見出し画像

【短歌一首】 天を衝き再開発の塔伸びてなほ蒸し暑き鉄骨の街

天を衝き
再開発の
塔伸びて
なほ蒸し暑き 
鉄骨の街

短歌はレジスタンス。

街の再開発が延々と続く。もう5年ほど前から。
ここまで根こそぎ街全体を変えなくてもいいのではないか、と思うくらい徹底的に取り壊し、更地にして、そこに巨大な超高層複合ビルをどんどん建てる。

巨大クレーン

この街の出身で、今は少しは離れた別の場所に住んでいる友人と久しぶりに会った時、街のあまりの変貌ぶりに驚いていた。昔から長く住んでいる人も多く、庶民的な住みやすい街で、ローカルの安くていい店もいっぱいあったのに、まるで東京の都心のど真ん中の再開発のように、全国区のお店が並び、タワーマンションとオフィスビルが立ち並んで、なんかつまらない街になっちまったなあ、これじゃ自分の街に愛着がわなかいなあ、と嘆いていた。(酒呑みの友人は何よりも、ちょっと小汚くて安くて美味い店のほとんどが消えてしまったことが大ショック。)

工事現場内の重機

そもそも平屋か2、3階建ての木造住宅がほとんどだった街が、再開発により駅前を中心として鉄筋・鉄骨コンクリートの高層ビルが立ち並ぶようになった。工事現場には毎日、太くて長い鉄骨が搬入されてくる。そして巨大クレーンがそれを持ち上げている。今日も再開発は進行中。

巨大クレーンの林立

駅前だけではなく、街中でも再開発が進む。住宅街の中に天を衝くような巨大なクレーンが林立している姿を見ていると、そこだけは街の縮尺とあまりに異なっているため別の空間のように見えてくる。まるで特撮映画のセットのよう。

青天を衝く巨大クレーン
夕暮れの巨大クレーン

すでに完成した超高層ビルの周りはビル風がものすごい。カートを引いているお年寄りが数メートルよろよろと流されている姿を目にしたこともある。普通の雨も超高層ビルの周りでは暴風雨と化す。傘もひしゃげる。

再開発の工事と新しくできる巨大建造物群で、騒音、振動、重機から出る熱、ビル風でこの街の外観だけではなく、気候も変わってしまいそうだ。今年の夏はまた長く暑くなるとのこと。木が減り、鉄骨と鉄筋が増えていくこの街も、一層蒸し暑くなるだろう。

猫間英介



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?