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Weekend log vol.4/マイ・インターンとBRAUNの置き時計。

遡ること数ヶ月。大学の卒業祝いです。と後輩から受け取ったのはBRAUNの置き時計「BC02」だった。

BRAUN-BC02

商業製品のデザインを評価し貯蔵する機関であるMoMAにて価値を認められ、永久展示所持品にも選定されているベストセラー、AB1を再現したモデルである。

「マイ・インターンのベンと同じやつです。どうぞ。」と差し出されたBC02。ベンのはブラック、プレゼントされたのはグレー。大学時代に後輩と共に活動していたチームのロゴのカラーリングがグレーだったため、それに合わせたそうだ。社会人になるタイミングでのプレゼントとして完璧な映画のチョイスといい、よくできた後輩である。しかし、恥ずかしながら内容の記憶がほぼない...。ということで、久しぶりにきちんと見た。

ナンシー・マイヤーズ-マイ・インターン

2015年公開。主演ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ。ファッションECサイト『About The Fit』を起業し、短期間で急成長させた女社長ジュールズ。凄腕ゆえのワンマン経営。超多忙ゆえに家庭環境などプライベートで若干の行き違いを抱えており、高齢者が嫌い。そんな彼女のもとにやってきたのは、シニアインターン枠で採用された。70歳のベン。ベンのことを初めは相手にもしていなかったジュールズだったが、経験豊富で懐の広いジェントルマンのベンに、徐々に信頼感を抱いていく。

本作で最もときめいたのは、ベンの衣装部屋。袖丈のぴったりあったジャケットは等間隔に並べられ、ワイシャツはシワ一つなく管理されている。ネクタイもそれぞれ色とりどり上品である。それもそのはず、衣装提供をしたのはブルックスブラザーズだそうだ。しかし冒頭、彼はファッションに疎い人間として腫れ物扱いされてしまう。なんでやねん一番かっこいいだろ...。と歯がゆい思いをした。

もやもやイライラする私をよそに(当たり前)、ベンの大人な対応は全く崩れない。そこでやってくるのが、デスクにベンの仕事道具を一つづつ並べていくシーン。彼の労働を数十年支えてきた美しいエッセンシャルズの中に、ありました、BRAUN Analog Alarm Clock 「BC02」。

Ben's BC02

そして、「クラシックは不滅だ。」と、さらり。「いいぞ!」と心でガッツポーズ。本作で最も気持ちいいシーンだった。

今では当たり前のインフラとなっているファッションECサイトが、2015年ではベンチャー。時代のスピード感恐るべし。目まぐるしく変わる今この時代も相まって、マスターピースとして残り続けるクラシックの偉大さがより引き立っていた。時を改めて映画を見る面白さがあった。

この映画を見て、ベンのように歳をとりたい、と多くの人が思っただろうが、今の自分はまるでジュールズのようだ、と思った人はどれだけいるのだろうか。思っていたものと違うものができるくらいなら、自分で背負った方がマシ。そのせいで私生活が滞っても構わない。そんなジュールズの仕事ぶりに心当たりがありすぎて、痛いほどシンパシーを感じてしまった。

学生時代どう考えてもジュールズ側だったはずの私に、ベンと同じインテリジェンス溢れるアイテムを贈った後輩。グレーのBC02が示すのは、ベンとジュールズのような親友の証か、はたまた「ベンのように寛容であれ」のメッセージか。真意はいかに。

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