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読書録と二十歳の午後~伊坂幸太郎『オー!ファーザー』

思えば初めて伊坂作品に触れたのは大学1年生の3月でした。
大学生が主人公の話が読みたい、と本好きの同級生に相談したら、おすすめされた本の中に『アヒルと鴨のコインロッカー』がありました。以来、熱烈とまではいかなくてもなんだか台詞回しや雰囲気が好きで読んでしまう、くらいの感覚で読んでいます。

今回の『オー!ファーザー』は『重力ピエロ』『死神の精度』に続く四作目です。
伊坂さんの作風って本人曰く第一部、第二部とあるらしくて、これは第一部の最後らしいんですが、比較的初期の方の作品ばかり読んでいるので全然ピンときていません笑
いつもどおり面白いな、って思いました(稚拙)。

さて、ではここから思いつくままに感想を垂れ流していきます。

〈構成〉
……について語ろうとしたんですが、あんまり語れないです笑
私の印象では、いつのまにか起が承になって、承が長いなーと思ってたら転が一気に来た!って感じでしたからね……
直前まで東野圭吾の『卒業』を途中まで読んでいたんですけど(延滞→返却して以来借りられていませんが)、ああいうわかりやすい型がないなっていう印象を受けました。日常生活から事件に流れ込んでいくって感じでしょうか?

〈登場人物〉
いやこれが~良い、この作品の何よりの魅力はこれだ……文句なしに四人とも良いお父さんだった……
鷹さんのワイルドさは見ていて爽快だし、悟さんは知的で頼れる。勲さんは体育教師という「男前」さを持っていて、葵さんは女性対応の英才教育を施している(クスッと笑えるところ)。うーん、私だったら選べない。

由紀夫がいい感じに影響を受けて育ってるのも良いですよね、スパダリになれるくらいのものを持ってるのに、たとえば小宮山の家に行くシーンなんかで、父親が言ったことを適当に繋げるせいでちょっと奇妙になる。それがまた良い。

『重力ピエロ』のときも思ったんですけど、涙が出そうなくらい良い家族がそこにはいて。まだ四作しか読んでませんが、特徴なんですかね?主人公の家族も友人の家族も、問題になるような家庭は全然出てこない。むしろ経緯が特殊であっても超えてくるだけの愛情がある。
だから読んでいてすごく安心できるし、事件があっても、大丈夫、って思える。心に優しい(?)

〈文体・書き方〉
話を追うだけなら全然ここまでで良かったんですけど、一応自分でも物書きのまねごとやっちゃう人間なので、思ったことを……。

なんでこんなに軽快でコミカル要素があるんだろうと思ったんですけど、台詞が!多いんですね!
活字として見ていたら普通に見開き1ページが台詞だけになってるところとかがありました。あれですね、何か思惑を仄めかすとしても地の文の行動ではなく、台詞に集約されてるんでしょうね。コントみたいなやりとりとか。たとえば「適当にあしらった」とも言えるところを台詞で適当にあしらわせる、みたいな。それもあって一人ひとりの個性が際立っているのかもしれないですね。

あと、台詞の前後で改行しない場合がとても多い。
あるじゃないですか、小学校の授業とかで「かぎかっこでは改行するんだよ」っていうアレ。アレが少ないんですよ。独立している鉤括弧が本当に少ない。

伊坂作品を真似したいな~って人は、コントみたいな台詞増やして、鉤括弧を読率させないようにするだけでも、だいぶ見栄え的に近づいて楽しいんじゃないでしょうか?(適当)
すくなくとも私は近々そういうふうに文章を書いてみて「わ~伊坂幸太郎だ!キャッキャ」と喜ぶレベルの低い遊びをすると思います。というか、します。絶対。そういう未来が見えます。

何はともあれ……
私はこの人の文章、好きです。笑えるところもいっぱいあるけれど、揺るぎない温かさが流れているところが、好きなのかもしれません。

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