きさらぎ みすず

如月水鈴です。小説未満の想いたちをここに書き記します。

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最近の記事

読書録と20歳の午後~アルベール・カミュ『ペスト』~

 何を隠そう私は海外文学に触れたことが少なく(というか読書量もそこらへんの本好きに全然満たないんですが)、まあちょっとした劣等感みたいなものがあったわけです。  そんなとき、最近ゲームの影響で文学を雑食している妹の本棚から、「よし、海外の教養でも身につけるか」と思って選んだのがこれでした。  一時期話題になりましたよね、『ペスト』。  話題になったのは知ってましたが、どこが取り上げられていたかは忘れてしまったので、「今の流行り病に通ずる心構えや対策でもある、教訓めいた小説な

    • 「遠隔地からの給食再現チャレンジ」始めてみた

      5月某日。 各所では「教育実習」なるものが行われているそうですね。私は取っていませんが、母校に行く人などの話を聞いていて私の生活の中にもその単語が入ってきた、そんな初夏。 暇を持て余して虚無状態でスーパーに行った私は、ふと思いつきました。 「そうだ、母校で食べられてる給食の再現チャレンジでもしてみるか」 給食の献立っていまどきネットでも見られるんですよ。原材料も、どのおかずにどれを使っているかはわからないですが、まあ書いてあります。 その表示と、味の記憶だけで、自炊(

      • 読書録と二十歳の午後~伊坂幸太郎『オー!ファーザー』

        思えば初めて伊坂作品に触れたのは大学1年生の3月でした。 大学生が主人公の話が読みたい、と本好きの同級生に相談したら、おすすめされた本の中に『アヒルと鴨のコインロッカー』がありました。以来、熱烈とまではいかなくてもなんだか台詞回しや雰囲気が好きで読んでしまう、くらいの感覚で読んでいます。 今回の『オー!ファーザー』は『重力ピエロ』『死神の精度』に続く四作目です。 伊坂さんの作風って本人曰く第一部、第二部とあるらしくて、これは第一部の最後らしいんですが、比較的初期の方の作品ば

        • 1時間前

           二月一日の秒針は無条理に回っていく。日が暮れて、人がいなくなって、勤務先のパン屋ももう閉まってしまった。あと数時間で、私のティーンは終わる。  ティーンだと浮かれていたのは、いつだっただろうか。まだ「プチベリー」なんて名前の、親から与えられた少女向けファッション通販誌を、ご機嫌で眺めていた頃だったか。中学一年生の終わり。何気ない日々の楽しみはほんとうに幼くて。世界は狭かった。でも、心の中の世界だけは、今より広かった。  そんな無邪気で楽しかったティーンが、終わってしまう。

        読書録と20歳の午後~アルベール・カミュ『ペスト』~