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【短歌一首】 百歳を越えし欅は家族みな送りてもなほ伸び盛る青

百歳を
越えし欅は
家族みな
送てもなほ
伸び盛る青

短歌は、ノスタルジー&レジリエンス。

新緑の季節に、日毎に青葉を伸ばす欅(ケヤキ)の巨木を見ていると、毎年必ず思い出すことがある。

生まれてから青年期まで住んでいた家の庭に大きなケヤキが1本あって、その木は樹齢が100年以上だと祖母から聞かされていた。秋から冬にすっかり葉を落としたケヤキが、初夏になると一気に青葉を伸ばしてゆくその勢いと速さを、毎年驚きと感動を持って眺めていた。

ケヤキの新緑の勢い

大家族であったので、幼少期から生家で家族や親族が亡くなって行き、そこで葬儀が行われるのを目の当たりにしてきた。祖父、祖母、父、母方の祖父、祖母、叔父。

庭のケヤキはそれをずっと傍らで眺めていたのだろう。そして、毎年五月になると驚きのスピードと規模で青葉の葉叢を作り上げてゆく。 人間よりもずっと長生きし、もしかしたら樹齢100年超えなんてのは、まだまだ青年期どころか少年期かもれない。

葉叢からの初夏の日差しが柔らかい

小学校の頃に絵日記の宿題があり、その中で庭のケヤキの木の青葉の成長の速さの驚きを書いたことがある。確か、昨日見た青葉が今日には信じられないくらいさらに大きく伸び盛っていた、というようなことを書いた。 色鉛筆で描いた絵とともに。

力強く太い幹

数年前に亡くなった母は、亡くなる直前にもよく庭のケヤキの木の新緑のことを私や兄とも話していた。 その兄も母の逝去後にあとを追うように病気で亡くなってしまった。

新緑のケヤキを見ていると、毎年、家族みんなが集っていた生家の庭を思い出す。
あの庭のケヤキは造園業者に引き取られていったと聞いている。だから、今でもどこかで生きていて、今頃また青葉を高く大きく広げているはず。

猫間 英介



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