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この仕事に出会っていなかったら

2004年 ゴールデンウィークに入る前の日に、
そのころ勤めていた会社から突然「退職勧奨」を受けた。
退職届の雛形を目の前に置かれて、
いますぐここでサインをするように言われたときには、
頭のなかが真っ白になり、動機が激しくなった。
何もいえなかったし、どのようにしてその場を離れたか
覚えていないけれども、サインをすることだけはしなかった。

それから9年が過ぎて、いまだから振り返ることができるようになった。
私は会社からの申し入れに対して、
のむつもりはなかった。
正確にいえばのむことができなかった。
50歳になり、10年働き続けてきたなかで、
役職をもらうこともできた。
これから会社でやりたいこともあると思っていた。
そして、なにより転職しても今以上の待遇を望むことができないと、
考えていた。

ところが相談した弁護士は
「どう戦うか決めましょう。あなたが会社に残るなら残る方法を、
退職するのであれば有利に退職する方法を考えましょう。」
「残りたいと思います。」
「わかりました。でもこれだけは肝に銘じておいてください。
この会社はまた同じことをするでしょう。あなたかもしれないし、
誰かほかの人かもしれない。
もし、あなたが同じような目にあったとき、
わたしはこうしてお話をきくことはできますが、同じように傷つく場面を
防ぐことはできません。」

この言葉を聞いたときに私は自分の置かれている立場を理解できた。
やりかたは納得いかないとしてもこの会社には私の居場所はない。
この会社を退職しよう。
そう決心してから行動することが楽になった。

さまざまな退職の手続きは弁護士にまかせて、
わたしは明日からの仕事をする場を探すことに力を振り分けた。

やみくもに就職活動をしてもうまくいかないのは、
経験でわかっている。
それは人材サービス会社で培った経験からわかっている。
そこで自分も有しているキャリアコンサルタントに現状や、
考えていることを相談してみることにした。

「何がしたい?」
「せっかく資格をとったのだから資格をいかしたい。人材サービス会社にいたので、面接や就職のアドバイスはできると思う。でもどうやって仕事を捜したらいいのかわからない。」
「どのくらい収入がほしいの?」
「これまでの収入を落としたくはない。」
「わたしはキャリコンだけれど、いつも仕事を捜している。一般で会社勤めを考えるとキャリコンという職種は少ない。どうする。」

こんな会話をしながら私は次の仕事を考えた。
彼女からのアドバイスで一番響いたのは、
「キャリアの仕事をしたいんだよね。まずははじめることが大事じゃない?
経済的なことはコンビにでのアルバイトでもなんでもすればいい。やりたいことをやれるなら頑張れないかな。」

ああでもない、こうでもないと迷っていたわたしは
やっとどっちを向いて歩けばいいのかわかったような気がした。

さて、長くこんな話を書いてきたが、
ビジネスの出会いでかんじることは、
切羽詰ったときこそ自分の本当の希望が
見えてくるのじゃないかと思っている。
反論することも、説得されることもなく、
的確に見えていないことにフォーカスしてくれると、
納得感が高いのだ。
もちろんコミュニケーションスキルもある。

いまわたしは会社をやめてから、
どうにかキャリアコンサルタントとして仕事をしている。
一般的には定年退職の年齢になったけれど、
ひとりの職業人として仕事ができている。

ひとりで考えていたら、
みちは開けなかったかもしれない。

ビジネスの出会いは人が運んでくれると信じて、
私たちは人に会うのかもしれない。


#ビジネスの出会い

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