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蛙の大合唱が恋しい話し

私の実家は緑に囲まれた一軒家だ。

どういう感じかというと、家の周りは360度田んぼに囲まれとって、約15キロ先の雄大な耳納連山を毎日窓から眺めることができる。
そして、田んぼを挟んで、ぽつりぽつりとご近所さん宅がある。
正確に言うと、そのご近所さんはご高齢のため施設におり、空家がほとんど。人や車がめったに通らんところ。

私は、四方八方田んぼに囲まれて育ったけん、当たり前やけど、しろかきした後のこの季節は、カエルとともに生きとった、カエルは家族だったと言っても過言ではない。

例えば、いつのまにか一階のリビングやキッチンに、カエルがぺったんぺったん歩いとるげな、あるある。それも、数匹。

他にも、夜、好きな人と部屋で電話をしとったら
「ごめん、そっちのカエルの鳴き声がうるさすぎて、なんて喋りよったか聞こえんかった。」
と、ドキドキが台無しになった事があった。
もちろん、家族に聞かれるのが嫌で窓は閉めとったとによ。

カエル達は、朝早くから鳴きだして、まだ寝たい私なんて関係なく、目覚ましよりも早く起こしてくれた。
夜も、窓閉めとってもうるさいし、夜風をと思って開けると、テレビが聞こえんくなった。
10代の後半は、カエルが家に不法侵入する田舎さが少しきらいだった。

でも、疎ましくさえ感じとったカエルの大合唱は、他県の都会のほうに移り住んだ今となっては、皆無になった。

先日のこと。
夜、旦那ちゃんが「連れて行きたいところがある」とだけ言って、真っ暗な道を車で走った。
「着いたよ」って言われて、車からおりると、しろかきした田んぼにカエルの大合唱が響いとった。
懐かしさに震えて、感動しとったら
「この道通ったら、お嫁ちゃんちの実家に遊びに行ったのを思い出してさ。」
げな。

旦那ちゃんが覚えててくれたことが嬉しかったのと、
あんなに疎ましく思っていたカエルの大合唱を、今では恋しく感じるようになった心の変化に、どこか寂しくなった。

夜風は寒いけん、そこそこで帰ったけど、また近々、あの夜の田んぼに連れてってもらおうと思う。

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