【短歌一首】 幾重もの深緑の圧耐へ池に弁財天は赤く萌えたり
JR中央線吉祥寺駅を降りてすぐ近くに井の頭公園がある。この公園の中心をなす井の頭池の一画は「弁天池」と名付けられている。それはその場所に弁財天が祀られた社があるから。
木々の深い緑の中に見える真っ赤な建物が井の頭弁財天。 創建は江戸時代が始まるよりもはるか前と伝えられている。弁財天は一般的に弁天様とも呼ばれている。ここの弁天様は、水神の神で井の頭池を源流として東京都内を横断して隅田川に流れ込む神田上の水源を守護する。 さらに弁財天は、音楽、芸能の守護神でもあり江戸時代には江戸町人から信仰されたとのこと。
赤色の弁財天の社は四方を木々に囲まれている。梅雨時から夏にかけては、4月の半ばごろから伸びてきた新緑が葉を厚くし、よりいっそう濃い色となる。深緑の木々の葉に囲まれて、弁財天の鮮烈な赤の大部分が葉叢によって隠されてしまう。
木々の緑、池の緑、苔の緑、水草の緑に四方八方囲まれて、弁財天の赤は緑色に押され気味。でも、その圧があるからこそ、緑の隙間から滲み出てくる赤がより鮮烈に感じる。
音もなく細かい霧雨が降っている。深いしじまの中、社の赤色が葉叢とともに池の緑に映り込んでいるのが本当に美しい。
猫間英介
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