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コンプライアンス

 2024年4月12日、須藤博文さんより「コンプライアンス」についてご講義いただいた。講義は参加型で行われ、例示として多くの動画が使われるなど、とても楽しめるものだった。

【講師紹介】

須藤博文塾員
千葉県市原市出身
弁護士→松下政経塾39期→法律事務所設立(2022年4月から)→千葉市議会議員(2023年4月から)
テニス好き
再犯防止や保護司など

「ホームレスは罪人か」
 軽犯罪法にホームレスの生き方を犯罪とするものが存在する。ただし『生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの』(同法1条4号)と一定の条件づけがされている。

「いじめは犯罪か」
 侮辱罪、名誉棄損罪、傷害罪、恐喝罪、脅迫罪、窃盗罪、性犯罪などに当てはまる。
人は、良くても悪くても「違う」人を排除しようとする傾向がある。みんな何かしらのマジョリティに所属していて、何かのマイノリティを排除しようとしている。

 この2つの質問が問いかけられた。1つ目に関しては罪人ではないという回答が出た。しかしどちらの解説も納得だし、ホームレスやいじめ、更に万引きやパパ活など、法律上は犯罪になるものも言い方を変えると軽く聞こえてしまうと感じた。実際、ホームレスは死んでもいいという過激な発言をする人や、殺してしまう人もいる。

「お前に人権なんかねぇ」
 次の問いとして表示された言葉だ。ドラマ「リミット-刑事の現場2-」で武田鉄矢が演じる梅木刑事が放ったセリフだった。通り魔殺人をした青年に対して、
「人間は生きている内に殺したいほど憎い奴に出会うことがある。だが、普通の人は殺さない、殺せない。こいつにも親がいる、こいつにも惚れた男か女がいる。そう思うと、そいつが人間に見えて、だから人間は人間を殺さない!そして殺せない!だが、こいつは違う。こいつは憎くもない人を、弱い人を選んで刺し殺した。なぜそんなことが出来たか!それはこいつが人間じゃあないからだ!」「お前に人権なんかねえ」
と言ったのだ。しかし森山未來演じる新人の加藤刑事は
「社会には心の拠り所がない。自分も一歩間違ったらそちらに行ってしまうかもしれない。」
となだめに入る。
 梅木刑事の言うことはもっともだと思う。殺さなくても問題を解決するためにできることはあるはずで、歯止めをかけるのは自分自身だ。当時、ネット上でも梅木刑事に賛同する声が多かった。しかし私は加藤刑事が正しいと思う。社会はそう思えるようにならなければならないと思う。そう思わないと排他的な社会が加速して、罪を犯した青年のような人が更に増えてしまうかもしれない。みんなヒーローが好きで悪を懲らしめたい。アンパンマンも正義の味方だが、実際は暴行罪を犯している。ではホームレスを殺した人はどうなのか。須藤さんは、「どちらの意見もある。言語化して腹落ちさせていくことが大切」と話されていた。

 近年は、ハラスメントに過敏になっており、文言や行動などに一層気を付けなければならない。テレビでも「不適切」だとして映せなくなったものが多数ある。例えば女性の裸、リゲインのCMの「24時間働けますか」という文言、「セーラー服を脱がさないで」の歌詞などは流せなくなっている。「今」正しいことでも今後変わることもあるし、人によって捉え方も異なる。自分の意見や感情は世間にとって「正しい」のか、マジョリティかどうか、外から判断する必要がある。特に、発言には気を付けなければならない。みんなどこか偏っていてそれが言葉や表情に自然と現れる。それはどんなに気を付けても無意識に出るものだ。心の奥底で思っているところは自然に出てしまうから反芻する必要がある。

 明確に決まっているはずの法律でさえ気づかずに違反して犯罪者になってしまうこともある。例えば、道路交通法違反は軽い気持ちで「周りもやっているし」と違反することはよくあるはずだ。スピード違反や横断歩道前の一時停止、スマホを使いながら(信号待ち中でもだめ)の運転。たかが小さいことだといっても、違反し続けると心のゆるみにつながり、大きな事故や犯罪に繋がる可能性もある。更に詐欺罪はSNSの普及でより活発に、公然わいせつ罪は東京オリンピックやインバウンドの影響でより厳しくなっている。履歴書に嘘を書いたり、通帳や口座を作って売ったりするなどは気軽でついやってしまいがちなため注意が必要だ。様々な形態のある風俗エステの多くは経営側が責任を問われるが、中でもピンクサロンやハプニングバーは利用者側も公然わいせつ罪で捕まる。
 まず前提として法律は守らなければならない。しかしその下にある内部規則や社会常識は法律と少しずれがある場合もある(例:法定速度で走ると渋滞に繋がるなど)ため、自分はどこまで緩めるかを明確に持つ方が良い。理念や社会的責任はもはや人によるため、自分と他の違いを把握したうえで行動しなければならない。

 講義の最後には以下の大切なことをまとめとして教えてくださった。
①よく学びよく知ること
 何が事実で何が評価されているのかを知る。
 世間ではどのように考えられていて、他人は何をどう考えていて、自分は
 どう考えるか。
②自分の考えを持つこと
 良く学びよく知ったうえで自分はどう考えるか。
 そのときのニュースや流行、感情でしゃべらない。
③一度発信したら消えない
④コミュニケーション能力
 誰が言うか、どのように言うかで印象は変わる。

 総合して言えるのは、みんな違うため他人も自分と同じように考えているというのは根本的に間違っているということだと思う。いい意味でも悪い意味でも日本人は周りに合わせるため場の雰囲気を感じ取ることは得意だろう。加えて、対象となる相手が本当に喜ぶかを考えて行動しなければならない。それでも失敗してしまったら素直に謝ること。当たり前のことだが意外とできていない人が多い。日々意識して「当たり前」を日常にしたい。

 講義後に行われた質疑応答は以下の通り。
Q. 追い込まれた状況では冷静に判断できないのでは。
A. 人間は追い込まれたら嘘をついてしまう。言い訳したり、取り繕ったりごまかそうとしてしまうのは、人間は弱いし自分が可愛いから守りたくなるため。それを防ぐためには誰か頼れる人を見つけておいて、相談したりいざとなったら止めてくれる保険になる。最悪失敗したらとにかく謝る。取り返せなくても傷は浅くなるかも。刑事事件で捕まった人には「黙秘権あるけど嘘はつかないように」伝えている。自分についた嘘は自分を傷つけるし次に繋がる原因になる。
 
Q. ひろゆきやDAIGOのように方たちは、過激発言をすることでブランディングしているのではないか。起業家に必要なスキルではないか。
A.  迷惑系Youtuberなども最初はお金稼げてたけど、徐々に叩かれるようになって今は収益があがらなくなっている。2人はそれを理解したうえでやっていると思う。燃えるしバズるが、それは一時的なものでいずれ廃れていく。海外でお金を稼いでいる人たち(いわゆるセレブ階級)は社会貢献を同時にしている。
「自己中になれ」。まず自分が幸せになる。だけど周りが幸せでないと自分も幸せになれない。周りの範囲を広げて、自分と他の人との境をなくしていくことで、自分の為に他者に貢献できるようになる。まさに「情けは人の為ならず」である。
 
Q. 経営者として社内で○○ハラスメントが起きた場合どのように対処できるか。
A. 100人以上の大規模になるとルール作りをした方がいいが、数人規模だとその度に話し合った方がいい。されて言われて嫌だったことは言える環境を作る。

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