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「人を活かす、他人を活かす、組織を活かす。」 ~ボールを「パス」するの意味~

 こんにちは。
 「人を活かす、他人を活かす、組織を活かす。」
統合カウンセラーの猫間英介です。

 高校時代にラグビー部に所属していました。その頃から年末年始は高校ラグビーや大学ラグビーをよく観戦しています。企業で管理職として部門マネジメントをするとき、プロジェクトにメンバーとして参加するときなど、さまざまな仕事場面で、私は「人を活かす、他人を活かす、組織を活かす」ことについて、自分がラグビーから学んだことを活かしてきました。

 その中で、今日は、人にボールを「パス」することの意味をあらためて考えてみました。

 今でこそ日本のラグビーが世界レベルで認知され、ラグビー理論、指導法、トレーニング法なども非常に洗練されたものになってきています。
しかし、私が高校生の頃は根拠のない精神論、根性論が幅を利かせており、私もその中にどっぷりつかっており、戦略・戦術を組み立てる、変化する状況の中で臨機応変に考えてプレーする、なんてこととは程遠く、ただ疲労と惰性の中で無理やり動いていました。

 「パス」というものについても、ただひたすら基本の形を繰り返すばかりで、例えば、ボールを落とすといけなから、常にラグビーボールは両手で持って、相手の胸のあたりにパスせよ、と仕込まれました。試合中にそれを怠ると結果の良し悪しにかかわらず、先輩から叱責を受けていました。 当然、「パス」を言語で明確に定義したり、その意味や目的を深く考えたことなど一度もありませんでした。

 しかし、2000年頃に今は亡きミスターラグビーの平尾誠二さんが、確か、新聞の記事か雑誌の中で、パスの意味とは、「あるゲームの中の状況において、自分よりも有利なポジションにいる味方プレーヤーにボールを渡すこと」であるといったようなことを述べていました。これは私にとっては、本当に目の覚める言葉でした。
 今日、あらためて、この平尾さんの考えを確認したくなり、本棚から、「平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力」(2017年マガジンハウス編)という本を引っ張り出してきてページをめくっていたら、次のように書かれている部分がありました。
(なお、この本は平尾さんが2016年10月に逝去された後に、それまでに平尾さんが語られた言葉を「91 の矜持」としてまとめ出版されたものです。)

「日本のスポーツ界では、なぜか個人の動作精度のことをスキルと表現している。しかし実際には、これに状況判断が加わらないと、本当の意味での能力、スキルにはならない。
たとえば、ボールを蹴る動作、パスを投げる動作に、状況判断という時間軸の考え方が入って、初めてスキルとなる。」

平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力(2017年マガジンハウス編)P147

 そう、ラグビーの試合中のプレーも、仕事での業務も、常に変化する状況の中で自分でどのように自分のスキルを活かしていくかを自分で判断していくことが重要になります。パスの基本動作を繰り返しハンドリングのスキルを身に着けることはもちろん大事ですが、それを刻一刻と変化している状況の中でどう活かすかが重要です。そしてそのためには、パスの本質の意味を理解する必要があります。

 ある変化しつづける状況の中で、「自分をよりも有利なポジションにいる味方にボールを渡すことができる」確率が高くなるのであれば、片手であろうが、耳の後ろからから投げようが、スクリューをかけたパスであろうが、OKなのです。実際、今のラグビーではもはや当たり前のプレーですが、会社の仕事の中では、まだまだ管理職やリーダーの説明能力や意思疎通力が不足していたたり、ただ漫然と毎日をルーティンをこなすだけのことも多いのではないかと日々感じます。いまだに私も反省しきりです。

 20数年前に会社からの派遣で私がイギリスに住んでいたとき、よく自宅アパート近くの公園でイギリス人の小学生チーム(多分、低学年)がラグビーの練習をしていました。それを私はたまに近くで眺めていたのですが、プレーが一区切りつくたびに、コーチと思われる大人がプレーを止めて、子供たちにいろいろと質問をしていました。
 例えば、その子供がなぜそのよう動iいたのか、パス、キック、などを選択したのか、他のプレーヤーはどう動いていたか、などを訊ねるのです。そして、子供たちもそれに対して、単なる言い訳や不満も含めて、いろいろな考えを述べるのです。 思わず、自分の高校時代とのあまりの違いにショックを受けるとともに、これは人の成長、チームの成長にとって素晴らしいことだな、と感心してしまいました。
 当時、後から上述した平尾さんのコメントを見たときに、コーチが子供たちと質疑応答を繰り返す意味がよく理解できました。

 仕事やキャリアでの悩みで、アサインされた仕事の意味や目的が上司から知らされていないとか、上司の話を聴いていても良く分からないことが多いとか、自分自身が部門内で活かされている実感がない、という相談がよくあります。これでは個人も組織もなかなか成長することはできません。
 上司やリーダーは説明力や意思疎通力を磨き、一つ一つの仕事が、その置かれている状況の中でどのような意味を持ち、何のために誰とどうように動けばよいのか、ということをよくメンバーと話しあって共有するようにする必要があります。
 またメンバー1人1人も、自分の仕事や職務に必要な個々の知識やスキルを磨きつつ、一方で、現実に起きている仕事の状況をよく観察し、自分の役割や行動を自分自身で考えていくことを習慣化することが大事だと思います。
 それにより、一つ一つの仕事が「自分を活かし、他人を活かし、組織を活かす。」ことにつながっていきます。

猫間英介


【今日の短歌】

  草むらに楕円の球の転がれりその行き先を誰や知るらむ
  
  フィールドに吾の蹴りたる楕円球行方知らねど走るほかなし

  ここからが勝負と言ひて何度散る意外とタフぞただ走る吾

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