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猫パンチは効果絶大

今は亡き犬の話。

飼っていた犬はとにかく犬好き。
犬とすれ違うたび、鼻を鳴らし尻尾をブンブン。飼い主さんは笑ってくれるが、お目当ての犬には大抵嫌われていた。
なぜかは分からないが、多分押しが強かったのだと思う。
そりゃ、犬にしてみたらいきなり

ねぇ!!僕、君のこと、好き!!!

とアピールされたら気持ち悪いだろう。
そんなに嫌われてもめげないうちの犬はある意味逞しかった。

そんなある日、散歩に行きたいアピールをしてきた。
こんな時は大抵、家を出てすぐ用を足す。
今回も予想通り家を出てすぐうんち。
いつもならこの後、家の周りを散歩するのだが、近所の猫がリードに繋がれたまま日向ぼっこしていた。

のんびりお日様に当たる猫ちゃんは可愛らしい。いつも飼い主さんに可愛がられている。
流石に、うちの犬も猫には近づかないだろう。
今まで猫には興味を持たなかったし、今回も特に何もないはず。

それに、猫ちゃんはもう少しでフーッと背中の毛が立ちそうな勢いでこちらを警戒している。
見てるだけで怖い。
ここはサッと処理をして、立ち去ろうとティッシュでうんちを掴んだその時


バシッ!バシバシバシ!!!


物凄い音が聞こえてきた。
まさか‥と思い顔を上げると案の定、うちの犬が猫パンチをひたすらに受けている。
それもただ一方的に叩かれている。
わぁー、猫って両手で猫パンチするんだー。と
どこか他人事になっている場合ではない。


慌てて引き剥がし、顔に傷がないかチェック。
見たところ特に怪我もない。爪を立てられたわけではないようで安心した。
あんなに警戒されてたのに突っ込んでいくのね、君‥。と我が犬ながら何とも言えない気分になった。

猫を見ると、こちらをさらに警戒している。
なんだか申し訳ない。

あんなにパンチを受けたのに、私のことなど無視で猫ばかり見ている。猫から見れば恐怖だろう。
あんなに攻撃したのに、怯まずこちらを笑顔で見てくる犬なんて。

ごめんね、猫ちゃん!
と心の中で謝り犬を引っ張って行く。
あんなにパンチを喰らったのに、後ろ髪を引かれるように猫を見ている犬。
半ば強引にその場を後にし、無事散歩に行けた。

散歩しながら、喧嘩にならなくて良かった‥と胸を撫で下ろした。
何もないと思い込んだ自分のせい。
これからは気をつけないと。
フンフンと匂いを嗅いでいる犬を見ながら考えていた。

「猫パンチ速かったなぁ」
ポロッと口から出た言葉に犬がこちらを向く。
痛かった?と問いかけると歩き出した。
何となく、痛かったし、ビックリしたもん!とその背中は少し拗ねている気がした。

それからも、たまに日向ぼっこ中の猫ちゃんに遭遇したが避けるようになった。
めげずに近づくかと思っていたけれと、猫パンチの効果は絶大だったらしい。

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