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Weekend log vol.2/パラサイト 半地下の家族

※この文章にはネタバレが存在します。

パラサイト日本版ポスター。すでに多くの伏線が貼られている。

「殺人の追憶」以来2作目のポンジュノ作品の鑑賞。今更鑑賞し、話題通りの出来だったのでレビューする。

格差

少しコミカルな描写も盛り込まれてはいるものの、暗く重たい描写は変わらず素晴らしいと思った。特に印象的だったのは、格差の下側に位置する、いわゆる「負け組」の描写である。

ハッタリだけかと思いきや、きちんと英語を教えられる長男ギウや、ゴミ屋敷に住みながらも豪邸の家事をあっさりやってのける母チュンスクなど、意外にも富裕層の暮らしに適応する家族。半地下に住む家族という低いステータスに対して、パフォーマンスが良すぎやしないかと疑いながら見ていたのだが、実は韓国ではあり得ない話ではない、という背景を知って驚いた。

超競争社会の韓国では、この家族のように高い能力を持ちながら、試験に通らなかったが故に劣悪な環境での生活を強いられることは少なくないそうなのだ。半地下に住む汚らしい家族が、見た目通りのスペックとは限らないのである。能力としては1,2点の僅差であったとしても、社会的には、日本では考えられないほどの隔たりがあるということだ。少々現実離れした設定に感じてしまったのは間違いではなく、「韓国人でないとこの映画を完璧に理解することは難しい」というポンジュノ監督の言葉の通りなのだろう。

タイトル

これは私の完全な考察だが、本タイトルは伏線としても機能していると思う。ほとんどの人は、馴染みのない「半地下」というワードに違和感を覚えながら映画を見始めることになる。そして、作中で初めて、それはキム家族だけではなく、半地下のさらにその下、「地下の家族」の存在をも示唆していたことを知るのである。始まるまえから貼られていた伏線だとすると、おしゃれである。洋画のタイトルの和訳にはセンスのないものが本当に多いが、本作の和訳は秀逸だと思った。

「理解することは難しい」と発言しつつも、世界的に認められたのは言うまでもなくすごいことである。数多くの伏線とを回収するミステリーとしての完成度と、飽きずに最後まで引きつける緊張感がある。細かい背景やメッセージを汲まなくても十分に楽しめる作品だからこそ、これだけの反響を生んだのは間違いない。

総括

本作は、後半から一気にシリアスになる。殺人の追憶と比べてみても、作中での振れ幅が大きく、エンターテイメント性は増しているように感じた。逆に言えば、ポンジュノらしさとも言える、べったりとのしかかってくる陰鬱さは、少し控えめであるように感じた。その点で、個人的には「殺人の追憶」の方が衝撃を受けた。

ただし、それは常に削られるか、緩急をつけて殴られるかの違いであり、作品の刺激が強かったことに違いはない。好みの問題だろう。

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