アパートの話
こんにちは、アパートさん。
僕がここに来てから随分経ちましたね。
小さなお魚が入った瓶を抱えた僕を、貴方は優しく守ってくれました。
ここで色んな事な事がありましたね。
まーと名付けた魚(ベタ)が死んでしまって一日中泣いたことも、それからま行で始まる魚を飼いつづけて、ミーとムーの子供、ミムーが死んでしまったとき、僕から何も出なくなって、魚を飼うのを辞めてしまいましたね。
あの時、悲しむ事が出来なくなった僕は、もう生き物を飼う資格が無くなってしまったと思ったからです。
仕事も色々変えましたね、最初は近くの工場の派遣社員、その次は5個の駅離れた工場の派遣社員あの時は自転車で凄い距離を通いましたね。今思えば大変でした。
バイクで奥多摩の方まで通ったことも。
何度か無職になり貴方のお金を払うのに苦労したこともありましたね。
それから、hpでサーバーを作り、市役所でビル管理を担当したりもしましたね。
市役所では懲りずにミルクと言う名前のモルモットを拾ってきて飼ってましたね、
死んでしまったとき泣きながら抱きしめる僕を貴方は暖かく見守ってくれました。
グミィというsnsを始めたのもここですね。当時はPCで牧場が出来ると思って始めました。
そこでは色んな友達が出来ましたね。
嫌われることもいっぱいありましたが、好かれることもありました。
こんな僕と今も付き合ってくださる友達には感謝しかありません。
資格の勉強もしてましたね、貴方に守られて色々勉強したけれど、役に立っているのは3つくらいです。
遊びに来てくれた人も居ましたね、楽しくてありがたい日々でした。
お金を貯めて海外に行った事も、病気になってしまって寝込んだこともありましたね。
さて、話す事は山のようにありますが、長くなりすぎますので、このくらいで辞めておきましょう。
悲しい記憶はすぐに出ますが、幸せな記憶は探さなければ出て来ないものです。
でも貴方と共にあった幸せな記憶は溢れるばかりに湧き出してきて、書いていたらとても時間が足りません。
僕はここに来る前、派遣の寮に住み込みで働いていて、その前は公園のベンチで寝たこともあったので、貴方は最高に贅沢で素敵な場所だと思った記憶があります。
貴方を汚いアパートだと言う人も居るかもしれません。
でも僕にとっては、何よりも大切で素敵なお城でした。
そんな貴方と何時までも一緒に居たかったけど、僕も少し成長して、少しここが狭くなっちゃったみたい。
だから新しい所に旅立ちます。
これからもきっと多くのことが起こるでしょう。
そんな時、貴方と過ごした日々が僕の力になってくれることを信じてます。
激しい風雨から
夏の日差しから
凍る外気から
沢山の外の世界から
12年間、僕を守ってくれてありがとう。
大切な僕のアパートへ。
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