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SONY αの露出補正ダイヤルの意味

FullFlameのFEマウントILCE系はグリップのある右側に露出補正ダイヤルがあるのですが、P/S/Aモードでの露出補正は前後のダイヤルで可能なので、わざわざ廻しづらく堅い(機種によってはロック機構のある)ダイヤルを回す意味は無いので通常使わないのでは?
使う、と言う人もいるかも知れませんが、少数派なのではないかと。

では何故あるのか?
理由はMINOLTA時代に存在したPa/Psモードに遡ります。
※Paのaは本来は大文字

そも、PモードはAF動作が露出と連動している場合、シャッター半押しでピントが合ってカメラが決めたシャッタースピードと絞り値で露出が決定されます。
コレは便利なのですが、動きを表現したいとか被写界深度を操作したいといった撮影者の意図を汲んでおらず不便な場合もあるし、多くの機種は絞り込んだ設定を採る事が多く、高性能レンズでもそうじゃなくても基本的に同じシャッタースピードと絞りになるのでレンズの性能を出し切れない場合が多いです。
その為、自動露出ではシャッター速度(S)や絞り優先(A)モードが存在しているわけですが、咄嗟の時、PからAやSにモード変更(或いはAからSとか)するのは現実的では無く、時間のロスとなってしまい撮影のタイミングを逃しかねません。
そこで登場するのがPa/Psモードと言う事になります。

操作は至って簡単ですが、前準備として設定メニューから前後ダイヤルでの露出補正をOFFに設定しておく必要があります。

で、Pモードでシャッターを半押しすると、カメラの弾き出した絞りとシャッター速度となるのですが、その状態で前(設定によっては後ろ)ダイヤルを回すと露出はそのままに絞り値が変化します。
後ろ(設定によっては前)ならシャッター速度が変化します。


即ち、Pモードにしておけばシャッター速度優先モードと絞り優先モードの変更をモードダイヤルを使わず親指と人差し指の直感的な操作でシームレスに移行出来ると言う機能がPa/Psモードです。
地味に凄い!!!
これを考えた人は天才としか!!!!!!
極論、この機能が存在すればモードダイヤルにA(Av)とかS(Tv)は要らないのです。
※絞りやシャッター速度を固定したい場合はAやSは必要


じつは、この操作系のオリジナルはPENTAXで今はハイパー操作系とか言われていますね。
この機能、撮影状況が刻一刻と変わり咄嗟に撮る事が多いスナップ系では大変実用的かつ便利でありますが、前後のダイヤルを絞りとシャッター速度に充ててしまったので「露出補正が出来ない」と言う自動露出(AE)では致命的と言える弱点も生んでしまったのが最大の欠点でしょう。
同じ被写体でも明るさで大きくイメージは変わってしまいますからね。

PENTAXの編み出したこの機能の有益性に目を付けたMINOLTAは、ただ模倣するのではなくフィルム機α-7で第三のダイヤル(露出補正ダイヤル)を装備するという単純な構造でコレを解決する事になります。
ダイヤルが左側であまり操作性は良くなかったのですが、出来ない事に比べればずっと良いし、当時露出補正は前後2段が多かった中で前後3段が可能と露出設定の自由度が高く、その機能はMINOLTA(KONICA MINOLTA)のデジタル一眼レフ第一弾α-7 digitalにも受け継がれます。

尚、第三のダイヤルを装備していないボディではPa/Psモードを実現するのに〝露出補正ボタンを押しながらダイヤルを操作〟という、ダイヤルが一つのカメラでは定番の、あまり褒められた操作性ではない操作を強いられます。
〝押し回し〟という行為自体が直感的ではないのです。

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KONICA MINOLTAからSONYへ移管になった際、Aマウント時代は(たぶん)メーカーの人もプログラムシフトとの違いが判らなかったのでしょう、実際、絞りとシャッター速度を前後ダイヤルに割り振っているだけで同じ事だし、その為か機能は存在したものの、第三のダイヤルは装備されなくなり、名称もプログラムシフトに変更、当初プログラムシフト内のPa/Psモードと呼んでいましたがP*表記となり、第三のダイヤルがない為露出補正ボタンと併用せねばならず実用的ではなくなっていました。

尚、ILCA-99M2(α99 II)の場合、ISO感度をAUTOに設定しておくと、露出補正ボタン押し回しでシャッタースピードと絞りを変えずにISO感度で追従する、と言う動作をします。
高感度に強いボディなら結構使える機能と言えなくもないのですが、やはり〝押し回し〟が必要なので操作しづらいです。

Aマウント機では実質消滅していた中、このスーパー機能は初のFEマウント機であるILCE-7で突如復活、その後FEマウントILCE系では2021年現在も右側に鎮座する事になります。
実際のところ、ILCE-7に先立つ数年前にNEX-7で3つのダイヤルを装備していたと言えなくもないのですが…

一旦操作すると設定はそのままなので、マイナス補正、或いはプラス補正のまま撮り続ける危険性があったり、プラスマイナスゼロの設定で判りやすい抵抗(ノッチ)があると使い易くなるので、場所も含め操作性に関してはまだまだ向上の余地がありますが、カメラ(機械)として重要な撮影者の意図を直感的かつスムーズに伝える事が出来る機構として大いに評価すべきものがあります。

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現在は(機種によって差異はあるものの)表記された露出補正ボタンが存在しないので判りづらく致し方ない面もありますが、専門家を含めた殆どの人が単なる露出補正ダイヤルとしてしか認識していないように思えるのは嘆かわしい限り。
PENTAX/MINOLTAというメーカーを知らない人が多いのが一因か、AFに比べ露出(AE)という要素は今となっては一般にアピールしにくいのが要因か、たいへん有益であるものの注目される事は全くない地味地味な機能ですが、自動露出(AE)を多用する場合は知っておいて損はありません。

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