瞬早くボールに触れて抜き去る。
最後は飛び出してきたGKの股を抜き、完全に個の力でネットを揺らしたのだった。

この瞬間叫んだ言葉を、今でも覚えている。
「どうや!アビスパにはユースケがおるんや!」
なぜ関西弁なのかは自分でも理解不能だが、香川真司でも乾貴士でもない、田中佑昌というアビスパ福岡が誇るスピードスターの存在を、もっともっと知ってほしかったのだ。

最終的に2-2に追い付かれたものの、ユースケのプレーは改めてアビスパ福岡を誇りだと思わせてくれたのだった。

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田中佑昌の思い出②

翌・2010年9月12日のジェフユナイテッド市原・千葉戦。当時は3位までが昇格できるというレギュレーションのなか、この試合が始まる前の時点でジェフは3位、アビスパは4位。

アビスパが勝利すればジェフを上回って3位に浮上というまさに直接対決を、レベルファイブスタジアムで迎えたのだった。

しかし、先制したのはジェフ。
さらに後半から降り出した雨足は時間の経過と共に強くなっていた。

そんな重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてくれた選手こそ、ユースケ。
81分、CKを1度クリアされたボールにいち早く反応すると、右足を振り抜く。
ジェフの選手に2度当たったボールは、ネットを揺らした。
そしてアビスパサポーターに今でも語り継がれる、城後寿の雷シュートへと繋がるのだった。

同点ゴールを決めた際のユースケの咆哮を見て理解した。
「気持ちの熱さとプレーの熱さ」
これこそが、この選手を特に熱く応援したくなる理由なのだ。

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アビサポが熱い選手を愛する1つの理由と、田中佑昌のその後

昨季20年ぶりに残留を果たしたことからも分かるように、アビスパ福岡というチームは決して強くない。
サポーターは多くの年で悔しさを味わい、それでも声援を送り続けてきた。

その理由の1つが、2004年にトップチームへ昇格した田中佑昌、2005年に加入し現在でも熱烈に愛されるバンディエラ・城後寿のような選手の存在だったのではないだろうか。

上手くいかないシーズン、上手くいかない試合が多くても常に全力で、そして時々とんでもないゴールを決めてくれる彼らのプレーに、夢を見ることが出来たのだ。


2012年にジェフユナイテッド市原・千葉へと移籍をしたことは大きなショックだったが、「田中佑昌」は僕のスターの1人であり続けた。

その後ヴァンフォーレ甲府でプレーし、2018シーズン終了後には1度契約満了になったものの、再契約。
2020シーズンから所属したカターレ富山でも試合出場を重ね、最終的に35歳まで現役を続けられる非常に息の長い選手となった。

田中佑昌は決してずば抜けて上手い選手ではない。でも、ずば抜けてベストを尽くしそれを表に出せる選手だった。

「俺の 田中佑昌 ゴール突き刺して 相手黙らせろ」というチャントを全力で体現しようとする姿勢が大好きだった。

アビスパ福岡Uー18が輩出したスピードスター・田中佑昌。
右SHやFWとして博多の森のピッチを疾走する姿は今もなお、そしてこれからも変わることなくサポーターの記憶に残り続ける。

おわりに

アカデミーコーチとしてスタートを切る第2の人生を応援すると共に、現役の頃のように表立って全力を出せる選手の育成に期待したい。

それは現在の日本サッカー界から徐々に減少しつつあり、近年の停滞感を吹き飛ばすために必要な要素なのだから。

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