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【短歌一首】 家看取りクスノキ独り遺りしもひしゃげて庭の土に帰らん
家看取り
クスノキ独り
遺りしも
ひしゃげて庭の
土に帰らん
短歌は喪失からのレジリエンス。
豪邸の解体工事が延々と続いている。
数日前にそばを通った時に塀に掲示されている解体工事計画書を見たら、開始時期は自分の漠然とした記憶どおり、今年の1月であった。
いろいろな事情があるのだろうが、まだわりと新しい綺麗な豪邸が解体され始めた時にはかなり唐突感があった。住宅地にはやや違和感のあった鉄骨・鉄筋コンクリートの要塞のような豪邸の解体工事が進む中、庭にあった高いクスノキだけは、住人がみんな去り建物が取り壊されていく中で、最後の最後まで残っていた。
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数日前、そのクスノキがいなくなっていることに気づいた。どこかに移植されたのか、それとも廃棄されてしまったのだろうか。
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外から工事現場の中をよく観察していると、木の枝と根っこらしき物が固められたような大きな土色の塊が見えた。おそらくあの大きなクスノキの幹が切られて、残った根元の方の幹と枝と掘り返された根っこを、ショベルカーなどの重機でひとまとめに固めたのではないだろうか。
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クスノキの幹、根っこ、枝などが瓦礫や土と一緒に固められて一つに圧縮されまとめられている。土に帰ってゆくのか。
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根っこと枝と幹と土と瓦礫で固められたクスノキの残骸は、どこか新たな生き物となって蠢いているようにも見える。長く生きてきた樹木には精霊が宿るというが、一旦粉々になったクスノキが再び別の姿をとって新たな生命体として躍動する、そんなことを想像してみる。
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取り壊された鉄骨・鉄筋コンクリートの豪邸には地下室があったのか、それとも新しく建てられる予定のビルなどの基礎工事なのか、今は毎日のようにショベルカーが地面を深く掘り起こしている。
あのクスノキは周りの建物の入れ替わりに関係なく、ずっと昔からあの場所で生きていた。気高く美しかったクスノキが街角から消えてしまったのはとても寂しい。
猫間 英介
つい1週間ほど前に、このクスノキについて歌を詠んでいたのに・・・・・。
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