「娘がね、カヌレを食べたがるのよ。あんまりにも言うから買うんだけど。あれ、そんなに美味しい?」 平日の焼き鳥屋。仕事帰りの飲みの場で、目の前の上司が言った。 好物のカヌレを悪く言うやつは許せぬ。しかし、相手は上司か。ぐぬぬ。 働き始めて1年半。担保される自由はおおよそ予想通りで、余裕のなさがやっぱり寂しい。夜勤明けの疲労が前面に出た顔で、「こんな顔でもスマホの顔認証って開くんだ」と思ったりする。しかし、その疲労こそが社会人の証のような気がして、ちょっと誇らしくなる。我なが
アニメ「音楽」を鑑賞。 主人公の研二、連れの太田、朝倉。不良学生3人組が思いつきで始めたバンド「古武術」。淡々と進む日常に突如おとずれた音楽という衝撃。技術も知識もない3人が、初期衝動のままに音楽にのめり込んでいく。 2019年製作。大橋裕之の漫画「音楽と漫画」「音楽 完全版」を原作に岩井澤健治が監督を務めたアニメーション作品。制作期間7年半。71分間全てが手書きで作画されており、その枚数およそ4万枚超という狂気の作品。 バンド「ゆらゆら帝国」ボーカルの坂本慎太郎が主人公
水曜日のカンパネラの新EP「ネオン」が5月25日にリリースされた。 主演・歌唱担当のコムアイ、音楽担当のケンモチヒデフミ、その他担当のDir.Fの3人で構成される音楽ユニットとして活動していた「水曜日のカンパネラ」だが、2021年にコムアイが脱退を発表、新メンバーとして詩羽(うたは)が加入し、主演・歌唱を担当するという大きな転換がなされた。カンパネラのキービジュアル、いわば看板娘とも言えるボーカルの交代に、ファンの中では大きな波紋となった。 水曜日のカンパネラは、2015
遡ること数ヶ月。大学の卒業祝いです。と後輩から受け取ったのはBRAUNの置き時計「BC02」だった。 商業製品のデザインを評価し貯蔵する機関であるMoMAにて価値を認められ、永久展示所持品にも選定されているベストセラー、AB1を再現したモデルである。 「マイ・インターンのベンと同じやつです。どうぞ。」と差し出されたBC02。ベンのはブラック、プレゼントされたのはグレー。大学時代に後輩と共に活動していたチームのロゴのカラーリングがグレーだったため、それに合わせたそうだ。社会
2022年5月24日、DJ YUTOの新MIX「POP YOURS HIPHOP SET」がyoutubeにてリリースされた。 youtube上でアップされる彼のMIXは、ATTOUTEKI HIPHOP SET、NOUDOUTEKI HIPHOP SETに次いで3作目となる。日本語の楽曲をメインとして組まれている本シリーズの最大の特徴は、曲間のつなぎの巧みさにある。 歌詞繋ぎ、サンプリング繋ぎ、プロデューサー繋ぎと、楽曲にまつわるありとあらゆる伏線を張り巡らせて楽曲を繋
※この文章にはネタバレが存在します。 「殺人の追憶」以来2作目のポンジュノ作品の鑑賞。今更鑑賞し、話題通りの出来だったのでレビューする。 格差 少しコミカルな描写も盛り込まれてはいるものの、暗く重たい描写は変わらず素晴らしいと思った。特に印象的だったのは、格差の下側に位置する、いわゆる「負け組」の描写である。 ハッタリだけかと思いきや、きちんと英語を教えられる長男ギウや、ゴミ屋敷に住みながらも豪邸の家事をあっさりやってのける母チュンスクなど、意外にも富裕層の暮らしに適
The Weekndのアルバム「DAWN FM」から、Out of timeのMVが4/5にリリースされた。 亜蘭知子「Midnight Pretenders」のサンプリングには、日本のリスナーが大きく湧いた。2022年の音楽シーン一発目の大ニュースといってもよかったと思う。 サンプリングだけでなく、楽曲そのものもどこかjpopのような、メロウな展開ですすむバラード。jpopリスナーにも聴きやすい素晴らしい作品だった。しかも、ストーリーテリング要素の強い本アルバムにおいて
「何に役に立つかわからないけれど、何かある気がする。」そんな直感のもと物事を管理収集することを「ブリコラージュ(非予定調和的収集)」という。フランスの社会人類学者レヴィ=ストロースが提唱した概念である。 山口周『独学の技法』の中で初めて出会った概念だったが、何かにつけて収集、分析、整頓を繰り返してきた自分そのものを肯定された感覚になったのを覚えている。 働き始めて2ヶ月が経った。多忙につきお昼が食べられなかったり、背中に嫌な汗をかいたり。方々にたくさん頭を下げて、私の社会
粋、ということに関して、陶芸家の安藤雅信さんはこう述べている。粋とは「陰性のお洒落」である。と。2019年BRUTUS「ことばの答え」より。 気づいた人にはちょっとした気持ちよさを。気づかないならないで居心地の悪さもない。気づくか気づかないかは関係なく、相手のことを思い陰ながら整えておく。する側にも、された側にもインテリジェンスが求められる営みだ。だがそこに憧れる。 「してあげた俺すごいでしょ」という見返りを全く求めていない点で、直接的な気づかいよりも素晴らしい気がしてし
「おー、夏だねえ。」 その昔、それは夏期講習の期間だっただろうか。無機質な教室が静けさに包まれた中、塾の講師が教壇から唐突に呟いたその言葉を、なぜか今も覚えている。 浴衣や、タンクトップなど、極端に夏仕様な生徒がいたわけではない。その先生が言うには「夏は服装の色が全体的に鮮やかになるんだよねえ。冬がくると、みんな落ち着いた色になるよ。」とのこと。妙になるほどと思った覚えがある。 今年は目の覚めるような明るいグリーンがじわじわと流行っているようだ。多分、ボッテガ・ヴェネタ
1995年生まれ。宮城県出身。 細長い人。 すき 早風呂、ナスの揚げ浸し、強いwi-fi 麻婆豆腐、23時にヘッドホンで聞くhiphop 水拭き、ジャケ買い、カフェラテ カーステで聞くUKポップ、『Inception』 ストリートスナップ、『Good will hunting』 きらい 集合時間、錠剤、「趣味は何?」の質問、花粉 instagram @pole_blog / @pole_snap applemusic @polemusic