【短歌一首】 自らを煙に巻きつつ彗星となりて花火は地球かすめる
花火の大玉が空高く上がるのを見ていると、光る長い尾を引いて宇宙空間を飛んでいく「彗星」を思い出す。
打ち上げられた花火が上空で爆発して、花火がその中心から大きな同心円の球体に変わっていく様は、まるで巨大な彗星が地球に大接近してくるような錯覚がある。
花火はその日の天候、特に風の速度や向きによって、前の花火の煙が残ったり、花火自身が出す煙に一部または全部が隠れてしまい、見る角度によっては全く花火の輝きが見えなくなってしまうことがある。この日も結構風が出てきたため、風の向きが変わると一部が見えなくなることがあった。
以前は花火が煙で見えなくなってしまうことをとても残念に思ったが、最近は見方を変えて、この煙も花火の一部であり、それ自体も受け入れつつ楽しめるのではないかと感じるようになった。
子供の頃、怪獣映画や特撮映画などでよく見たが、異次元からやってきた生命体が地球空間に出現するときは、閃光や煙とともに大空が引き裂かれていた。煙に包まれた花火はそんな光景にどこか似ている。
大好きだったアニメの「宇宙戦艦ヤマト」にも、ズウォーダー大帝が率いる白色彗星帝国という彗星内部を拠点とする国「ガトランティス」というのがあった。もしこの花火が地球侵略を狙う白色彗星帝国なら、などと想像してみる。
彗星は太陽の周りを楕円や放物線などの軌道で運行する星で、明るく輝くガス雲の尾を引き、昔はほうき星としてその出現は「凶兆」とされ恐れられていた。
しかし、花火は違う。見るものみんなを幸せな気持ちにする「吉兆」の彗星。
今年は花火大会を見られて本当に良かった。
猫間英介
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