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君は君の信じるものに賭けるといい『The Big Short』

やあ、僕だよ。飽き性ちゃんだよ。
相変わらず妊婦で暇してる僕だけど、今日は一日中室内工事の立ち合いでどうにもならなかったから、なるべく工事のおじさんたちの邪魔にならない一本を選んでみたんだ。さあ今日も楽しんでくれると嬉しいな。

映画あらすじと感想

『マネーショート華麗なる大逆転(原題:The Big Short)』アダム・マッケイ
ネットフリックスで視聴。二〇〇七年四月二日、サブプライムの貸し手であったNCFが破産したのを皮切りに、ベアー・スターンズ銀行やリーマンブラザーズ、果ては全世界を巻き込んだ金融恐慌。その直前を生きる四人の男たちの物語。
サブプライムローンの焦げ付きでリーマンショックが起きた、というのはニュースで見たことがあってもよく分からん僕です。観終わった後、ついついウォール街ってどこなんだろう?と調べてしまった。市場を動かしているのは生身の人間なんだなと痛感させられ、時に市場は効率的でないことの典型的な事例とも言える。熱い、熱いぜ。
実は二回目の視聴。一回目観た後に『ウォール街のランダムウォーカー』やウォーレンバフェットの自伝なんかも読んだので一回目より理解度があがったかなと思ったがそんなに甘くなかった。ただ、トランプ元大統領のような典型的な剛腕ファンドマネージャーのマークがこの金融制度にどれだけの怒りを抱えていたのか一回目は理解出来ていなかったが、二回目は十億ドルの売りを了承する「Okey.」の重さと切なさが分かった。金融とは違うが『ソーシャル・ネットワーク』が好きな人はこの映画も好きなはず。観たことなくても観てほしい。本当に面白いから、とにかく観て!

また、作中出てくる金融用語解説はこちらの二つが分かりやすい。
観た後でも観る前でも大丈夫です。

金融用語に振り回されない!どこよりも分かりやすい『マネー・ショート 華麗なる大逆転』解説
https://news.yahoo.co.jp/byline/atsumishiho/20160305-00055068 
観る前にこれを知れば『マネー・ショート』がもっと面白くなる!5つの経済用語
https://filmaga.filmarks.com/articles/646/

二〇〇八年から二〇一二年頃の僕

大学生時代の僕は自分の学費を自分で払うべく(奨学金を貰うほどの頭はなかったし、四百万の借金を背負いたくなかった)、常にアルバイトを掛け持ちしていた。当時の彼氏が買ってくれた初代Xperiaを駆使し、過密なスケジュールを管理することでそれは成り立っていた。
日本橋兜町の飲食店と地元の塾の先生、それに麻布のバーテンダー云々かんぬん。
色んな世代の色んな人たちに身近で様々なサービスをする経験は僕の接客の原点と言ってもいい。
まあ、苦労しないに越したことはないのだけれど、無駄な学生時代では決してなかった。若くて無敵な頃に、華やかな思いをさせてもらえたのは楽しい青春だったろうし(自分の子どもには断じて薦めないが)。

兜町の飲食店で目撃したこと

兜町といえば言わずと知れた日本のウォール街である。
僕のお店にも証券会社の人や商社、銀行、なんたら金融機構の人がわんさと来ていた。
年代として金融危機が起こりつつあった、もしくは起こっていた最中だったが、五十代六十代を中心に二千円から三千円のランチを毎日食べている人も多かった。
特に商社の人たちは羽振りがよかった。経費で落ちる会食など、今や大手で表立ってやっているところは少ない(コロナ禍じゃなくてもだ)。
華やかな最後の時代と言わんばかりに飲みに食べ、吐きやアルハラや、だった。そんな彼らが口にしていたのは海外に投資せよということだった。
何を買えばいいのですか?と聞くとごにょごにょとごまかされてしまうことが多かったが、海運や物流だと声高に主張する人も多かった。
これから先は中国が力をつけ、モノや情報が今の数百倍多くなり、行き交う速度も同じだけ速くなる。モノや情報を行き交わせるシステムの構築を目指しているところに投資するといいと僕は聞いた。ちなみにその人はぬるい瓶ビールを四本飲んだ後、ほぼストレートの二階堂水割りを一気飲みさせられていた下っ端の社員だったように思う。

首都圏郊外の塾で目撃したこと

子どもたちはPSPで発売したてのモンハンを遊んでいた。
僕は多人数クラスを受け持っていたので、授業中に持ち込む生徒を厳しく指導していた。
何がそんなに面白いのか(僕はその頃モンハンをやったことがなかった!)、生徒たちに聞いてみると皆口々に友だちと遊べるのが楽しいと言った。
公園で駆け回って大きな声をあげると近所の人に怒られるし、面倒。ゲームで遊ぶ方がゲーム内でやり取りできるし、そっちの方が手軽で面白いという。
僕は通信にケーブルが要らないことに本当に驚いた。携帯電話がこれだけ普及しているにも関わらず、僕の中で携帯ゲーム機はゲームボーイのままだった。

麻布のバーで目撃したこと

麻布で銀色の箔押しがされた名刺を二枚もらった。
一人は冴えない普通のサラリーマン、もう一人はたれ目で恰幅の良い自信満々なクリエイターだった。
クリエイターの方がサラリーマンの方にしきりに話しかけ、楽しませていたのだが、僕がつまみを給仕するとサラリーマンは僕から目をそらす。その後も僕が来るとあからさまに笑みがなくなるので、なるべく行かないようにする。

「ねえねえ、お姉さんさ。何が一番得意なの?」
「申し訳ございません。見習いですので、お客様にお出し出来るようなものは…」
「いいよいいよ、カクテルじゃなくて。ビールなら出来るよね?」
「ええ、ビールでしたら。種類は、いかがいたしますか?」
「うーん、何がいいと思う?」
「…お客様の好みでお選びになるのがよろしいかと思います。」
「お姉さんの選んでくれたものが飲みたいなあ。」
「では、召し上がっているものに合わせて黒ビールはいかがでしょうか?」
「黒かー。僕苦いの苦手なんだよね。」

こういった見習いとの会話を楽しまれるお客様も多いので、僕は辟易しながら(あとマスターに目配せしながら)もぎこちない微笑みを絶やさず、サラリーマンの方を盗み見た。一見普通そうに見える人物だが、何故クリエイターの方が敬語を使い、よいしょし続けるのだろう。
その視線に気づいたのか、クリエイターは僕にサラリーマンがいかにすごい人なのかを自慢した。その自慢話によるとどちらかと言えば偉大なクリエイターなのは、このサラリーマンの方だった。箔押しの名刺をよく見ると、著名な彼の作品が印字されているという。
そうやって自慢されているサラリーマンはうんうんと頷きながらも何も言わず、ただグラスを彼のペースで口に運んでいた。

二〇二一年現在

Xperiaは何代目か分からないけど、モバイル回線で動画を再生しながらゲームをすることは当たり前になっている。
海外に行くことはずいぶん難しくなった。でも海外株式や債券の取引がネット証券会社で身近になった。
有名なクリエイターが独立して作ったゲームはまるで映画のようで、単純な作業の積み上げが感動を生む。この没入感は現代の技術の賜物だ。

株価を予想できる人はいないと何人かの投資の賢人たちは断言する。
僕はその事実に安堵する。
一方で、見逃してきたエッセンスに未来が見えたのではと思えてならない時がある。
何でもかんでも見えてしまうのはつまらないけれど、何にも見えないとその現実が差し迫った時に真に楽しむことができないのではと思うのだ(映画の中の四人みたいに世の中の絶望を覗き込んでしまう可能性は往々にしてあるのだけれど、ね)。

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